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クラスターからの教訓

2021年11月12日 18:45
クラスターからの教訓

札幌と旭川で起きた大規模クラスター。医療と介護の同時崩壊。その教訓とは―

遺族「これから二度とこういう事がないように。本当に悔やみきれない」

本来、介護士が行うはずの仕事はすべて看護師にゆだねられた。寝たきりの患者を受け入れた“旭川医療センター”では。

高木菜々看護師「痰(たん)とりとか、食事の介助とか、すべて看護師がやらなければいけないことが多くなっているので、かなり重労働にはなってきています」

介護老人保健施設“茨戸(ばらと)アカシアハイツ”では大規模クラスターが発生したが、札幌市内のコロナ病床は、ひっ迫。

介護が必要な感染者の受け入れは断られた。デイサービスに通っていた高齢者からの感染が確認され、4週間で92人が感染。17人が命を落とした。

施設職員「気をつけて歩いてよ~」

施設には認知症で徘徊する人も多い。面倒をみる介護士が感染したことで、医療と介護、両方のマンパワーが不足した。医師たちは支援に入ったが…

支援に入った大友宣医師「入ったときには、圧倒的に人が不足しているという状況で」

支援に入った佐藤千春看護課長「災害現場にポンと駆り出された感覚でした。施設の中では、医療も介護もすでに崩壊していたと思います」

当時、この施設では、感染者の入院を行政などに要請していた。しかし…

施設職員の証言「保健所に“入院させてほしい”と伝えたが“無理”と言われた」「救急車は、呼んでも来ません」

この施設に6年前から暮らしていた女性の遺族は、最期を看取ることすらできなかった。

遺族「亡くなる目の前にその場にいて、“がんばれよ”“大丈夫”とかやっていれば、悔しさとか亡くなったときにわいてくるかもしれないけど、何も情報ないから、悔しさがわいてこなかった」

4月末に「陽性」と確認されたが病院に運ばれることはなく、施設で体調の回復を待っていた。

遺族「一切詳しい事情の連絡がなかった。ただでさえ、すぐ悪くなるのはわかるはずだから即入院ですよね。なぜ病院に連れて行ってくれなかったんだと」

面会すらかなわぬまま、2週間後に容体が急変。母は帰らぬ人になった。

遺族「働いている人と家族が本当に悔やみきれない」

しかしその時、現場は、まさに修羅場だった。

応援に入った佐藤千春看護課長「今まで亡くなったときに私たちがさせていただいたケアが全くできないので、死に対する尊厳みたいなのが守ってあげられない」

看護師や介護士は、札幌市から遺体を納体袋に納め、遺族に会わせることなく火葬場へ搬出するよう指示された。

施設職員の証言(再現)「(札幌市職員に)納体袋を置いておきましょうか?これから亡くなる方もいるのでやり方を説明しましょうか?といわれ、怒りました」

その後、札幌市はコロナ病床を増やし施設の重症患者を入院させた。人や物資の支援も進めた結果、2か月後にクラスターは収束に向かった。医療と介護の最前線に立つ人を孤立させてはいけない。いまだから伝えられる北海道からの教訓。


2021年1月10日放送NNNドキュメント『クラスターからの教訓 ~医療と介護の同時崩壊~』(札幌テレビ制作)を再編集しました。