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巧妙化…振り込め詐欺に新捜査手法導入の声

2014年1月5日 22:05

 2013年の被害額が400億円を超え、過去最悪を更新している振り込め詐欺などの特殊詐欺。複雑・巧妙化する犯行グループの手口に対抗するため、新たな捜査手法の導入を求める声も出ている。

 警察庁によると、去年1月から11月末までの振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額は全国で425億円余りに上り、過去最悪を更新している。これは、過去最悪だった2012年の被害額を60億円程上回っていて、このまま推移すれば2013年の被害総額は500億円に迫る勢い。このうち、2013年は、息子や孫などを装ったオレオレ詐欺の被害が増加していて、被害は11月末までに約152億円に上り、前年の同期間に比べて5割以上増えている。

 警察庁はこれまで、全国の警察などを通じて繰り返し対策を行ってきたが、被害の拡大に歯止めがかかっていないのが現状だ。その要因の一つとして、犯行グループの中枢の検挙が難航していることが挙げられる。犯行グループは役割が細かく決められていて、高齢者の家などにだましの電話をかける役割の「かけ子」、被害者から現金を受け取るだけの「受け子」、口座から金を引き出すだけの「出し子」などがいる。警察が「だまされた振り作戦」などで検挙する場合の多くは、こうした組織の末端に過ぎない。末端の人員は犯行グループの中枢とは携帯電話だけでつながっており、主犯格の名前やアジトの場所なども把握していないことが多く、主犯格を追い詰めるのが難しいという。

 警察は、金融機関に対して振り込み詐欺に使われた口座の凍結を依頼するなど犯罪インフラを取り締まって対策を進めているが、今後の捜査の切り札として検討しているのが「通信傍受」だ。警察庁のある幹部は「犯行グループのアジトは、まさにだますためだけの会話が行われている密室。ここでのやり取りを通信傍受で把握できれば中枢を追い詰められる」と話し、現状を打開する新たな捜査手法だと期待している。

 しかし、2000年から施行されている通信傍受法は、組織的殺人や薬物犯罪など限られた犯罪においてのみ電話の傍受ができることになっていて、実情としては毎年10件前後の事件でしか通信傍受が行われていない。通信傍受の適用範囲の拡大をめぐっては反対意見も根強く、振り込め詐欺の捜査に適用するかどうかは現在、法相の諮問機関である法制審議会で慎重な議論が続けられている。