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愛知・高校サッカー界は戦国時代に突入か

2021年12月28日 2:58
愛知・高校サッカー界は戦国時代に突入か

12月28日に東京・国立競技場で開幕する『第100回全国高校サッカー選手権』。愛知県代表の中部大第一は、29日に大津(熊本県代表)との初戦を迎えます。歴代の愛知県代表は、全国でどんな戦いを繰り広げてきたのか、過去の成績を振り返ります。

■県立・刈谷 「赤ダスキ」をつなぎ県内最多19回の出場 準優勝2回 3度のベスト4

「赤ダスキ」として知られる刈谷高校サッカー部は大正8年創部。チーム内の練習試合で敵味方を区別するため、白のユニホームに必勝の願いを込めた赤いタスキを掛けたと言われていることから、「刈谷=赤ダスキのユニホーム」と全国で知られるようになりました。

初めて全国選手権に出場した17回大会(昭和10年度)で、刈谷はベスト4。その後は33回大会(昭和29年度)と36回大会(昭和32年度)で準優勝、また28回大会(昭和24年度)、31回大会(昭和27年度)でベスト4など、「昭和」で18回出場し、愛知の高校サッカーを牽引してきました。

刈谷といえば県内有数の公立進学校としても知られ、直近5年間で25人が東京大学、72人が京都大学に合格。サッカー部でも毎年、有名国公立大学を目指す部員が多く、試合会場でも参考書を読むなど勉強でも一切、手を抜かないのが刈谷の強みともいえます。

77回大会(平成10年度)を最後に全国選手権出場から遠ざかっている刈谷ですが、今も毎年のように上位に進出しており、昭和・平成とつないできた「赤ダスキ」を令和の全国舞台でも見せてくれる日は遠くないでしょう。

刈谷や熱田などの公立が愛知の高校サッカーを引っ張ってきましたが、50回大会以降は徐々に私立が愛知の頂点に顔を覗かせ始めました。

■私立・岡崎城西 59回大会ベスト4

岡崎城西は2回目の出場となった59回大会(昭和55年度)で、東福岡(福岡県代表)や鹿児島実業(鹿児島県代表)などの強豪を次々と破り、準決勝で清水東(静岡県代表)と対戦。首都圏開催になり、愛知県代表初の決勝進出を目指しましたが、0-1で敗れ、惜しくも全国制覇の夢には届きませんでした。

約30年にわたり母校・岡崎城西を率いてきた名将・金重卓広監督は、定年を迎え今年度で監督を勇退。81回大会(平成14年度)以来の全国選手権を目指し、県予選に挑みましたが、県ベスト4で幕を閉じることになりました。金重監督は「何もできず悔いの残る準決勝だった。どんな形であっても、今後もチームを支えていきたい気持ちはある」と岡崎城西への愛を語りました。

■私立・中京大中京 90回大会 元Jリーガー監督が創部初のベスト8に導く

県立・刈谷に次いで選手権16回出場の中京大中京。「平成」だけで出場14回と「平成の愛知は“中京大中京”」と全国に印象づけました。そんな中京大中京が“国立”を懸けて名勝負を繰り広げた大会があります。それが、かつて「ミスターグランパス」と言われた元名古屋グランパスMF・岡山哲也氏の監督就任1年目、90回大会です。岡山監督自身も中京大中京のOBで、高校3年生時の70回大会には3回戦進出。その自身の選手時代を超え、初の準々決勝に駒を進めました。

準々決勝は日本代表・浅野拓磨を擁する四日市中央工業(三重県代表)と対戦。中京大中京は前半17分、現在Jリーグ横浜F・マリノスでプレーする宮市亮の弟で、いわてグルージャ盛岡で活躍する宮市剛が先制ゴールを挙げると、その後、四中工に追いつかれたものの、後半8分に再び勝ち越し。常に試合をリードしていた中京大中京がこのまま逃げ切り、初の“国立”進出かと思われましたが、後半アディショナルタイムに四中工・浅野拓磨の4試合連続となるゴールで同点に追いつかれPK戦に突入。PK戦では1-4で敗れ、惜しくも“国立”への扉を開くことは叶いませんでしたが、創部初のベスト8を果たしました。その後、岡山監督のもとで中京大中京は3度選手権に出場しましたが、契約満了に伴い、去年、岡山監督がチームを去ることに。“国立”への夢は次の世代へと受け継がれています。

■近年 県内の勢力図がめまぐるしく変化

95回大会以降、愛知県勢は毎年代表校が入れ替わっていて、98回大会には愛工大名電、今大会は中部大第一と直近5年間で2校が全国への“初切符”を掴むなど、どの高校でも全国舞台を経験するチャンスがあるといっても過言ではありません。しかし、5年連続で全国初戦敗退と苦しい状況が続いている愛知県勢。中部大第一初の全国初戦は、“超超”格上相手の大津(熊本県代表)ですが、「県予選では誰がというより全員が頑張ってくれた」と強みのチーム力を評価した伊藤監督。勝利へ、そして“強い愛知代表”へ、ピッチを存分に駆け回るプレーに期待したいです。

※写真
 左:刈谷の「赤ダスキ」のユニホーム
 右:90回大会時の中京大中京・岡山哲也監督

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/中京テレビ放送)