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黒いカレー「キッチン南海」最後の日に密着

2020年6月26日 19:07
黒いカレー「キッチン南海」最後の日に密着

「60年続く黒いカレー」で知られる東京・神保町の人気洋食店が、26日、閉店の日を迎えました。90歳の創業者が作る“思い出の味”を最後にもう一度味わおうと、数日前から多くの人が店を訪れています。

26日、東京・千代田区。ビルの狭間に見える100メートル近い大行列。そこには…一軒の洋食店が。みなさんのお目当ては?

黒いルーのカツカレー。ひとたび口に入れれば…あまりのおいしさにこぼれる笑み。店は「神保町 キッチン南海」。

半世紀以上にわたり多くの人に愛されてきた店が26日、その歴史に幕を下ろします。24日、店を訪れると夜でもこの行列。

常連客「明日、あさっては仕事で来られないと思うので、これまでの思い出を…」「残念だなって、昔から学生時代から来ていたから」

多くが、数十年来の常連客。閉店を聞きつけ駆けつけたといいます。午後10時前、すべての客が帰った店内で片付けをする男性。

南山茂社長「掃除を私がやれば(みんなが楽)」

黒いカレーの生みの親、キッチン南海創業者の南山茂社長は90歳になったいまもなお、早朝から閉店まで毎日、店に立ち続けています。

南山茂社長「もうね、私この仕事始めてちょうど60年。(店の創業が)1960年からですから」

東京で生まれ育った茂さん。若い時は、飲食以外の職についていたといいますが、大好物のカレーを独学で作っていたといいます。その時に完成したのが現在のルー。黒いワケについて…。

南山茂社長「うちのカレーが黒いのは、焙煎してますからね」

黒さの秘密は、ルーに使うスパイスや小麦粉を事前に焦げ目がつくまで焙煎しているため。その結果、深いコクがありながらさっぱりとした口当たりの黒いルーが生まれたのです。

いまでこそ、大人気ですが…1960年の創業当時は受け入れられないことも。

南山茂社長「最初お客さんは『こんなのカレーじゃない』って、食べないような人もいましたけど…」

それでも自分の味を信じ営業を続けた結果、徐々に口コミで広がり人気店に。そして6年後には、より集客が見込める神田神保町に移転します。

その後、神田エリアはカレー店が急増。国内屈指のカレー激戦区となりますが、それでもキッチン南海は、いつも満席。特に一日平均400皿もでるカツカレーは、神田でも屈指の名物カレーとなったのです。

そんな中、突然の閉店の知らせ。その理由は、店のビルの老朽化です。仕方ないとも話しますが、ただ“この時期”の閉店に…。

南山茂社長「お客さんを2時間3時間待たせて、店が満員じゃないんだからね。そんなバカなことはね…」

新型コロナウイルス対策で入店人数を制限しているため、お客さんを長く待たせてしまう事態に。申し訳なさから腰痛をこらえ、挨拶にまわる茂さんの姿がありました。迎えた26日。

南山茂社長「この腰の痛さが今日で解放されるから、それが何よりですよ」

いつもと変わらずもくもくと準備。外では茂さんの最後のカレーを食べようと100人以上が列を作りました。

そして…午前11時15分。開店直後から次々と注文が入る黒いカツカレー。

お客さん「来てよかった…おいしい。ほんまにおいしい」

最後まで多くの人に愛された「神保町 キッチン南海」。

南山茂社長「この店で60年。その間に…お客さんに嫌われたのは一度もない。それだけは自分で満足してますね」

黒いカツカレーは今後、茂さんの弟子が来月、同じ神田神保町にオープンする店で提供されるということです。