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発表されなかった「緊急地震速報」なぜ

2021年3月2日 11:43
発表されなかった「緊急地震速報」なぜ

東日本大震災から10年、当時被災地では何が起こっていたのか、今一度検証し、これからの大地震へどう備えるかを考える。

緊急地震速報は、震度5弱以上の地震が発生すると、まだ揺れが伝わっていない地域にもいち早く警戒を呼びかける仕組み。警報が発表された地域にいると、携帯電話から警報音が鳴り響き、安全な場所に身を寄せるなどの命を守る行動が求められる。

しかし、10年前の東日本大震災で「緊急地震速報」が出されたのは、東北地方に限られ、震度5強程度の強い揺れに襲われた首都圏などには発表されなかった。


■なぜ発表されなかったのか?

東日本大震災は、マグニチュード9クラスという未曾有の巨大地震だった。この様な巨大地震が起きた場合、震源断層の破壊は数分間に及ぶ。もしこの破壊が全て終わる前の、破壊の初期段階でマグニチュードを算出しようとすれば、実際よりも小さく出てしまう。

このため、当時気象庁は、未曾有の巨大地震のマグニチュードを過小評価してしまい、結果、関東などには「緊急地震速報」が出されなかった。


■PLUM法の導入


秒単位のスピードが必要な緊急地震速報の計算処理。しかし一方で、算出のスピードを上げれば巨大地震を過小評価しかねないというジレンマ。東日本大震災後、気象庁はこの問題の解決を探求してきた。

そして、2018年3月。気象庁は「緊急地震速報」に「PLUM法」という新たな手法を追加導入した。「PLUM法」とは、震源や地震の規模の計算から強い揺れが来るエリアを予測する従来の手法とは違い、実際に観測した揺れからその他の、どのエリアに強い揺れが来るのかを予測するという新たな手法だ。


■2月13日の福島沖地震で活きたPLUM法

2021年2月13日午後23時08分頃に、福島沖で発生した最大震度6強の地震。

23時08分10秒に出された最初の「緊急地震速報」では、強い揺れが予想されるエリアは、茨城北部、岩手内陸部、宮城、山形村山・置賜、福島となっていた。しかし23秒後に「緊急地震速報」が「PLUM法」によって更新され、予想されるエリアが首都圏や北陸などにも拡大した。実際に首都圏では、震度5弱や震度4といった強い揺れを観測している。


■南海トラフ巨大地震にも対応

気象庁は、従来からの緊急地震速報と「PLUM法」を組み合わせることで、速報のスピードを損なうことなく、また、巨大地震の規模を過小に評価する問題も回避できるとしていて、今後発生が予想される「南海トラフ巨大地震」や「千島海溝日本海溝沿いの巨大地震」などが起きた場合にも、第2報・第3報として適切な範囲に緊急地震速報を 出せると説明している。