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“GoTo”いま必要? 「人災」との声も

2020年7月14日 21:11
“GoTo”いま必要? 「人災」との声も

14日、東京で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は143人でした。

このまま「GoToキャンペーン」を進めることへの賛否が分かれています。

■緊急事態宣言が出ないワケ

東京都の新規感染者は2日続けて200人を下回りましたが、減少しているとはいえない状況です。13日は119人でしたが、このうち感染経路不明が64人で約半分でした。

13日の感染者の内訳をみていきます。

20代と30代が7割を占めていますが、40代も16人、50代が12人、60・70代が4人ということで、ほかの年代も増加傾向にあります。

全国の感染者数は13日、261人でした。感染者が増えています。緊急事態宣言が出てもおかしくないのでは?と考える人もいるかもしれません。

菅官房長官は13日、緊急事態宣言を出さない主な理由を3つ述べています。

1)感染者の増加は積極的な検査の結果が含まれている

2)39歳以下の若い世代が8割を占めている

3)入院患者数は増加傾向だが、医療体制はひっ迫状況ではない

医療体制について、もう少し詳しくみていきます。

全国の新規感染者数の1週間平均、その日に入院している重症者の数、それぞれの動きを見てみると、新規の感染者数が最も多かったのが4月15日だったのに対し、重症者が最も多かったのは、その2週間後にあたる4月30日。つまり、ピークにズレがあるということです。

12日の時点で重症者は34人ですが、感染者数は増加しているため、この傾向からみると、重症者の数も今後増えることが懸念されます。

緊急事態宣言が出されるかどうかは、新規感染者の報告数や、感染拡大のスピードなどをみて総合的に判断するとしていますが、明確な基準はありません。

感染が広がっていることについて、11日に菅官房長官は「この問題は圧倒的に東京問題といっても過言ではないほど東京中心の問題」と述べました。

これに対して小池知事は13日「冷房と暖房、両方かけることについてどう対応していけばいいのか、どう仕切りをつけていくのかは、むしろ国の問題」と話しています。

つまり、無症状の感染者の行き来が増えて感染拡大につながりかねない。「感染対策」と「GoToキャンペーン」は整合性がない、という皮肉です。そして、それは国の問題だと言っていて、国と東京都が言い合うような形になっていました。

そんな中、14日に公明党の山口代表は「国のせいだ!都の問題だ!と言い合っている状況ではない」とクギをさしました。

■「GoToキャンペーン」いま必要?

では、なぜ「GoToキャンペーン」を今やる必要があるのか。ある自民党のベテラン議員に聞いてみたところ、理由を主に2つ挙げました。

1つ目に、4連休だということです。

「GoToキャンペーン」のスタートは22日。23日から4連休ですが、地方、観光業界は大変な苦境に陥っていて、この4連休でやっと一息つくところでした。ここでキャンセルとなると失業者が出ると話していました。

2つ目は、観光関連産業は裾野が広い、ということです。

「裾野」とは、タクシー・ホテル・売店・土産物店などたくさんあります。それを今さら方向転換できない、ということです。

さらに小池知事が「冷房」と「暖房」両方と言いますが、これは「感染防止」と「経済」両方かけるんだ、それで適切な温度を保とうとしているんだ、と指摘しています

■観光地からは「人災になる」との指摘も

観光地がある自治体からはこんな声も出ています。

青森県むつ市の宮下宗一郎市長は、14日の会見で次のように述べました。

「私たちには4床しかベッド確保できないっていう脆弱な医療体制しかないです。リスクが高いところからリスクが低いところに人が確実に動く。今まで我慢してきたこととか、今我慢していることが全部水泡に帰す。これが拡大をすれば今までは『天災』だと言っていられたかもしれないけれど、『人災』だというふうになりますよね」

政策によって感染が広がる、これは人災になってしまうという指摘です。

むつ市は、「GoToキャンペーン」を前に市内の観光関係の公共施設のうち、3密が避けられなかったり、市外からの利用が想定されるなどの施設を閉鎖する、という対策をとろうとしています。

また、全国知事会からも国への提言で「GoToキャンペーン」が感染拡大要因になることだけは避けなければならない」と指摘しています。まず近隣地域の旅行から始め、段階的に範囲を広げる仕組みを求めているということです。確かに、全国の知事が地域の実情に詳しいわけです。そこに応じて判断し、実施するということもありではないかと考えてしまいます。

こうした懸念の声が寄せられていることから、国交省は、キャンペーンに参加する事業者には感染対策を行ったうえで、その旨をホームページなどで公表するといった条件をつける、と新たに発表しました。詳細は17日に発表する予定です。

国と東京都はもっと緊密に連携して対策をとる必要があります。互いに相手のせいだと言い合っている場合ではないと思います。

2020年7月14日放送 news every.「ナゼナニっ?」より