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日本で“死亡率”が低いナゾ カギは遺伝子

2020年6月25日 21:39
日本で“死亡率”が低いナゾ カギは遺伝子

東京でも新型コロナウイルスの感染者が多い日が続いていますが、世界的に見ると日本は感染者も死者数も少なく、海外からも注目されています。

その要因と最新の研究について解説します。

■世界で急増する感染者数

25日に東京で新たに確認された感染者は48人。24日は55人だったので、2日続けて50人前後となりました。

感染者が多い日が続いて心配ですが、世界に目を向けるとケタ違いの勢いで感染者が急増しています。

現在、世界の感染者数は943万人を超えています。

WHO(=世界保健機関)は、世界の感染者数が『来週には1000万人を超えるだろう』としています。

さらに、最も感染者が多いアメリカでは24日、1日あたりの感染者数が3万6000人を超え、過去最多を更新しました。

次に死者数を見てみます。

人口100万人あたりの死者数をみると、イギリス、イタリアでは500人を超えています。

次いでアメリカ、ブラジルも多いのですが、日本を見ると100万人あたり7.61人。

韓国や中国も一桁台で、欧米と比べるとアジアの死亡率は極端に低いことが見て取れます。

海外でも、この死亡率の低さは非常に注目されています。

オーストラリアでは『日本は次のアメリカやイタリアになるかと思われたが、日本のコロナ対策の成功はミステリー』(豪ABS)。 

イギリスでは『大惨事の寸前から一転、成功へ。日本のコロナ対策』(英ガーディアン)と報じられています。

日本は他の国に比べてPCR検査数も少なく、ロックダウンも行わないなど、外出規制も緩かった。

それにも関わらず、感染者数も死亡率も欧米より低いのは大いなる謎だと見られています。

■日本で“死亡率”が低いワケ

これは一体なぜなのか。

何か理由があるはずだとして、京都大学iPS細胞研究所・山中伸弥教授は、これを「ファクターX」と呼んでいくつかの仮説を紹介しています。

ファクターとは「要因」という意味です。

その主な仮説ですが、まず、日本人がそもそも感染しづらい要因として考えられるのが『普段からマスク着用や、うがい手洗いなど衛生意識が高い』『ハグやキスなどの習慣がない』『BCGワクチンの接種』などが考えられています。

さらに、日本人が感染しても重症化しにくく、死亡も少ない要因としては『国民皆保険が整備されていて誰でも医療が受けやすく、医療水準そのものが非常に高い』『欧米に比べ肥満率が低い』『遺伝的な要因』というものも考えられています。

この『遺伝的要因』が、今、日本の死亡率の低さを解明するカギとなるかもしれない、として非常に注目されています。

京都大学や慶応大学など、全国9つの大学と研究機関の専門家がタッグを組み、「コロナ制圧タスクフォース」というチームを結成しました。

このチームには、外科医や感染症の専門家、データ解析の専門家など様々な分野のエキスパートが集結し、感染者の遺伝子を調べることで、どういう人が重症化しやすいかを解き明かそうとしています。

そもそも遺伝子とは人間を形づくる生命の設計図。

私たちの顔や体格が一人一人違うのは、設計図である遺伝子が違うからです。

遺伝子には色々な種類がありますが、今回研究チームの一人である、東京医科歯科大の木村彰方(あきのり)教授が研究しているのが、「免疫細胞」の働きを決める遺伝子です。

免疫細胞とは、体内にウイルスなどが入ってきた時、それを認識して攻撃し、体を守る役割をする細胞。誰でもみんな免疫細胞を持ってますが、少しずつその働きが違います。

例えばAさんの場合、免疫細胞がウイルスを攻撃するとウイルスは弱体化して、病気が治ります。

Bさんの場合、免疫細胞がうまくウイルスを攻撃できません。

その結果、ウイルスが増殖して病気が重症化したり、死んでしまったりします。

では、AさんとBさんの免疫細胞は何が違うのか?

それを、遺伝子を解析して解き明かそうというのが今回の研究です。

■全国で遺伝子解析へ

今回は、全国で新型コロナウイルスにかかった患者500~600人の血液サンプルを集めて、遺伝子を解析する予定です。

そのとき、重症者と軽症者を比べてどういう遺伝子タイプの人が重症化しやすいかを突き止めるということです。

木村教授は、これが分かれば、今後第2波・第3波が来た時、有効な対策が打てると期待を示しています。

木村教授「リスク評価ができるとなれば、患者さんが来たときに『この方は注意しなければいけない』『早く重症化する可能性がある』ということを念頭に置いた上で、治療を早めに開始することができるのではないかと思っています」

つまり、早めに対処できれば医療崩壊を防ぐことができるし、さらにその先には、遺伝子の違いを利用したワクチンの開発にもつながると期待されています。

研究チームは、9月から10月にも研究の結果を出したいとしています。

さらにその後、海外とも協力し、『外国人と比較して日本人特有の遺伝子が死亡率の低さとどう関係しているのか』を解明していきたいということです。

日本人の死亡率の低さの要因を見てきましたが、「ファクターX」はどれか1つというわけではなく、いくつかのファクターXが複合的に絡み合っている可能性が高いとみられています。

世界中で感染が再び広がる中、日本の最新の研究成果が、第2波・第3波に備える有効な手段になれば、その意義は大きいと思います。

2020年6月25日放送 news every.「ナゼナニっ?」より