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藤井聡太四冠 年明け早々、五冠挑戦

2021年12月31日 7:24
藤井聡太四冠 年明け早々、五冠挑戦
異次元の強さで次々と記録を樹立していく、藤井聡太四冠。2021年は「棋聖」と「王位」のタイトル防衛に成功し、新たに「叡王」と最高峰のタイトル「竜王」を獲得。史上最年少での四冠達成を果たしました。20歳を迎える2022年にはどのような活躍を見せてくれるのでしょうか。

■「冬将軍」との王将戦七番勝負

2021年11月、10代での四冠達成という歴史的な偉業から1週間もたたずして、5つめのタイトルへの挑戦権を獲得した藤井四冠。年が明けて1月9日からは王将戦七番勝負に挑みます。現在、「王将」を保持するのはこれまで何度も藤井四冠の前に立ちはだかった渡辺明三冠(名人・棋王・王将)です。

2人あわせて8大タイトルのうち、7つが出そろう、この対決はまさに将棋界の頂上決戦と言えます。タイトル戦での対戦成績では藤井四冠が6勝1敗と渡辺三冠を寄せ付けていません。

また、2021年2月に行われた朝日杯将棋オープン戦準決勝でも、将棋ソフトは終盤まで99%渡辺三冠の勝利を示していましたが、藤井四冠が劇的な逆転勝利を収めています。しかし、これまで渡辺三冠と戦ったタイトル戦は1日制。1局を2日かけて行うタイトル戦での戦いは今期の王将戦が初めてとなります。

渡辺三冠について藤井四冠は「とても作戦巧者」と評し、2日制での対局は「どういう感じになるかわからない」と述べています。しかも、渡辺三冠は現在、王将戦3連覇、棋王戦においては9連覇と秋・冬に行われるタイトル戦に強く「冬将軍」と呼ばれています。自身も「最初に持たせてもらったタイトルが竜王だったので」「秋冬に仕上げていく意識があったので、それが続いているのかもしれない」と語っています。これまでとは違う渡辺三冠に藤井四冠はどのような戦いを見せるのでしょうか。

■王将戦恒例「罰ゲーム」

また、王将戦七番勝負にはある変わった伝統があります。対局翌日に行う勝者が仮装などしながらの記念撮影、ファンからは「罰ゲーム」と親しまれています。

藤井四冠にもすでに魔の手が。「王将」への挑戦権獲得会見では、藤井四冠が好きな鉄道の乗車券に見立てた、“挑戦券”を主催社から渡され記念撮影を行いました。「勝たなければそれ(罰ゲーム)もないので、まずは1回経験してみるというのが最初の目標かなと思います」

挑戦権獲得の会見で罰ゲームが最初の目標と語った藤井四冠。渡辺三冠から勝ち星をあげられれば、対局とは違った一面を記念写真で見られるかもしれません。夏のタイトル戦が多かったので、新しく冬用の和服を仕立てて挑むという藤井四冠。これまで羽生善治九段ら3人しか達成していない、五冠達成に最年少で名を連ねるか注目の集まる王将戦七番勝負ですが、違った形でも期待が高まっています。

■最も伝統あるタイトル「名人」への道

8大タイトルの中にはどんなに勝利してもデビュー後、すぐには獲得できないタイトルが1つだけあります。それは400年以上の歴史を誇る称号「名人」です。

江戸時代の1612年から幕府の庇護を受けながら、「名人」の称号は長く世襲されてきましたが、明治維新によって経済的基盤を失い家元制度は衰退していきました。そして1935年に実力制になると、それまでは一度名乗ると終生「名人」であったものが、現在のタイトルという形となったのです。

現在、「名人」に挑戦するには1年を通して行われる順位戦のリーグを勝ち上がって最上級のリーグA級でトップに立たなければなりません。順位戦は下からC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と5つのクラスに分かれていて、多くの棋士がプロデビューするとC級2組から参加します。そのため、名人に挑戦するには最短でも5年かかるのです。

藤井四冠は現在、B級1組で戦っていて、このリーグで8勝1敗と成績はトップとなっています。このまま最短で「名人」を獲得できるのは2023年の5月から6月で、その時、藤井四冠はまだ20歳。「名人」の最年少獲得記録は谷川浩司九段の21歳2か月で、この記録を更新する可能性を残しています。そのためには、残るB級1組の対局でも勝利しA級昇級を決めなければならず、その後もA級で戦うトップ棋士たちとの戦いが待ち受けているのです。

最高峰のタイトル「竜王」を獲得して四冠を達成し、棋士の序列1位となった藤井四冠ですが、まだまだ新たな金字塔を打ち立てる可能性を秘めています。