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北京決定・羽生結弦 4A挑戦の苦悩を語る

2021年12月27日 3:17
北京決定・羽生結弦 4A挑戦の苦悩を語る

◇第90回全日本フィギュアスケート選手権大会(12月26日、さいたまスーパーアリーナ)男子シングルでは羽生結弦選手が4回転半ジャンプに挑戦し、回転不足で成功ならずも322.36点で優勝。北京五輪代表に決定しました。

以下、フリー演技終了後の羽生選手の会見、主な一問一答。

――フリーの演技振り返って?

「疲れました。ただ(4回転アクセルは)やはり(4回転)ループとは比べものにならないくらい体力の消耗はありました」

――初めて4回転アクセルに挑戦。手応えは?

「今日の朝の練習で自分の中では回せることを期待はしていなくて、とにかく本番が一番大事なので、本番に合わしきれるようにと思って練習はしていました。ただ、あまりにも跳べなさ過ぎて若干失望してて、本番行くまでにかなり精神がグジャグジャになっていた。まだ自分自身が成功しきれてないジャンプを本番で使用するというのが、そういうことも含めて難しいんだなというのを改めて感じさせてもらえた」

――今回の4回転アクセルのできばえについては?

「まぁ頑張ったなって感じです。初日のアクセルをみなさん見ていて『羽生、めちゃくちゃアクセル上手になったじゃん』と思われたと思うんですけど、あれが出来るようになったのが本当まだここ2週間ぐらいなんですね。それまではずっと軸が作れなくて回転ももっともっと足りなくて、何回も何回も体を(氷に)打ちつけて、本当に死にに行くようなジャンプをずっとしていた。正直結構まだいっぱいいっぱいです。あそこまででも軸を作るということがどれだけ大変なのかということと、その軸を作りきれる自信ができて、それから100%で回しきるということをやっていかないとダメなので、試合の中であれだけ出来たらまだ今の自分にとっては妥協できるところにいるんじゃないかな」

――北京五輪でも(4回転アクセルの)挑戦続けます?

「正直、言っちゃうと、NHK杯前にこれよりももっと悪い出来でしたけど、やっと立てるようになったのがNHK杯前で、立てたなって思ったら次の次の日あたりに捻挫して、そのあとストレスとかいろいろたまって食道炎になって熱が出てみたいなのが、いろいろあって、1か月間全然何も出来なかった。その時点で『やめちゃおうかな』と思ったんです。『ここまで来られたし』と思って、『形にはなったし、こけなくなったしな』と思って。だからこの全日本(選手権)に来るまでも、正直『これでいいんじゃないかな』と思ったんですよね、自分の中で。『これでやめてもいいんじゃないかな』と。すごくみなさんに『羽生さんにしか出来ないですよ』とか、『羽生ならできるよ』と言ってもらえるのはすごくうれしいんですけど、自分の中で限界は感じた。だから『もう、これでいいじゃん』と思ったんですけど、すごい悩んで悩んで苦しんでもうちょっとだけ、せっかくここまで来たんだったら、やっぱ『降りたい』と言ってる自分がいるんで、めちゃくちゃ皆さんに迷惑かけるかもしれないんですけど、もうちょっとだけ頑張ります」

――『やめちゃおう』と思ってからここまで戻ってくるきっかけは?

「長くなりますけど、大丈夫ですか?短めに?正直自分の中でも結構焦ってて早く跳ばないと体がどんどん衰えていくのは分かりますし、ただ、自分が設定した期限よりも明らかに遅れているので『なんでこんなに跳べないんだろ』って苦しさはあるんですけど、そういう意味での苦しさと、自分の中で何か『こんなにやっているのに、できないのに、やる必要あるのかな』みたいな諦めみたなものがだいぶ出たんですけど、せっかくここまで来たんだったらみんなの夢だから、みなさんが僕に懸けてくれてる夢だから、自分のためにというのはもちろんあるんですけど、みなさんのためにもかなえてあげたいなと思いました」

――『死ににいくような』と話していましたが、(4回転アクセルは)どんな練習をしてるのかと、春の時点では1000本ぐらい跳んだと話してましたけど(羽生:跳んでましたね)、今は何千本ぐらいになった?

「どれくらい跳んでるんですかね、自分で考えたこと無いんですけど、1日に本数制限はしてます。ただ、4回転半にトライするという本数制限をしているだけで、4回転半に行き着くためのトリプルアクセルやシングルアクセルだったりという練習をひたすら何十本もやっていますね。あとは“精神的に”という部分が強いですけど、(4回転アクセルは)誰も跳んだことがないんですよ、『誰も出来る気がしない』と言ってるんですよ。それをできるようにするまでの課程って本当にひたすら暗闇を歩いているだけなんですよね、だから毎回頭打って脳しんとうで倒れて死んじゃうんじゃないかとかと思いながら練習はしてました」

■写真:西村尚己/アフロスポーツ