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「レムデシビル」承認…投与した医師語る

2020年5月8日 20:21
「レムデシビル」承認…投与した医師語る

新型コロナウイルスの初めての治療薬として「レムデシビル」が、5月7日、異例のスピードで承認されました。この薬の効果とはどのようなものなのでしょうか、実際に患者に投与した経験のある医師を取材しました(※5月7日時点の情報に基づく)。


■レムデシビル承認でどうかわる?

5月7日の午後10時過ぎ、加藤厚労相から報道陣に向けて「先ほど私の方で、レムデシビルについて特例承認の決定を致しました」との発言がありました。

国内初の新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認された「レムデシビル」。アメリカの製薬会社が開発したレムデシビルは、もともと目的とされたエボラ出血熱の治療薬としては確立されなかったものの、新型コロナウイルスへの効果が期待される点滴薬です。

アメリカは、5月1日にレムデシビルの重症患者への緊急使用を承認、その動きを受け日本政府は審査手続きを大幅に短縮できる「特例承認」を適用しました。

承認されたことで、治療のためにレムデシビルを投与することが可能になります。一方で、厚労省は使用には医師の判断が必要で、重症の患者に限るとしています。供給量が限定的で、どこまで確保できるかは不透明です。


■レムデシビルの効果は?副作用は?

製薬会社主導の治験に参加し、実際に患者にレムデシビルを投与した経験のある横浜市立市民病院の立川夏夫医師によると、一部の患者に効果がみられたといいます。

立川医師「酸素が必要な肺炎があって、その治療がうまくいかない場合には人工呼吸器になって、本当に悪いと致死的であるというのがあるのですが、(レムデシビルで)そういうことを回避することができて、軽快にいたってらっしゃるということですね」

立川医師「もっと悪くなったかもしれない重症肺炎の患者が、元気になられたのが当院の一番の手応えじゃないでしょうか。選択肢が増えたということにおいては現場としては非常に助かりますから、やはり新しいデータをしっかり出していただいて、使用する先生たちに『効果はこれくらいですよ』『副作用はこれくらいですよ』ということを早いタイミングでアップデートしていただいて、適切に使うということが重要なのではないでしょうか」

ただ、「レムデシビル」を患者に投与したことのある別の医師は、「症状が良くなるまでの期間は短くなるという報告はあるが、肝機能低下など副作用も報告されている」と指摘しています。


■治療薬としてのアビガンは?

レムデシビルとは別に、軽症者への効果が期待されているのが、飲み薬の「アビガン」です。

新型コロナウイルスに感染し入院していた脚本家の宮藤官九郎さんとフリーアナウンサーの赤江珠緒さんが、それぞれ服用したと話すアビガン。新型インフルエンザの治療薬として承認されていますが、新型コロナについては現在、治験が行われています。

5月6日インターネット上で配信された番組「『安倍首相に質問!』みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」。出演した山中伸弥教授は安倍首相に対して、次のように訴えました。

山中教授「日本でアビガンはもう、安全性のデータはもう相当そろっていますし、効果のデータもかなりそろっていますから、できたらレムデシビルと同時くらいになんとか首相の鶴の一声でやっていただけないかと本当に思います」

安倍首相「効果が認められているものがたくさん、国産のお薬、既存のお薬でありますからどんどんこうしたものを総力をあげていきたいと思う」


■解説・他の薬の効果は?承認は?

レムデシビル以外の新型コロナへの効果が期待される薬について、どんな薬があるのか、その効果はどうなのか解説します。(※5月7日時点の情報に基づく解説 聞き手:newszero有働由美子 解説:日本テレビ小栗泉解説員)

有働:レムデシビルは承認されましたが、アビガンの承認の見通しは小栗さんいかがでしょうか?

小栗:アビガンはインフルエンザの治療薬としては既に承認されている薬ですが、政府は5月中に新型コロナの治療薬として承認したい考えなんです。軽症の患者に使うことが期待されていますが、動物実験で、胎児への副作用も報告されていて妊婦には使えないなどの問題点もあるんです。

小栗:他にも効果が期待されている薬として、ぜん息薬として使われている「シクレソニド」。これは実際に神奈川県の病院で患者3人に投与したところ、症状が改善したということで、現在、臨床試験が続けられています。そして「イベルメクチン」。これはノーベル賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授らが開発した、寄生虫を駆除する薬なんですね。アメリカの研究では、死亡率を6分の1に減らすという効果が報告されていますが、日本ではまだ、臨床試験が始まっていません。

有働:患者の立場からすると、効果がある薬を少しでも早く使いたいという気持ちですよね…

小栗:そうですね。ただ、実際に新型コロナの患者さんにこうした薬を投与した経験のある複数の医師らは「間違いなく効くという薬は、いまのところない」、「特定の薬剤がとてもよく効いたという印象はない」と話しているんです。つまり研究段階では、一定の効果があると分かっただけで「特効薬」が見つかったとは言えないんです。

有働:確かな治療薬ができるまで、命を守るためには「そもそも感染しない」ということで、引き続き、手洗いや人との距離を保つことを徹底しましょう。