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NY現役最古の地下鉄がまもなく引退

2021年12月30日 12:00

アメリカ・ニューヨーク市内を58年にわたって走り続けてきた地下鉄の現役最古の車両が2022年1月9日に引退します。無骨なステンレス製の先駆けとなったデザインには、日本との意外な関わりもありました。

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■NY地下鉄“現役最古”の車両 まもなく引退

ニューヨークを走る地下鉄といえば、無骨なステンレス車両を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。その先駆けとなった車両がまもなく引退となります。

ラストランを前にした2021年12月26日には“さよなら運転”が行われ、ニューヨークに鉄道ファンが集まりました。

■見た目は“洗濯板”…ステンレスで軽量化

今回、引退を迎えるのは、1964年に600両製造された「R-32」型。洗濯板のようなステンレスの外観は、当時としては最先端のデザインで、「ブライトライナー」という愛称で呼ばれるようになりました。

1両あたりの重量は約31トンで、ステンレスを使うことで従来の車両より1.8トン軽量化でき、メンテナンスが効率化されたのが当時としては画期的だったということです。

特徴的なデザインの車両はニューヨークを舞台にした映画にも登場し、『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015年)、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)、最近では『ジョーカー』(2019年)などで取り上げられました。

「ブライトライナー」はニューヨークの地下鉄の歴史の中で2番目に長い、58年にわたって市内を走り続けてきました。

■リアル“かぶりつき”ができる唯一の地下鉄車両

この車両の大きな特徴は、乗客が外を見ることができる前面の窓がついていることです。車両の先頭か最後部に陣取ると、運転士台や車掌室が間に入ることなく本当の“かぶりつき”で車窓を楽しめる唯一の車両でした。

ニューヨークの地下鉄は郊外に出ると地上を走るので、ニューヨークの町並みと地下鉄の配線を同時に楽しめたはずです。

■日本の通勤電車車両との“意外な縁”も

実はこのR-32車両。日本との意外な縁もあるんです。車両を製造したのはアメリカにある金属加工メーカー「バッド社」です。このバッド社と東急電鉄が技術提携して生まれたのが、オールステンレス車両7000系(初代)です。

ニューヨークのR-32と、どことなく共通点のある東急電鉄の車両はオールステンレスで軽量化され、省エネにも貢献する形となり、高度成長期の通勤需要を担っていました。

■車両まるごと“海にドボン”も

R-32型車両は順次、引退が進んでいましたが、2010年まで行われていた廃棄方法は、アメリカらしいユニークな方法でした。

それは、「車両をまるごと大西洋に投棄して人工魚礁にする」というもの。ニューヨークを駆け抜けた地下鉄の一部は大西洋の海の底で魚のすみかになり、第二の人生を送っています。

R-32「ブライトライナー」のラストランは2022年1月9日に予定されていて、デビュー当時のルート「Q線」を4往復する予定です。