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接種完了も感染…今後拡大?注意することは

2021年11月10日 20:51
接種完了も感染…今後拡大?注意することは

新型コロナウイルスワクチンの「3回目接種」のスケジュールが具体的になってきています。一方で、厚生労働省の専門家会議では、今後「日本でもワクチン接種を完了した人たちの間で、感染が増える可能性が高い」という最新の知見が示されました。一体、どういうことなのか、詳しく解説します。

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9日の全国の新規感染者の状況です。東京は30人、大阪は28人、そして、東北から九州までの17県で0人となっています。非常に落ち着いた状況が続いています。

さらに、重症者の数も減っていて、8日の全国の重症者数は99人と、今年初めて2ケタになりました。そして9日は96人と、さらに減少しました。

9月のピーク時は2000人を超えていて、1000人を切ったのが9月の終わりごろでしたので、1か月とちょっとで96人まで減ってきたというわけです。

■3回目接種いつスタート? 目安は1回目から「8か月」

そして、ワクチンの「3回目接種」の話も具体的になってきました。

10日に首相官邸が公表した最新の数字では、2回目の接種を終えた人は、およそ9413万人で、全人口の74.3%に達しています。こうした中、追加の3回目の接種について、厚生労働省の専門部会は、2回目の接種を終えたすべての人を対象にする方針で一致しています。

では、3回目接種の進め方やスケジュールはどうなるのでしょうか。

まずは、医療従事者です。政府は自治体に対して、12月から始められるよう準備を要請しています。関係者によりますと、政府は、企業や大学での職域接種も実施する方針を固めています。

職域接種を受けた人の3回目接種のタイミングは、いつになるのでしょうか。1回目の職域接種がスタートしたのが、今年6月下旬でした。それから、8か月後の、来年2月下旬以降になる見通しです。

一般の人の自治体での接種のタイミングも、これから検討されますが、「8か月」がひとつの目安になっています。医療従事者から…という順番ですので、一般の人は年明け以降になる可能性が高いといえます。

■ワクチン接種完了も感染…「ブレークスルー感染」とは

3回目接種の動きにも関連する話ですが、9日に行われた厚労省の専門家会議で、ワクチンに関して、「今後、日本国内でも“ブレークスルー感染”が増えていく可能性が高い」という最新の知見が公表されました。

「ブレークスルー感染」とは、ワクチン接種を完了しているのに、コロナに感染してしまうことを指します。

今回の研究では、ワクチン接種が早く始まった「海外の事例」に注目しています。例えば、イギリスでは、今月7日の時点で67.2%の人が、ワクチン接種を完了しています。ところが、感染者数は、むしろ増加傾向にあり、1日3万人を超えています。

さらに、先月のデータで、18歳以上の感染者の実に76%が「2回接種済み」でした。つまり、ブレークスルー感染だったというわけです。

また、最新の海外の知見では、ファイザーやモデルナのワクチンは、接種後「4か月以降」から、発症の予防効果が顕著に弱まっていくことが示されています。ただ一方で、入院や死亡を防ぐ重症化の予防効果に関しては、90%以上高く保たれているとする研究が多いということです。

■日本でも今後「ブレークスルー感染」増加か 注意することは?

また、ブレークスルー感染に関する問題もわかってきました。

ワクチン接種を完了した人でも、ブレークスルー感染すると、さらに「二次感染のリスク」もあるということです。つまり、他人にうつすおそれもあるというわけです。

最新の研究では、ワクチン接種した人と未接種の人を比較すると、デルタ株に感染した時に排出されるウイルスの量には、「ほとんど違いがない」という結果が報告されています。ワクチンを接種しても、感染してしまえば、うつす可能性は通常通りありそうです。

このように、先行する海外のデータや研究から「日本でも『ブレークスルー感染』がこれから増えていく可能性が高そうだ」ということが学べるのは良いことではありますが、そうなった時に、特に注意しなければならないことがあります。

今回の研究では、例えば「高齢者中心の活動の場にリスクがある」と指摘しています。

どういうことかというと、これから「ワクチン検査パッケージ」が始まると、大規模なイベントや集まりが、ワクチン検査の条件付きで、OKになるかもしれない…ということになるわけです。こういった場には、「ワクチン接種済み」だという人と、「ワクチンは未接種だけど、検査で陰性」でしたという人が混在することになるわけです。

この状態で、ワクチン接種済みの人たちに「ブレークスルー感染」が増えてくると、どうなるのでしょうか。この「ブレークスルー感染」の人たちは、人に感染させるだけのウイルスを出しているということになりますので、特に、コロナに対して特別な免疫を持たない「未接種」の人たちに、感染が広がる可能性があるわけです。

もし、感染した人たちが、高齢者だったり、持病があったりしたら、「重症化のリスクもある」ということが、指摘されているわけです。

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今回の研究では、ワクチンにも多くの限界があり、ワクチンだけでこの感染症を収束させるのは困難であることが指摘されています。自分がかからないためにも、そして、他の人を守るためにも、まだしばらくは基本的な感染対策を続けていく必要があります。

(2021年11月10日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)