需要減少に歯止めかからず コメ王国・新潟で米価下落に直面する生産者の危機感と模索 ライバルがタッグを組んだ“パックご飯”も

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新潟2021.11.24 20:43

慢性的なコメ余りに加え、コロナ禍による外食産業の停滞などでコメの需要の落ち込みが一段と大きくなっています。コメ王国・新潟県で米価の下落に直面する生産現場などの現状と新たな動きを取材しました。

マグロにサーモン…。あふれんばかりのネタが乗った豪華な海鮮丼です。ただ、この丼の主役はというと…

【旬菜創和ぜんてい 新潟LEXN店/廣川和晃調理長】
「新潟米ですね」

茶碗いっぱいに盛られたコメ。現在、県内50の飲食店で期間限定の丼やカフェめしメニューが提供されています。“もっとたくさん新潟米を食べてほしい”と企画されたこのプロジェクト。県やJAなどで組織する新潟県米消費拡大推進協議会が音頭をとりました。

どうしてごはんをもっと食べてほしいのか?

【JA新潟中央会 農政営農課/磯島一久監理役】
「コメの消費が年々減っているんですけれども、新潟はコメ大国でありますので、やっぱりコメを皆さんに食べてもらいたい。農家の方々が元気になるためには、やっぱりコメの消費が進まないと作る側も楽しみが減ってしまうわけでありますので」


上越市清里区の農業法人『グリーンファーム清里』。ビニールハウスの倉庫に高く積まれているのは、ことしとれた新米です。

【グリーンファーム清里/保坂一八社長】
「ここにある全部が今年産のコメです。コメができて、この状態になって検査が終わると、例年であれば1週間か2週間くらいでコメ屋さんがどんどん引き取ってくれるんですが、今年はコメ屋さんの方も去年からのコメがだぶついたりして倉庫事情が悪いと見えて。一番遅いのは来年の2月かな…。2月の末までにはこれ全部なくなるはずなんですが、『少し待ってくれ』と」

生産したコメは、業者を通じて主に東京の飲食店やホテルなどに販売しています。例年であれば収穫から1~2週間のうちに発送される新米。しかし、コロナ禍で外食の需要が減り、飲食店で消費するコメも減少しました。コメ離れの傾向に歯止めがかからないところに追い討ちをかけられた状況です。

『グリーンファーム清里』は従業員24人。約160ヘクタールの農地でコメを生産しています。

【グリーンファーム清里/保坂一八社長】
「価格が去年から1割から1割2分くらい落ちています。うちの会社はだいたい1億6000万円から1億7000万円くらいの売り上げなので、1割変わると1600万円くらい変わってしまうんです。コメづくりにかかる経費は同じなのに。同じ面積でやっていますので」

出荷業者と卸売業者の間のコメの売買価格である相対取引価格を新潟県の『一般コシヒカリ』で見ると、2019年10月には60キロ当たり1万7353円でしたが、今年の10月は1万5596円でした。2年間で1700円近く安くなっています。

コメが売れない…。“米価の下落”は生産者にとって深刻な問題です。

そこで…
【グリーンファーム清里/保坂一八社長】
「これが加工用のブドウです。今年から始めました。マスカットベーリーAという品種で、基本的にはワインの材料になる」

新たに始めたのは、ワイン用のブドウ栽培。今年から試験的に栽培を始め、うまくいけば2022年の秋には出荷できる予定です。

【グリーンファーム清里/保坂一八社長】
「経営の複合化・多角化ということでブドウを取り入れたらどうかと。出口がしっかりしていないと何をやるにも大変で『つくることよりも売る』っていうのがなかなか対人行為で難しい。その辺はしっかりしている。」

11月19日、農林水産省は2022年の主食用米について、需要に見合った適正生産量を675万トンに設定したと発表しました。今年の主食用米の生産量は10月25日現在で701万トンが見込まれていて、26万トンもの大幅な減産が必要になります。

コメを巡る環境が厳しさを増す中、農業でどうやって生きていくのか。農家それぞれに突きつけられた問題です。

【農業/布施義隆さん】
「ネギを作り始めたのは今年が初めてで、準備を春から始めて、今ようやく収穫という形になりますね」

新発田市の農家・布施義隆さん。15ヘクタールあまりの農地のほとんどでコメを作ってきましたが、今年からネギの栽培を始めました。

【農業/布施義隆さん】
「ネギは収穫が一番大変だっていうのは聞いていたので、その通りだなぁと思います。初めてにしては良く育ってくれたのかなとは思いますね」

ネギを育てている土地は、もともとはコメを作っていた場所。将来を見据えてコメだけに頼らず、野菜などにも力を入れようと考えた結果です。

初めての作業もちょっとずつ慣れてきたとか。布施さんの父・喜章さんも数年前からブロッコリーをつくっています。

【布施義隆さんの父/喜章さん】
「ネギはいいかもしれない。手があれば、田んぼをやるよりネギの方がよっぽど収入が良いっていうから。ブロッコリーは小遣い程度にしかならないからね」

長年コメづくりに心血を注いできた布施さん親子。しかし、厳しくなる一方の状況に直面して、先行きに不安が募ります。

【布施喜章さん】
「米が余っているから米価がどんどん下がるわけでしょ。コメをつくれば、なおさら余るわけじゃん。こんなのがずっと続いたら、うちあたりはちょっと無理かもしれないですね、これ以上は。」

コメをめぐる非常事態ともいえる厳しい状況に、産地間競争のライバルも手を組みました。

【JA越後ながおか経営管理委員会/野口剛会長】
「農業を取り巻く環境というのは、本当にコメ余りですとか、非常に農家にとっては大きな打撃となっている」

タッグを組んだのはJA越後ながおか・JA越後さんとう・JAにいがた南蒲・JA柏崎の4つのJA。ピンチを一緒に乗り越えようと共通の新商品として長岡市産のコシヒカリを使った『パックご飯』を完成させました。

【長岡市/磯田達伸市長】
「ほんとに新米の味がするというのがびっくりですね。やっぱりコシが強いというか、粘りがあって。長岡では漬物とみそ汁でごはんを2杯3杯食べるっていう話がありますけど、まさにそういうコメかなと思います」

コメの需要が減少する一方で、『パックご飯』の生産量は年々増加しています。食生活が変わる中、若者の単身世帯などから手間いらずのご飯として需要が高まり、コメの新たな販路として注目されているということです。

【JA越後ながおか経営管理委員会/野口剛会長】
「とにかくコメの消費拡大ですよね。コメに関心を持ってもらいたいというのが我々の願い。消費者の皆さんの口にうまく運んでもらえるような取り組みをしていきたいと思っています」

需要の減少傾向に新型コロナウイルスが拍車をかけ、危機感が広がるコメ業界。新たな挑戦で生き残りを模索します。

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