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広がる日本のオタク文化 あの店もオープン

2011年8月31日 17:37
広がる日本のオタク文化 あの店もオープン

 今や中国にも広がっている日本の「オタク文化」。北京ではあのお店もオープンし注目を集めている。中国・北京支局・勝田真司記者が取材した。

 北京の中心部にある繁華街。若者たちでにぎわうショッピングエリアにあるCDショップをのぞいてみると、日本のCDがあった。中国でも日本の音楽は人気だ。また、漫画を扱う店に並ぶのは中国語に訳された日本の漫画。多くの学生や若い会社員らが買い求めるという。この漫画店の店長は「日本の漫画を広めたくてこの店を始めました」と話す。

 北京ではいま、ある日本の文化が人気を集めている。「ニーハオ」と、あいさつすると「いらっしゃいませ」とメイド姿の店員が日本語で出迎えてくれた。ここはメイドカフェ風の居酒屋だ。席に座ると店員が現れ「こんにちは、初めての来店ですか?」と声をかけてくれた。中国のレストランといえば、いまもまだ無愛想な接客が当たり前だが、日本式の丁寧な接客だ。名前をたずねてみると「ここでは“あずき”と呼ばれています」と教えてくれた。

 店は中国人が経営しており、客もほとんどが中国人だ。女性客の姿も目立ち、メイド姿の店員は大学生のアルバイトが中心だという。店員に話を聞いてみると「子供のころからポケモンとかのアニメを見ていてアニメが好きになったの」「ここで働いていると、漫画の世界にいるみたいでとても楽しいです」と、このお店で働くことが楽しそうだ。

 服の生地を見ているのは峰岸宏行さん。中国人経営者の依頼を受けて店のアドバイスをしている。来月用のエプロンのつかない制服を見せてくれた。店員の制服は自らデザインし、店では日本のアニメ関連企業が作った商品も販売している。峰岸さんは「日本の企業の方々と一緒に中国にアニメオタク文化を広めてゆく。そして、中国のオタクの方々に集まってもらう場所を提供する。プラットフォームとしての存在が一番重要だと思っています」と語る。また、常連客は「ここに来るのはまるで自分の家みたいだから。こういう雰囲気だから多くの客が来るんだと思うよ」「日本的な雰囲気が好きなの。ここは日本の雰囲気が濃密なのよ」とこの店の印象を話す。

 オタク文化を広めることに情熱を燃やす峰岸さんだが、実は意外な本職を持っていた。朝、自宅を訪ねた。部屋に並ぶのは医学書。中国で一二を争う名門、北京大学の医学部を卒業、病院で研修中の「医者の卵」だ。平日の日中は毎日、病院勤めをしている。中国で生活する峰岸さんにとって気になるデータが先月、発表された。日中合同の世論調査で、日本人の約80%、中国人の約66%が、相手国の印象を「良くない」と答えた。これは調査開始以来、最も悪い結果だ。

 研修医の仕事を終えるとほぼ毎晩、店に顔を出す峰岸さん。客が自ら店員を撮影することは禁止しており、1枚、約110円で店が記念撮影をする仕組みになっている。メイド姿の店員が働きやすく、雰囲気のよい店作りのためだという。峰岸さんは「日本の文化あるいは中国の文化どちらでもいいんですけど、こういうのを少しずつ広めていって、初めて中国の人と話ができるんじゃないかと思う」と語る。峰岸さんのこだわりが詰まったメイドカフェ風居酒屋。日中の架け橋となっている。