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オミクロン株で3回目接種の前倒しと課題は

2021年12月2日 20:23

日本では空港検疫で2例目が確認された、新型コロナウイルスのオミクロン株ですが、新たにアメリカでも感染が確認されるなど、世界中で拡大が続いています。こうした中、海外ではワクチンの追加接種を加速する動きが出ていて、日本でも検討が始まりました。

■オミクロン株…世界各地で感染確認

まずは国内の状況です。1日に国内で確認された2例目となるオミクロン株への感染者は、ペルーに滞在歴のある20代の男性でした。この男性は、今年10月にファイザーワクチンの接種を完了していたことが分かりました。

そして国内1例目となったナミビアの外交官も、今年7月にモデルナワクチンの接種を完了していたことが分かっています。

こうしたオミクロン株へのブレイクスルー感染は、世界各地で確認されています。現時点でオミクロン株の感染者が確認されているのは28の国と地域です。

1日は新たに韓国、アメリカでも確認されました。アメリカの感染者は先月22日に南アフリカから帰国したということです。韓国では、ナイジェリアに旅行し、帰国した夫婦など合わせて5人の感染が確認されました。

アメリカで確認された感染者、そして韓国で確認された5人のうち2人は、ワクチン接種を完了していたことが分かっています。


■ワクチンで重症化防げる…WHOが見解

懸念されているオミクロン株へのワクチンの効果については現在、世界中の科学者が分析を急いでいて、1、2週間以内にはある程度のデータが出てくるとみられます。

ただ、WHO(=世界保健機関)の主任科学者は1日の会見で「他の変異株と同様、ワクチンで重症化を防げると考えられる」との見解を示しました。

今年9月までに行われた調査の結果で、ファイザーワクチンの効果がどれくらい続くのか。まず、感染を予防する効果を示したグラフでは、2回目の接種から1か月後の時点では77.5%の予防効果が確認されましたが、3か月を過ぎたあたりから大きく下がっていき、6か月後には17.3%まで効果が減ってしまっています。

つまり、接種完了から半年で感染予防効果はかなり減ってしまっています。

重症化や死亡を防ぐ効果はどうでしょうか。2回目の接種から1か月後が96%の予防効果が確認されましたが、その後、やや下がるものの、6か月後まで88.9%と高い効果が維持されています。

つまり、半年後でも重症化を予防する効果はある程度、維持されています。

ただし、重症化のグラフを7か月までみると、55.6%とガクッと効果が下がっています。重症化を防ぐ効果も、時間の経過とともに大きく減少してしまうことが分かります。


■3回目の接種…前倒しは?

やはり、早く3回目を打った方がいいと言えます。3回目の接種をめぐっては、海外で感染の再拡大やオミクロン株の広がりを受けて、接種の時期を早める動きが出ています。

イギリスでは対象年齢を40歳以上から18歳以上に引き下げ、2回目の接種完了からの間隔を6か月以上から3か月以上に短縮することを決定しました。

フランスでも6か月を5か月に短縮しました。

韓国は年齢によって60歳以上は4か月、60歳未満は5か月にそれぞれ短縮しました。

日本は現在は、2回接種完了から原則8か月が経過した18歳以上を対象としていて、例外的に6か月に前倒しできる対象は、クラスターが発生した医療機関や高齢者施設などの他、クラスターが複数の医療機関などで発生した場合は、同じ保健所管轄内の医療従事者や入院患者も対象としています。

ただ、前倒しの拡大を求める声も上がっています。

日本医師会・中川俊男会長
「8か月を待たずに6か月を過ぎた時点で、柔軟に体制が整った自治体からやってはどうかという意見もかなり多く出ています」

日本医師会の中川会長は1日、このように話した上で「一番の心配はワクチンが十分に円滑に供給されるか」だと懸念を示しました。

政府も、6か月で打てる対象を拡大する方向で検討はしています。政府のあるワクチン接種担当者は、「オミクロン株が出たので、クラスターが発生する可能性がある場合、自治体の判断で3回目の接種を前倒しできるよう見直すことになりそうだ」との見通しを示しています。


■接種前倒しへの課題

ただ、次のような課題があります。

1.ワクチンの輸入を前倒しできるか。

追加接種は1日から医療従事者などを対象に始まっていますが、接種スケジュールを前倒しするとなると、その時に必要な供給量が追いつかない可能性も出てきます。自民党のワクチン対策プロジェクトチームの座長で医師の古川俊治議員は「交渉は今しているが、各国が欲しがっている中、日本は感染者が少ないので優先してもらえないかもしれない」と話しています。

2.接種を行う自治体の準備が間に合うかという問題。

接種券の発送や会場の確保、接種を行う医師や看護師の確保など急には整えられない自治体も出てきます。いずれにしても、追加接種を前倒しするかどうかは、最終的には各自治体の判断に委ねられる見通しです。

追加接種を前倒しするとなると、実際に現場で接種を行う自治体にとっては大きな負担となります。それだけに国はワクチンの供給量の見通しや、どういう優先順位で行うのかなどの情報をスピーディーに透明性を持って自治体と共有してほしいと思います。

(12月2日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)