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中国・全人代開幕へ…香港、経済が焦点

2021年3月4日 21:24
中国・全人代開幕へ…香港、経済が焦点

中国で1年の政府の方針が示される全人代(=全国人民代表大会)が始まります。

新型コロナ禍を経て、中国がどのような経済政策を打ち出すのか、また香港問題や対米関係をどうするのか、普段なかなか外に伝わりにくい中国指導部のホンネの一端を垣間見ることができる、年に1度の重要会議のポイントを解説します。

■首都厳戒…隔離措置は1か月近くに

全人代は毎年3月5日に開幕します。去年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、5月に延期される異例の事態になりましたが、今年は予定通り5日に開催されます。

予定通り開くことが、感染を抑え込んだ「動かぬ証拠」ということで、政府の威信をかけた感染対策も行われています。海外から来た人が、北京に入るための隔離期間は徐々に延びて、現在は最大28日間に及んでいます。

また、取材記者も大幅に絞られ、会議が開かれる人民大会堂に出入りする代表や記者らにはPCR検査を求めます。さらに、記者会見もオンライン形式で行われます。

■コロナ後の経済は…“恒例”成長率目標は?

全人代で毎年必ずニュースで見るシーンは、赤じゅうたんの人民大会堂に、全国の代表が集まる開幕式。私たちは便宜上、全人代を“中国の国会にあたる”と表現していますが、共産党が一党支配する中国では、日本の国会のように与党と野党の論戦が行われるわけではなく、議案が否決されることも起きません。

「“予定調和”なら注目しなくてもいいのでは?」という声も聞こえてきそうですが、全人代は中国の国権の最高機関と定められているので、その承認を求めて、政府の1年間の計画を示す「活動報告」や、様々な法案が出てきます。

そこに見え隠れする指導部のホンネを知ろうと、世界中が注目するのです。例年、見出しを飾るのが、首相が「政府活動報告」の中で示す、この1年の経済成長率の見通しです。去年は新型コロナで「予測困難」として示されませんでした。そのこと自体、異例でしたが、今年は専門家の間でも様々な見方が出ています。

「今年も見送る可能性がある。世界経済の先行きが不透明な中で、今後の経済政策の手足を縛ることになるので、明示しないのではないか。(第一生命経済研究所 主席エコノミスト・西濱徹さん)」

一方、中国国内では強気の声も出ています。
「経済成長率の目標を設定することは必要性だし、条件もそろっている。今年の中国経済の成長率は8%以上と予想している。(中国政府系シンクタンク)」

去年、新型コロナの影響で経済成長率が2.3%に留まったことのリバウンド効果から、今年は8%以上の成長を予測する声もあり、感染を抑え込んだ成果をアピールするためにも、明確に目標を打ち出した方が良いという考えです。

■香港・選挙制度見直しも?9月の選挙見据え…統制さらに

もう1つ、今年の全人代で注目されているのが香港問題です。去年の全人代では最終日に香港のデモなどを取り締まる「国家安全維持法」の導入が、反対1、棄権6、賛成2878の圧倒的多数で承認されました。

その後、香港の状況は大量の民主活動家が拘束されるなど、状況は一変しました。今年は新たに、香港の選挙制度を見直して、中国政府に批判的な民主派を排除するための仕組みを導入する方針についても議論されるとの見方も出ています。

中国政府で香港政策を担当し、習近平国家主席の側近ともされる香港マカオ事務弁公室の夏宝竜主任は、2月22日に「香港の統治は愛国者が行うべき」と述べました。

また中国共産党系メディアは、中国政府が事前に開いた会議でも、選挙制度の見直しを求める意見が出たと伝えています。今回の全人代で方針が示され、法改正などが行われた場合、香港で9月に予定されている立法会議員選挙でも、民主派が締め出されることになり、香港の民主派勢力は一層厳しい状況に直面することになります。

■アメリカとの「持久戦」…米中覇権争いの行方は

今回の全人代では、今後5年の経済政策の方針、「5か年計画」や2035年までの長期目標の中身も出てくる予定です。習主席は以前、「35年までにGDP、または1人当たりの所得を倍増させることは完全に可能」と話していますが、これを達成するには、年平均で4.7%の成長率を維持することが必要になります。

ただ、中国でも今後、少子高齢化が急速に進むため、現在の成長率が維持できるかどうか見方もわかれていて、具体的な数字を書き込むのかどうかも注目されています。

また、アメリカが中国に対してハイテク部品の供給遮断も進める中、欧米に頼らず「自給自足」を目指す習指導部が、どのような施策が打ち出されるのかなども焦点です。

今年は中国共産党の創設100年、そして来年は習主席が2期目の任期を終え、3期目続投を目指す年となります。習主席が長期政権を目指す中で、アメリカとの「持久戦」に向けどのような青写真を描いているのか、全人代の期間中に示される様々なメッセージを読み解いていくことになります。