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死者2千人の想定も…“荒川氾濫”対策は今

2020年9月8日 19:45
死者2千人の想定も…“荒川氾濫”対策は今

台風10号は九州などの各地に爪痕を残しましたが、首都圏で今後懸念される災害の一つが、豪雨による荒川の氾濫です。実は去年、実際に氾濫の危機にさらされていたのです。荒川流域で今、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

◆去年、ギリギリで氾濫回避…2000人が命落とす想定も

7日、東京・足立区の荒川の堤防を、鈴江キャスターが国交省荒川下流河川事務所の小澤直樹副所長と訪れました。

──目の前に見えてきているのが、京成本線の線路になりますか?

小澤副所長「はい」

──今、歩いてきた所から下り坂になっていまして、堤防よりも低い所に線路が走っているのがわかります。

線路が走っていて、周囲より低くなっているこの部分。実は去年、ここから荒川が氾濫する危機が迫っていたというのです。

去年10月、台風19号が上陸。東京都心を流れる荒川でも、鉄橋の下ギリギリまで水位が上昇しました。

荒川が氾濫した時のシミュレーションCGを見ると、もし荒川が氾濫・決壊した場合には、北千住駅などに濁流が押し寄せ、川の水は地下鉄の線路を通って都心にも到達。銀座の歌舞伎座や東京駅も浸水すると予想され、都心に近い場所で決壊すると、最悪の場合、およそ2000人が命を落とすと想定されています。

──最高で水位が上がった時、鉄橋までどれくらいだった?

小澤副所長「ちょうど段差の下くらいまで来ていたと思います」

ギリギリで回避された氾濫の危機。京成本線の鉄橋が架かるこの部分は、堤防がおよそ3メートル低くなっています。記録的な大雨が降り荒川の水位が上昇すると、川の水があふれ出し、まさにこの場所から氾濫する危険があると指摘されています。


◆新たな対策「京成本線の掛け替え」も、難航の予想

足立区などは、去年の台風19号を受け、堤防が低くなっている部分に緊急的に土のうを積んでいますが、抜本的な対策とはいえません。

そこで国が計画している新たな対策が、「京成本線の掛け替え事業」です。計画では、まず上流に新たな橋をつくって現在の鉄橋を撤去します。その後、堤防を高くして、氾濫を防ごうというのです。

しかし、工事は難航が予想され、完了のメドは立っていないのが実情です。

小澤副所長「土のうも完全ではありませんので、地域の皆さんはいち早く避難をするとか、対策をしていただければと思います」


◆住民に強い危機感…自治会で対応検討も

いつ起きてもおかしくない、荒川の氾濫。流域に住む住民には、強い危機感が広がっています。

マンションの自治会で副会長を務める、片岡徳明さん。去年の台風19号を受け、荒川が氾濫した場合にどう対応するべきか、今年から検討を重ねてきました。

マンションがある地域をハザードマップで調べてみると──

「10~15メートルって何階だ?」「5階くらいまで浸水しちゃうってこと?」

片岡さんたちは6日、歩いて5分の場所にある中学校への避難を想定し、訓練に参加しました。コロナ禍で一人あたりのスペースを広く取ることが求められ、マンション自治会の会長・谷口慎治さんは──

谷口さん「かなり(避難できる)人数が限られていて、少ないですね。意外や意外。場所を確保するのが難しいのかなと思いました」

避難できる場所が少ないと知った片岡さん。これまでにない、新たな避難のあり方を模索していました。

片岡さん「ここの部屋は物置になってしまっているんですけど、例えば下の階の人が避難どうですかっていう時に片付けて全部出しちゃえば、何人かの方は一時的に避難できるんじゃないかと」

最上階の13階に住む片岡さんは、同じマンションの低層階に住む人を受け入れるつもりです。

首都圏も本格的な台風大雨シーズンを迎えた今、住民1人1人が自分や地域のため対策を進めることが求められています。