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「アフガンは大惨事の危機」深刻化する飢餓

2021年10月16日 13:46

アフガニスタンでは、干ばつによる食糧難に加え、イスラム主義勢力タリバンの復権で経済がマヒし、国民の3人に1人が飢えに苦しんでいます。現地で活動する国連世界食糧計画(WFP)は、食べ物を届けるための資金が、今すぐ必要だと訴えています。

■「人々は食べ物を買うために家財道具を売っている」

――現在どのような支援活動を?

国連WFPはアフガンで数十年にわたり支援活動を行っています。今は食料支援を行っており、現時点では大変難しいですが、現金支援も行いたいと考えています。

年末までに合計1400万人に食料を届けようとしています。もし4月末まで支援期間を延長できるのであれば、冬季の活動になりますが、37万トンの食料を届ける必要があります。加えて1500万ドル(約17億円)の現金支援も目指していますが、現在アフガンの銀行は危機的状況にあります。現金がなく、流動性がありません。人々はお金を使い果たし、食料を買うことは困難です。私たちが食料を届けなければいけない人は増えていると言えます。

――状況は深刻?

アフガンの状況はとても深刻です。なぜならば、紛争だけでなく、過去3年の間に2回の干ばつがあったからです。(タリバンが実権を掌握した)8月の時点で、すでに食糧難に陥っていました。8月以降、国際的な開発援助が完全に停止し、アフガン中央銀行の外国資産が凍結されたことで、現金が不足しています。

それは状況をより深刻にしています。経済、銀行セクターは崩壊寸前です。失業率は高まっていて、人々は食べ物を買うために家財道具を売っています。医療も崩壊するおそれが高まっています。医療スタッフに給与は支払われておらず、医療物資も不足しています。栄養不良の子どもや女性が食べ物を買えず、病院にやってきます。つまり、アフガンは完全に大惨事の危機にひんしているのです。

■支援活動の安全を確保も、女性スタッフに不安

――タリバンの復権で支援活動に影響は?

当初は治安上の理由で活動を休止していました。しかし、タリバンが政権を取ってすぐ、私たちは食料を必要としている人たちに届ける活動を再開できるようタリバンと交渉しました。タリバンが実権を握ったのは8月15日で、その翌週には食料の配布を行いました。9月には400万人近くに配布し、10月には500万人を目標にしています。

そのためには、私たちが柔軟に利用できる資金が、今すぐ必要です。みなさんはスイス・ジュネーブで国連のハイレベル会合が開かれ、国際社会が12億ドル(約1370億円)の支援を約束したことをご存じかもしれませんが、それはあくまでも約束です。実際に現金として受け取る必要があります。食料を購入し、アフガンに運び、倉庫に入れる必要があるからです。もうすぐ冬が来て、アフガンでは道路が(雪で)閉鎖されるので、事前に食料を配置しておかないと、人々が飢えてしまいます。

――支援活動で危険を感じることは?

タリバンは、自分たちが人道支援を必要としていることを理解していて、私たちは標的ではないと保証しました。私たちは何年にもわたってタリバンに対応してきました。アフガンは一夜にしてタリバンに占拠されたわけではありません。私たちはタリバンと交渉して人道的アクセスを確保し、戦闘に巻き込まれることを回避してきました。そのため、国連WFPの活動に関しては、継続するのに十分な安全性があると考えています。

しかし、アフガン人のスタッフに不安がないわけではありません。私たちの中には440人のアフガン人スタッフがいます。私たちは支援の規模を拡大しているので、より多くのスタッフを採用する予定ですが、彼らは自分たちの安全とアフガンの将来に不安を感じています。

――女性スタッフへの影響は?

その質問に一言で答えるなら「ある」です。女性スタッフは大きな不安を抱えています。現在、80人の女性スタッフが働いています。何人かはマザリシャリフ(北部バルフ州の州都)やファイザバード(北東部バダフシャン州の州都)、そして私たちがカブールで運営している国連人道支援航空サービスで、すでに仕事に復帰しています。

しかし、タリバン暫定政権のトップレベルから女性スタッフの職場復帰が認められているとの確証が得られているとはいえ、仕事をすることに不安を感じる人もいます。現地のタリバン指揮官によって、状況が違うことがあります。女性スタッフは、出勤した場合に標的にされる可能性があることを非常におそれています。

――どのように対処している?

スタッフを強制的に出勤させることはありません。彼女たちが不安を感じた場合、可能な限りリモートで作業します。私たちはタリバンの指導者に対して、性別を問わず、すべてのスタッフの出勤を認め、国連機関が取り組んでいる職務の遂行を妨げてはならないと訴えています。私たちは人道的な理由で、人道的な原則に基づいて活動しています。独立し公平であり、私たちの活動やスタッフに対するいかなる干渉も受け入れることはできません。

■1400万人の命を救う資金が必要

――支援活動で最も大変なことは?

それは補給線の確保です。食料をアフガンに持ち込まなければなりません。そして、資金の流動性も課題です。国内の流動性危機と銀行危機のために、現金支援活動はほぼゼロに近い状態です。中央銀行が現金の引き出しに制限を設けているため、サプライヤー(食料などの供給元)は銀行口座にアクセスできません。アフガンの経済を継続させるためには、国際的なレベルで資産凍結を解除する決議が必要です。そうしなければ、アフガンの経済は完全に崩壊してしまいます。

――日本や国際社会に求めることは?

国連WFPにとって、日本は信頼できる援助国であり、とても感謝しています。国際社会に対しては、ジュネーブでの支援表明を、実際の現金に換えていただきたい。

私たちは今、現金を必要としています。年末までに2億ドル(約230億円)、それから来年1月から4月までに追加で3億ドル(約340億円)の資金が必要です。それが一番のお願いです。食べ物を満足に得られない最大1400万人のアフガン人に食料を配布するためには、この資金が必要です。

(NNNバンコク支局 杉道生)

「アフガンからの声#11」
※写真:栄養検査を受ける子ども(国連WFP提供)