生乳が大量廃棄の危機…飲食店が救いの手
牛乳や生クリームの原料となる「生乳」が、この年末年始、およそ5000トンも廃棄される恐れが出てきています。酪農の現場が深刻な状況に陥るなか、生乳を廃棄の危機から救おうと動き始めている人たちもいます。
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もうすぐクリスマス。東京・千代田区のホテルニューオータニで作られていたのは、クリームたっぷりのクリスマスケーキです。
このホテルでは、コロナ禍で宿泊客や宴会が減り、ビュッフェの牛乳やパンにつけるバターといった乳製品の消費が減少しました。毎年、クリスマスシーズンには、ケーキのクリームなどにおよそ2トンの牛乳や生クリームを使うということで、今年も例年と同じくらいの量を使う予定だといいます。
ホテルニューオータニ マーケティング課・田中小百合さん
「生乳の消費量がどうしても減ってしまっているという話もありますので、少しでもお役に立てればなと思っております」
実はこの年末年始、牛乳や生クリームの原料となる「生乳」がピンチになっています。牛乳メーカーや酪農家の団体cによりますと、コロナ禍で飲食店などでの消費が減る中、牛乳パック500万本にあたる、およそ5000トンもの生乳が廃棄される恐れが出てきているといいます。
一般社団法人Jミルク 専務理事・内橋政敏さん
「酪農家の皆さんには一時的に、特に厳しい時期に生乳の出荷量を抑えていただく取り組みを呼びかけています」
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酪農の現場は深刻な状況に陥っていました。
およそ140頭の乳牛を飼育する千葉県八千代市の加茂牧場では――
加茂牧場代表・加茂太郎さん
「牛の乳房は蛇口じゃないので、今日・明日で(生乳の量を)増やしたり、減らしたりということはできないので…」
消費量が減っても、簡単に減らすことはできない生乳の量。普段、学校給食がない時期などには、バターなどの加工品にして消費しますが、新型コロナによる飲食業界の落ち込みが長引き、加工品の在庫も余るようになりました。生乳の使い道がなくなっているといいます。
生乳の消費が減っても、牧場では変わらず新たな牛が生まれ、育てていく必要があります。牛が食べるえさの倉庫に行ってみると、さらなる問題もありました。
加茂牧場代表・加茂太郎さん
「今は本当にもう綱渡りの状態で」
新型コロナの影響で、えさの価格が3割以上、高騰し、経営を圧迫しているといいます。
加茂牧場代表・加茂太郎さん
「(今後の状況次第では)経営自体が立ち行かなくなる可能性が大きくなっちゃいますね。僕ら、たぶんそこが一番怖くて、この先これがどこまで続くのか…」
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生乳を廃棄の危機から救おうと、飲食店も動き始めています。東京・江東区にあるフレンチレストラン「25Hudson」では、業界団体からの依頼を受け、家庭で簡単にできる「地鶏を使ったミルク鍋」のレシピを考案しました。
25Hudson オーナーシェフ・能勢雄介さん
「牛乳を飲むだけだと消費が少ないと思ったので、今回、ご家庭用に牛乳を使った鍋を考えた」
さらに、来月からは牛乳を使ったグラタンを、店や通信販売などでも提供するといいます。
業界団体「Jミルク」では、すき焼きや豚しゃぶといった和食にも牛乳を使う「乳和食」のレシピをホームページで紹介するなどして、牛乳の消費拡大を呼びかけています。