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「18歳成人」金融分野に潜む落とし穴とは

2022年1月22日 12:48
「18歳成人」金融分野に潜む落とし穴とは

この春から、成人年齢が18歳に引き下げられます。これにより、親の同意が無くてもできることがぐんと増えます。中でも特に注意が必要なのは金融分野での変化。思わぬ落とし穴とは…?

■知っているようで知らない?18歳成人でできるようになること

今年4月1日、民法が改正され、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられます。成人年齢が変わるのは1876年の民法制定以来、初めてのことです。民法における「成人」とは何をさすのか。

それは、「父母の親権に服さなくなる年齢」であると同時に、「一人で契約をすることができる年齢」という意味でもあります。成人となれば、親の同意を得ずに自分の判断で様々な契約をすることが可能になるのです。

例えば、収入があるなら、携帯電話の契約や、一人暮らしの部屋も借りることもできます。ほかにも、10年有効のパスポートの申請ができるようになったり、公認会計士や医師免許などの国家資格を取得することもできます。このように、成人年齢の引き下げに伴い、18歳になると様々なことが可能になります。

その一方で、飲酒や喫煙、ギャンブルなどの年齢制限は今と変わらず、20歳にならないとできません。

■金融分野は変化が大きい

特に「契約」ができるようになることで、選択肢が大きく増えるのは「金融の分野」です。消費者金融の利用や、クレジットカード、各種ローンなどを使い、債務を負うことも可能になります。場合によっては18歳にして多額の「借金」を負ってしまう恐れがあるのです。

未成年の契約は親の同意が無い場合だと後から取り消すことができますが、民法の規定により、成人した後の契約は、親の同意が無い場合でも取り消しができなくなります。このため、成人になったばかりの若年層は、詐欺や悪徳商法などの被害に巻き込まれるリスクが高くなるといわれています。

■「自分で判断する能力」をどう育むか

そこで必要になるのが金融分野へのリテラシー。金融庁は、金融リテラシーが足りない若者向けに、様々な取り組みを行っています。公式サイトでは預貯金や投資などの金融に関する知識をまとめた動画を公開。各地の高校や大学への出張授業やオンライン授業、講師派遣を行い、積極的に若年層にアプローチしているといいます。その実績は、コロナ禍でも減ることはなく、昨年度も300件ほどに上ります。

また、この4月から高校の新しい学習指導要領が実施され、「家庭科」と「公民科」で金融に関する授業が拡充されます。内容としては、株式や証券、雇用や貯金などのほか、住宅ローンに代表される借金についても盛り込まれます。ライフステージに合わせた資産形成や、生きていくうえで必要な金融知識を指導していくといいます。

金融庁の担当者は、授業を行ってみて、「こういう話は初めて聞いた」とか「早めに知っておきたかった」など、ポジティブな感想を数多く耳にしたといいます。さらに、「金融教育をきちんと受けてこなかった若年層に、知識不足によってトラブルに巻き込まれることが多い」とみていて、学習指導要領の改訂による授業も含め、「金融リテラシー教育を拡充させる必要がある」と強調しています。

ただ怖いと恐れるだけではなく、リスクを伴うこともきちんと理解しながら「自由と責任」を手にすることが重要です。担当者は、正しい情報を集めて、何事も自分で責任を持って判断できる成人になってほしいと願っています。

■親世代の認識も重要

キャッシュレス決済や仮想通貨などの登場で、金融の世界でのトラブルはますます複雑・巧妙化しています。誰でも巻き込まれる可能性は十分にあります。しかし、成人になってしまえば一度結んだ契約は取り消すことができません。正しい知識にもとづく自覚を持つ前に、多くの選択肢を得てしまう。ここに大きな落とし穴が潜んでいるのです。

家庭でも、成人になることの意味や、それに伴う様々な変化について、話す機会をつくってみてはいかがでしょうか。