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ワクチン接種計画 自治体から悲鳴

2021年1月22日 21:06
ワクチン接種計画 自治体から悲鳴

感染拡大防止のカギとなるワクチンの接種が、2月下旬にも始まるとみられます。ただ、実務を担う自治体からは情報が足りないなど、切実な声が上がっています。

■河野ワクチン相「2月下旬を目標に、100病院で1万人からスタートしたい」

東京では新たに1175人の新型コロナウイルスの感染が確認されました。10日連続で1000人を超えていて、重症者は158人と依然高い水準が続いています。

待ち望まれているワクチンの接種についての最新情報を整理します。現在、審査が進められているファイザー社のワクチンについて、早ければ2月中旬に専門家の会議が開かれて承認される可能性があるということです。22日朝、河野大臣は、2月下旬を目標に100病院で1万人からスタートしたいと話しました。

厚労省が自治体に示した、接種スケジュールのイメージは以下の通りです。

2月下旬:国立病院機構などの医療従事者から接種スタート。
3月半ば:残りの医療従事者。
3月下旬:65歳以上の高齢者(最大約4000万人)
4月下旬:持病がある人など

一般の国民への接種開始は、5月以降と想定して準備が進められているということです。

■東京の自治体 87%が「接種を担当する医師」を調整中

こうした接種の具体的な実務を担うのは市区町村です。会場や医師の確保、対象者へのクーポン券の郵送など、さまざまな準備を行わなければなりません。本当にこうしたスケジュールで開始できるのでしょうか。

日本テレビが、実際に準備を進める東京の49の自治体にアンケートを行い、ワクチン接種の準備状況を聞いたところ、46の自治体から回答がありました。

まず、接種場所の選定についての回答は、41.3%が「一部決まっている」、半分以上が「すべて検討中」となっており、「すべて決まっている」答えた自治体はありませんでした。

そして、「すべて調整中」との答えが87%を占めたのが、「接種を担当する医師」が決まっているかどうかです。「一部決まっている」と答えた自治体が13%で、決定していると答えた自治体はありませんでした。

■「国からの情報が足りず、準備が間に合わないのでは」

また、3月末に高齢者向けの接種を開始できるか聞いたところ、68.9%が「まだわからない」と回答し、「できる」と答えた自治体は26.7%でした。「現状だと厳しい」答えた自治体もありました。

アンケートの中で特に多かったのが「国からの情報が足りず、準備が間に合うか分からない」という不安の声です。

東京都の清瀬市からは、次のように話しています。
「複数の医療機関にワクチン接種の協力をお願いしているところです。ただ、ワクチンがいつ、どこに、どれだけ供給されるか分かってないことも多いので、その中で医療機関には準備をお願いしなくてはならない状況です。市としても限られた情報の中で準備をしていかなくてはいけないことに難しさを感じています」

医師にお願いするにも、何月何日から来てくださいとまだ言えないわけです。ほかの自治体からも同じよう声が聞かれました。

「十分な情報が国から提供されない中、きわめてタイトなスケジュールで準備に支障が生じかねない」
「本来渡っているはずの情報が全く行き渡っていないことに危機感を感じている」

ほかにも、「大幅な赤字  となってしまう」「国の補助額では到底賄いきれるものではない」例えば、コールセンターを設置するにも外部委託が必要で、そうした予算面での不安の声も多く寄せられました。さらに、「これまで行われたことがない規模のオペレーションとなる、全ての面で不安・懸念がある」という声もありました。

■ワクチン接種「先行」の海外から学ぶ 接種計画の課題

一方で、ワクチン接種が先行している海外では早くも課題が見えてきました。

アメリカでは、ワクチンは国が州まで配布するが、接種計画をたてるのは州任せで、州によってはガイドラインがずさんだったり、計画を病院に丸投げするのところもあり、現場に負荷がかかっているということです。また、最初にワクチンが配布された病院の多くが、新型コロナ患者の対応に追われていて、接種まで手が回っていないケースがあり、ニューヨーク州ではワクチンは届いても人員不足などで接種が追いつかず、一時在庫が積み上がってしまったということです。

一方、ドイツでは比較的スムーズに進んでいます。ワクチンが認可される前から約400カ所の接種センターを設置しました。認可された後、人口に応じて各州にワクチンを配布しています。

例えば、ベルリンのオンライン予約のサイトでは、ワクチンの種類を選ぶことも可能で、1回目を予約すると、2回目の空き時間が表示される仕組みです。また、接種状況がわかるサイトを立ち上げ、グループごとの接種率などを公表して透明性を確保する工夫も行っています。ただ、ヨーロッパ全般ではワクチンの供給が追いついておらず、接種が計画よりも遅れ気味のところが多いということです。

新型コロナのワクチンは、その日に接種する人数分を正確に把握して事前に解凍したり、誰が、いつ、どこで何回目の接種をしたかなどをしっかりと管理する必要があって、接種計画の作成は非常に複雑です。経験したことのない大規模な接種計画をスムーズに進めるためには、何よりも現場の声を大事にすることが求められていると思います。

(2021年1月21日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)