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二十歳の女性「悪夢と言って」最期の動画

2021年9月12日 12:45

アフガニスタンの日常をユーチューブで発信していた二十歳のナジマ・サデキさん。タリバンの支配から逃れようと空港に向かい、自爆テロの犠牲となりました。サデキさんが涙で声を詰まらせ、最期に語ったこととは。

■9分19秒のメッセージ

首都カブールがタリバンによって制圧されてから、今日で4日目になります。タリバンがいま政権を握っています。そのため私たちは自宅にこもっています。外出する勇気も力もありません。私たちはもう動画を制作することはできません。彼ら(タリバン)は「女性は問題ない」「女性は勉強してもいい」と言っていますが、信用はできません。過去にどういうことが起きたのか、私たちは知っているからです。いまは精神的にも身体的にもダメージを受けています。傷つきやすくなっています。

今まで生活は自由で楽しかったけど、とても暮らしにくくなっています。もう働くための許可がありません。外出するための許可もありません。仕方なく、自宅からビデオを撮ることにしました。みなさんにお別れの挨拶をしようと思ったのです。

■「祈りと支援以外は、何も望まない」

アフガニスタンの人々が辛抱強くいられるよう願っています。何らかの形で、現状に適応してもらいたい。外国にいるみなさんには、私たちのために祈ってほしい。私たちを支援してください。祈りと支援以外は、何も望みません。私たちと共にいてください。私たちがこれまで、みなさんと共に歩んできたのと同じように。

再び私たちの国に平和が訪れてほしい。再び日常が戻ってきてほしい。アフガニスタンの魅力的な場所で再び動画をつくって、みなさんにお見せしたい。

いま、アフガンの状況は普通ではありません。特にカブール市内では市民が沈黙しています。まったくみんなの声を聞くことができません。以前は、学校に通う子どもたちや野菜を売る人たちの声で賑やかでした。しかし、この4日間、こうした様子はまったく見られません。どの家族も家に閉じこもり、おなかを満たすための食事を待っているだけです。

私はこれまで仕事し、稼いだお金で生活費や学費を賄ってきました。女性の中には、仕事をして家族全員を養っていた人もいました。例えば、兄や父親がいない家庭では、女性たちが生活を支えてきました。彼女たちは状況が落ち着くのを待って、仕事を再開したいと思っています。

私たちがここで何を言っても、自由になる見込みはありません。国民みんなの心が曇っています。私も声を上げづらいと感じて、泣きそうになっています。この現状のせいです。多くの人が同じような気持ちを抱いているはずです。いまの状況はめちゃくちゃです。信じがたいことが起きています。

■「夜が明けて、『悪夢をみたのよ』と言ってほしい」

誰もがこれは“悪い夢にすぎない”ことを願っているでしょう。夜が明けて、誰かに「起きて!水を一杯飲んで。あなたは悪夢をみたのよ」と言ってほしい。それは…分かっている、不可能な話だって。私たちが“終わった”ということは事実です。

私にはもう話し続ける力がありません。これ以上何も言えません。ただ、みなさんに「祈ってください」と言いたい。再び、以前のような女性に戻りたい。再び、自分が好きな服を身に着けたい。私たちには別の国に移住するだけのお金がありません。家の中で待つしかありません。

みなさんのことが大好きです。私たちはみんな、人に好かれる国民性を持っています。私はみなさん一人ひとりの手にキスをします。この状態が悪夢にすぎないことを神にお願いしたい。私がつくった動画の中で、もし失礼なことを言っていたならば、寛大な心で許してください。

もう一度、言います。私たちのために祈ってください。神が助けてくれることを祈っています。私たちの国に平和が訪れるまで。再び笑顔に満ちた生活や、輝いた目が見られる日々が戻るまで。

(NNNバンコク支局 杉道生)

「アフガンからの声#4」
※写真:Afghan Insiderより