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“10万円”所得制限ルールに「不公平」

2021年11月20日 14:24
“10万円”所得制限ルールに「不公平」

政府は19日、新型コロナウイルスで影響を受けた人らに向けた経済対策を決定しました。18歳以下の子どもへの10万円給付の他、介護職員らの賃金アップなどを盛り込みました。ただそのルールや対象をめぐり、親や現場からは不公平感や要望が聞かれました。

■忘年会前に…なお「客足」戻らず

和牛のハラミなどがウリという、東京・世田谷区の焼き肉店を訪ねました。10月26日に通常営業を再開し、3週間以上たちましたが、客足は期待していたよりも戻っていないといいます。

オーナー
「遅い時間のお客様が戻ってきていないかなって感じです。そんなに盛り上がってはいないですかね」

忘年会シーズンを前に、仕入れにも影響が及んでいます。オーナーは「大人数はあまり期待できないかなと思っているので、予約状況を見ながら仕入れようかなと思っています」と言います。

岸田首相は経済対策について、「(新型)コロナ(ウイルス)禍で厳しい影響を受けた方々に寄り添って万全の支援を行う」「経済を1日も早く成長軌道に乗せてまいります」と言いました。総額約55兆7000億円で19日に決定され、過去最大規模となりました。

私たちの暮らしにどんな影響があるのでしょうか?

■所得制限のルールに「不公平」

18歳以下を対象にした、1人当たり10万円の給付について東京・有楽町で聞きました。

岩本乃蒼アナウンサーが「お金をもらったら何をしたい?」と子どもたちに聞くと、「ハンバーグ」「おいしいもの食べたいな」という答えが返ってきました。

ただ、給付をもらえる親からは「該当しない家庭とか全体を見た時に、不公平感だったりとか、どうなのかなと思いました」

不公平との声が上がっているのは、所得制限のルールについてです。

例えば、夫の年収が970万円で妻が専業主婦のAさん一家と、夫婦共働きで2人とも年収900万円のBさん一家を比べた場合を考えます。所得制限960万円の対象が「夫婦いずれかの年収」のため、960万円を超えるAさん一家が給付ゼロに対し、Bさん一家は、世帯としての年収が倍近いにもかかわらず、子ども2人で20万円の給付を受けられます。

10万円相当もらえる親
「(使い道は)おむつとか、離乳食も作っているので食材(です)」

10万円相当もらえない親
「所得も減っていないので(もらえなくても)致し方ないのかなと」

■介護職員は「9000円」賃金増

介護や保育・看護などの現場で働く人への賃上げはどうでしょうか。

神奈川・横浜市の特別養護老人ホームを訪ねました。

「今日のご飯何ですかねえ」「おいしく食べましょ」。30代の介護福祉士が、入所者の手を取り、介助していました。

介護福祉士らの賃上げは来年2月から実施されます。収入の約3%に当たる、月額9000円アップします。

低水準の賃金で働きながら、感染対策にも気を配る日々です。介護福祉士は、賃金アップについて「正直申しまして、ちょっとうれしいかなとは思いました」と言いました。

介護の現場で賃金を上げづらい事情について、施設長に聞きました。

「介護保険料の報酬で経営をしています。介護報酬に関しては、だいたいいくら入るという収入の部分がもう決まっています。その中から人件費にどれくらい使ってお給料を払えるかという計算になります」

「これ以上収入を増やすことはできませんので、給料に回せる分はここが限界かなって。運営するために必要なのは、介護職員だけじゃありません。ケアマネジャー・事務員・生活相談員・看護職員もそうですね。もし(賃金を)上げるのであれば全職種上げてほしい」

■幼稚園長、賃上げは「遅い方」

幼稚園教諭も来年2月から月額9000円アップになります。東京・大田区の馬込幼稚園では、約110人の園児を職人8人で見ています。

教諭
「勤務外に準備したりも、休みの日に家で準備したりも、かなりありますね。そういうの(賃上げ)があると、もっと頑張ろうと思います」

子どもを通わせる保護者(30代)
「すごく先生たち、朝早くから頑張っていただいて本当に感謝ばかりなので、見ていて大変なお仕事だなというのはすごくよく分かるので、どんどんお給料は上げていただいた方がいいんじゃないかなと思います」

佐藤治子園長
「(賃上げは)遅い方ですよね。幼児教育って、とっても大事だってこと、再認識してほしいと強く思います」

また看護についても、コロナ対応など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、段階的に収入を約3%引き上げます。

■コロナで無職に…不安定でも対象外のケース「納得感ない」

一方、不安定な生活を送っていても、給付の対象とならない人もいます。

東京・渋谷のハローワークにいた35歳の無職男性もその1人です。「(生活費は)失業給付とか、あと自分の貯蓄。会社自体が赤(字)だったので、人を切るって判断で。コロナ禍の影響で退職した」と言います。

生活困窮者について、住民税非課税世帯は10万円給付の対象ですが、この男性は仕事を失った後も住民税を払っているため、給付の対象外です。「税金取っている分だけのサポートはちゃんとしてほしいですよね。納得感がないです」

23歳無職の男性も給付の対象外だといい、「給付とかよりも、税金が安くなればいいのかなって」と漏らしました。

(11月19日『news zero』より)