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アフガン10人日本到着 まだ希望者多数?

2021年9月13日 23:40
アフガン10人日本到着 まだ希望者多数?

アフガニスタンから陸路、自力で出国したJICA=国際協力機構のアフガニスタン人職員とその家族合わせて10人が12日から13日にかけ成田空港に到着した。しかし、10人は氷山の一角で、アフガンにはまだ少なくとも500人以上の退避希望者が取り残され、さらに増える可能性もあるという。ナゼなのか?背景を解説する。

日本テレビ外務省担当 前野全範

■アフガン“自力”脱出から1か月弱 ようやく日本に到着

12日夜、成田空港に、JICAに勤務するアフガニスタン人職員1人とその家族あわせて4人が到着し日本政府に保護された。4人は先月下旬に自衛隊機による退避オペレーションが行われる前に、陸路を使って危険を冒しながらアフガニスタンから隣国のパキスタンへと出国、日本政府に保護を求めようやく日本へとたどりついたという。

■一家は日本で短期滞在 今後は第三国出国か難民申請へ

一家4人は短期滞在の在留資格が認められ、しばらくは国の関連施設に滞在することになる。その後は、アフガン以外の第三国へ出国するのか、あるいは日本で難民申請をするのか、意向の確認が行われることとなる。なお、外務省によると一家4人の航空機費用は勤務先のJICAが負担したという。

■既に数十人がパキスタンに到着 「家族」は配偶者と子どもだけ

また、13日夜には同じく陸路、パキスタンへ脱出した別のJICA職員一家6人も日本に到着した。関係者によるとこの他にも数十人が既にアフガンを出てパキスタンに到着しているという。

ただ、日本への入国が認められるアフガン人職員の「家族」は配偶者と直系の子どもだけに限られ、現地職員の親や兄弟は日本への退避支援の対象にはならない。

その理由について、ある外務省関係者は「一族郎党まで家族だと言われると、退避支援対象者が際限無く膨れあがってしまう危険性がある。どこかで線引きが必要だ」と説明する。

■自衛隊機による退避「不発」 邦人保護が目標だから成功?

そもそも今回の日本入国の背景には先月、自衛隊機を派遣しながら日本人女性1人の退避にとどまり、アフガン人職員ら退避希望者約500人が置き去りにされてしまったオペレーションがある。外務省はこの作戦について「自衛隊機派遣の最大の目標は、邦人=日本人の保護で、最重要目標は達成できた」と説明するなど、失敗ではなく問題はなかったとする説明を各所で繰り返している。

たしかにそもそも自衛隊機は、自衛隊法上、邦人を保護する目的でなければ派遣すること自体ができず、アフガン人など外国人の退避の優先順位が一段下がってしまうことは理解できる。

しかし、あまりにも邦人保護ばかりを強調する外務省の姿勢に対しては、有識者らから「『ジャパニーズファースト』の考え方が過ぎる」といった批判が出ている。

JICAの北岡伸一理事長も9日、「人権外交を超党派で考える議員連盟」の会合で「日本は信義を守る国であってほしい、人道、人権に積極的な国であってほしい」とアフガニスタン人の救出にも全力を尽くすよう訴えている。 

■元職員、NGO職員、元留学生 多くの希望者が支援対象外…

さらに、今もアフガン国内に残る日本にゆかりのあるアフガン人の扱いをめぐっても、政府への批判の声が相次いでいる。

というのも政府が退避支援対象としているのは日本大使館やJICAの「現職」のアフガン人職員とその家族に限定され、つい最近まで日本大使館やJICAで勤務していた「元職員」やその家族は日本受け入れの対象外となってしまっているのだ。

また、民間のNGO職員や日本への留学経験があり現在はアフガンの公的機関などで働く元日本留学生なども同じく退避支援の対象外となっている。

■実際の退避希望者は相当多数か? 『身元引受人がいればOK』

実際に日本への退避を希望しているアフガン人は政府が発表している退避支援対象者500人をかなり上回っているものとみられるが、外務省は「元職員や元留学生については日本に身元引受人がいれば退避支援をしている」と説明する。

しかし、ある外務省幹部は「身元引き受けとは日本までの航空便の代金を負担するだけでは足りず、日本入国後の生活一切を保証することが必要。一家の生活の面倒を見ます、というレベルでの保証が必要」だと述べる。受け入れのハードルはかなり高いと言わざるを得ない。

■日本への外国人の受け入れ 今こそ社会全体で議論を

恥ずかしながら筆者もカブールが陥落し12人の日本人大使館職員が国外に退避した時点で、これほどまで多くの現地職員や日本にゆかりのあるアフガン人が日本への退避を希望していることは知らなかった。

外国人の日本受け入れについてはある政府関係者が「苦しい境遇にある外国人個人が注目されると同情が集まるが、全体の話になると状況が変わる」と語るなど『各論賛成、総論反対』となる傾向がある。

今後、多くのアフガニスタン人が日本に退避してくる可能性もある中、私たちは十分な準備や心構えができているのか。社会全体での議論が急がれる。