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『自分のままでいい』自閉症のアニマル画家

2021年10月15日 14:07
『自分のままでいい』自閉症のアニマル画家

僕は、自閉症のアニマル画家。

「フィナーレ!オープン!やった~!」

母の教えを胸に、動物たちをキャンバスいっぱいに描きます。

「石村嘉成です。苦手な食べ物はエビ、甲殻類。好きな食べ物はお刺身です」

版画画家の石村嘉成(いしむら・よしなり)さん。2歳のとき、自閉症と診断されました。幼いころから大好きだった生き物たちの姿をアクリル絵の具や版画で描いています。

黒い墨を塗った版木に、あらかじめ色づけした和紙を重ねて刷っていくのが流儀。

嘉成さん「オープン!ご覧の通り95点ぐらいです」

創作活動を始めて8年。これまでに作り上げた作品は400点を超えます。個展を開催すれば、美術館の来場者記録を塗り替えるほどの人気です。

来場客「絵から出てきそうな感じでスゴイ」

美術の授業で版画に出会い、いきなり愛媛県内のコンクールで入選。同じ年、パリで開かれた国際コンクールで見事、優秀賞に輝きました。

生き物の気持ちになって伝える作品には、いつも、言葉が添えられます。アニマル画家の原点は、母・有希子(ゆきこ)さんと歩んできた、道のりがありました。

嘉成さん「このお母さんと…お勉強…」

母・有希子さん「はい、読んで。独り言、言う子は学校行かなくていいです」

嘉成さん「いやだあああああ!」

「この子にも生かせる能力があるはず」母はそう信じ、療育に厳しく向き合いました。好きな動物園に通い、図鑑をたくさん買い、動物のビデオもたくさん録りためました。

嘉成さん「(動物の)ビデオあとでね」

有希子さん「勉強終わったらビデオです。ビデオを見て、歯磨きして寝る」

どんなに泣き叫んだ後も、動物のビデオは食い入るように見ていたといいます。我が子の将来を心配しつつも、決して諦めなかった母、有希子さん。嘉成さんが11歳の時、がんで亡くなりました。40歳でした。

父・和徳さん「お母さんもカレー好きだったろ?」

嘉成さん「お母さん大好きなカレーです。食べてください」

大好きなお母さん。だから、好んで取り上げるテーマがあります。それは生き物の親子。

“おかあさん、いいにおい”
“いっしょにいるよ”
“あまえんぼう”

嘉成さん「お母さんが優しく見守ってくれる。ささやかで、とても優しい感じがしました」

お母さんと読んだ図鑑は、もうボロボロ。

和徳さん「みんなボロボロになるまで見とるね、嘉くん」

母の教えは、生き続けています。

嘉成さん「人の評価を自分で考えるのも難しい。だから自分の評価を気にせずに頑張ればいいな…と思いました」

そして、たどりついた思い。

嘉成さん「オープン!あともう少しでフィナーレ!やった~!」

僕は『自分のままでいい』

2020年11月15日(日)放送NNNドキュメント’20『自分のままでいい~自閉症のアニマル画家~』(南海放送制作)を再編集しました