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子育てで“お父さん”レンタル…無料ナゼ?

2021年11月24日 10:55
子育てで“お父さん”レンタル…無料ナゼ?

子育てなどのサポートを必要とする人が、得意技のある“お父さん役”を無料で頼める「お父さんバンク」。都内のパン店で働き、この取り組みでチャイルドシッターを依頼した家族を取材しました。信頼関係をベースにした、新しい助け合いの輪が広がっています。


■約50人…得意技のある“お父さん”

都内にオープンしたパン店で、店長の川崎友子さん(42)があわただしく働いています。子どものつむぎちゃん(7)と、なぎ君(2)は遊びたい盛り。川崎さんには、仕事と子育ての両立に悩みがあります。

川崎さん
「子どもと遊びたくても(仕事で)外には連れていけない状態です。私としては外で遊んでほしいので」

この日は土曜日ですが、夫も出勤。そこで、ある助っ人を頼みました。

川崎さん
「『お父さんバンク』で依頼したチャイルドシッターです。遊んでくれる、お父さん代わりみたいな。いろんな“お父さん”がいます」

「お父さんバンク」とは、子育てなどのサポートを必要とする人が、“お父さん”を無料で借りられる取り組みです。運営側の面接などを経て、女性も含め、約50人がお父さん役として登録しています。

それぞれ得意技があり、運動会で写真を撮ってほしい時は、カメラが得意な“お父さん”をお願いし、壊れた家具を直してほしい時は、DIYが得意なお父さんに依頼します。

■報酬ナシ「あくまで自分が楽しく」

今回、川崎さんが依頼したのは、本業がベビーシッターの浅野暁彦さん。得意技は「体育」と「図工」です。

お父さん役として、まずは鬼ごっこで一緒に走りました。そして、得意の図工を生かした手作りの凧をかばんから取り出して遊びました。つむぎちゃんは、「飛んだー」と嬉しそうに走り回りました。

材料費は持ち出しで、報酬もないボランティアです。浅野さんは「あくまで自分が楽しくてやっています。大好きなこと、得意なことで自分以外の誰かも喜んでくれます」とやりがいを話します。

川崎さんは当初、見知らぬ“お父さん”に子どもを預けることに不安もあったといいますが、「楽しそうに帰ってきたので、何も心配いらなくなりました。子供が楽しく一日過ごせるということは、すごくありがたいので」と言います。

■発起人「人間関係が始まる場所」

「お父さんバンク」の発起人は、カフェを経営するひとり親の義廣千秋さんです。客が子どもたちの面倒を見てくれたことがきっかけでした。

義廣さん
「お客さんに頼っていく中で、こちらもすごく助かって嬉しいし、相手も嬉しそうだと。(その)両者が出会える場所が、仕組みがあったら面白いんじゃないかなと思って」と振り返ります。

目指すのは、子どもを見守るたくさんの“お父さん”がいる世の中です。

義廣さん
「お金のやり取りよりも、コミュニケーションが大事な場です。信頼関係を築くぞ、という人たちに集まってきていただいています。本当に人間関係が始まる場所です」

■新しい形…ベースは「信頼関係」

佐藤梨那アナウンサー
「『お父さんバンク』はあくまでも信頼関係がベースなので、何かあった場合は当事者同士が話して解決するといいます」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「僕の子どもは今、自分の経営者仲間と共同でベビーシッターを頼んだり、習い事を教えてもらったりしていますが、それは物理的な近所ではないですが、同じ価値観で支え合えるのはいいなと思っています」

「お金を支払わないことにもし抵抗があるなら、当事者同士でお礼などを決めればいいし、こういう試みはどんどんやればいいのではないかと思います」

小野高弘・日本テレビ解説委員
「知らない人よりは近所付き合いのある人に、と思いますが、現実はどうかというと、皆さんお忙しそうなので、ちょっとお願いするのははばかられるかなとは思います」

有働由美子キャスター
「私は何かしてもらうと、労働に合った対価を払わなきゃとか、少なくとも何かお礼をしなきゃ、という価値観です。ただ、お父さんバンクは、新しい価値観でそれをシェアできる人たちが環境をつくりあげるコミュニティなので、助け合いの1つのアップデートなのでしょうね」

(11月23日『news zero』より)