×

携帯料金値下げ 2021年は実感できる?

2021年1月1日 7:05
携帯料金値下げ 2021年は実感できる?

2020年、携帯料金の値下げをめぐり翻弄されたNTTドコモ、KDDI、そしてソフトバンク。

菅首相は官房長官時代から携帯電話の料金の引き下げに言及し、契約解除のときにかかる高額な違約金の問題など、他社に契約を乗り換えるときのハードルを取り去ってきた。それによって、携帯各社の競争を促し料金が下がることが期待されたが、すぐに、国民が実感できるほどの値下げにつながることはなかった。

■改革を任された武田総務相 正面から値下げを迫る
だが、2020年9月に菅政権が誕生したことで値下げへの圧力が一気に強まり、さらに新型コロナウイルス問題が思わぬかたちで後押しすることになった。

菅首相から値下げ改革を任された武田総務相は、11月に会見でこう語った。「コロナ禍において地域経済が低迷する中で、家計の負担を考える時に、携帯電話料金の値段が下がった、安くなったということを利用者の方々が実感していただかなくては、まったく意味がないと思うんですね」、「もっと丁寧にコロナ禍におけるホスピタリティを、もっと事業者の方にも充実していただきたいと思います」

これまで携帯各社は新しい料金プランを出すたびに「わかりやすくした」と説明してきたが、実際は、自分の携帯料金がいくら安くなったのかすぐに把握できるとは言い難かった。

このような料金体系のわかりにくさを政府が正面から指摘した上で、「コロナ禍で皆が苦労している時に」という大義名分も加わり、3社は値下げに向けて追い込まれるかたちとなった。

■大胆な一手を打ったドコモ
事態を大きく変えたのはNTTドコモだった。若い社員を中心に新料金プランの検討チームを作り、データ通信量が20ギガバイトで2980円(税別)のプラン「ahamo(アハモ)」を12月に発表した。

発表会にきた記者からは「インパクトが強すぎる」「従来のプランを選ぶ意味がまったくなくなるのでは」といった声があがるほどの大胆な割安プランだった。

サービス開始は2021年3月で、さらに申し込みなどの手続きはオンライン限定であるにもかかわらず、事前予約するエントリーサイトには発表から2週間で30万人が登録したという。

■“炎上”したKDDI「明日は我が身」と恐れるライバル
一方、アハモ発表の6日後、KDDIが動画配信サービスと連携したauの新プランを発表。しかし、KDDIがドコモのアハモにどう対応するのかを注目していたauユーザーの目には期待外れのプランにうつった。実際、SNS上で“炎上”し、“au解約”、“さよならau”などといった言葉がその日のトレンドワードに並んだ。

この現象にライバル会社の社員は、「明日は我が身かも。タイミングを間違えるとこんなことになるとは想像もしなかった」と述べている。

KDDIだけでなくライバル会社も、新プランの発表をするときは「政府」、「ライバルの動向」、「ユーザーの期待」を同時に見極めなければならないと痛感することになった。

■「ahamo」を追いかけるソフトバンク
その後に新プランを発表したのがソフトバンクだ。すでに12月下旬からサービスを開始することを決めていた、通信量が20ギガバイトで4480円(税別)のワイモバイルの新プランでは、ドコモのアハモに見劣りしてしまうため、新たな料金プランを出すのではないかと注目されていた。

12月22日、ソフトバンクが大々的に発表したのは傘下のLINEモバイルを完全子会社化した上で新ブランドを作り、ドコモのアハモと似通った20ギガバイトで2980円(税別)のプランを展開するというものだった。

一方、SNS上で炎上したKDDIは、2021年の1月にも対抗策となる新プランを発表するとしているが、KDDIの社員いわく「当社はソフトバンクと立場が似ている」とし、同じようなプランを出してくる可能性が高い。

■2021年値下げが始まるが一方、課題も…
2021年には政府が求める国民が実感できる携帯料金の値下げがひとまず実現しそうだ。

しかし、政府の要請をきっかけとした今回の値下げ。通信業界に詳しい専門家は「通信会社が公共の電波を利用しているとはいえ、利益を追求する企業に対し、利益率が高すぎるという理由で政府が値下げを迫るのはおかしいと思うが、一方で、携帯大手3社が市場シェアの9割を寡占している状態にあぐらをかいていたようにもみえる」と語る。

政府が民間企業の売上の根幹となる料金展開に、どこまで口を出していいのかという議論もある。

しかし、携帯通信事業者も高速大容量通信の5Gや、スマホ決済アプリなど他社と激しいサービス競争を繰り広げるだけではなく、利用者がお得に感じる料金を実現するために自発的に価格競争もするべきだったのではないか。自発的な企業努力を怠れば政府の介入を再び招きかねない。

2021年、携帯通信事業者には、利用者の立場に立った自発的な競争が強く求められている。