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ビール、麦畑で…米「炭素ビジネス」に勢い

2021年11月2日 9:13

アメリカで、CO2をめぐる「炭素ビジネス」が盛り上がりを見せ、世界でも「炭素クレジット市場」が急拡大しています。発生したCO2を回収して再利用・販売するビール工場と、CO2の削減分を販売して新たな収入を得た農家を、アメリカで取材しました。

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■工場の「CO2」回収で…収入に

アメリカ・コロラド州デンバーにある、クラフトビール工場直営のバーを訪ねました。

グラスに生ビールが注がれます。この時、圧力を加えるために必要なのが二酸化炭素(CO2)です。ビール製造会社の共同オーナーは建物の外に置かれた銀色のタンクを指さしながら「これは私たちの工場から回収されたものです」と言います。

工場では、タンクでビールが作られていますが、発酵させる段階で多くのCO2を発生させています。そこでこの工場では、地球温暖化の原因となるCO2を大気中に出さず、液化して回収する装置を導入。バーでビールを注いだり、工場で缶や樽に詰めたりする工程で再利用しています。

共同オーナー
「これまでCO2は廃棄物でしたが、商品として販売できるようにもなりました」

回収したCO2を、植物の栽培に必要とする農家に販売することで、新たな収入源になっているといいます。

今アメリカでは、CO2をめぐるビジネスが盛り上がりを見せています。

■麦がCO2吸収で…「4000万円」に

広大な農地でトウモロコシなどを栽培する、アメリカ・アイオワ州の農場を訪ねました。トウモロコシの収穫の最中でしたが、この収穫が終わった跡地を使って、大きなお金が生み出されています。

案内してくれた農家のケリー・ガレットさんは、「ここに植えたのは小麦とライ麦です」と教えてくれました。土壌の改善のため、数年前から、トウモロコシなどの収穫後の畑に植えている麦。売り物ではありませんでしたが、新たな収入源になっているといいます。

ケリーさん
「私が既にやっていることでお金をもらえるなんて、最高です」

きっかけは、アメリカで企業を中心に去年から本格化した取り組みでした。

農家が植えた小麦などは光合成を行い、空気中のCO2を吸収します。その削減分を「炭素クレジット」として取引可能にするものです。CO2を排出する企業などは、お金を出して炭素クレジットを購入。農家が削減した分のCO2を、自分たちが削減したことにできます。

ケリーさんは、麦の光合成などで削減したCO2を過去4年分までさかのぼり、クレジットとして買い取り業者に販売。34万ドル余り、日本円で約4000万円の収入を得たといいます。

■ルールなく…COP26でも議題に

炭素クレジットを買い取り、排出量ゼロを目指すものの、自力での達成が難しい企業などに販売する業者を取材しました。

炭素クレジットを仲買するトゥルーテラ社の担当者
「われわれの最初の取引相手はマイクロソフト社でした。今ではあらゆる分野の企業が炭素クレジットを購入しています」

炭素クレジット市場は世界でも急拡大していますが、売買にはまだ世界共通のルールがありません。そのため、地球温暖化対策を話し合うためイギリスで開かれている「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議」(COP26)では、ルール作りも重要な議題の1つになっています。

(11月1日『news zero』より)