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女性知事経験者4人が語るリーダーシップ

2021年9月10日 20:57
女性知事経験者4人が語るリーダーシップ

新型コロナウイルスへの対応では、各都道府県知事のリーダーシップが注目されています。一方、戦後の知事経験者のうち、女性は7人とごく少数です。シンポジウムで語られた「女性知事の政策とリーダーシップ」とは。小西美穂キャスターがまとめました。

■女性知事は353人中7人

全国47都道府県で戦後選ばれた知事は353人です。このうち、女性は7人で全体の2%とごく少数です。9月4日、津田塾大学が主催したシンポジウムには、元千葉県知事の堂本暁子さんと前熊本県知事の潮谷義子さんが登壇。元大阪府知事の太田房江さんと元滋賀県知事の嘉田由紀子さんはリモートで一部参加しました。

■知事の半分が女性だと日本は変わる

堂本暁子・元千葉県知事:
知事時代には、全国で初めて県立病院に女性専用外来を設けました。性差が医療にもあるので、女性の身体や健康のための医療を重視したのですが、わずか2年で全国に広がっていきました。

ただ、私は女性知事だからといって特別に女性の政策を大事にするとは思っていません。知事のレベルになったら、男性でも女性でも、地域の県民のためにできることを精いっぱいするので、特別女性にということはないです。

けれども、女性であるがゆえ、「染み出てくるもの」がやっぱりあります。これがとても大事なことだと思います。もし知事のうち半分ぐらいが女性だったら、日本は変わっていたのではないかと正直思います。

■政策はどの命に対しても平等に

潮谷義子・前熊本県知事:
選挙では「おなごに何ができる」と言われました。知事になり、どんな観点で県政を担うか考えたとき、長らく福祉の現場にいて社会からこぼれ落ちてしまっている人たちを中心にしてきたのと同様に、県民中心でやっていこうと思ったのです。県政は県民からの預かり物ですから、負荷をかけないことを望みました。

農業に従事する女性のための起業家資金を全国で初めて作ったり、県庁内での旧姓使用を認めたりしました。女性だけでなく男性職員も喜んでくれたので、理由をきくと「自分は婿養子なので」と。こうした政策も「ん~」って肩肘を張るのではなく、みんながウェルカムという感じでした。

私たち女性知事は政策的にも連携しました。堂本さん、太田さん、私の3人は、妊娠中の検診の無料化を当時の小泉総理大臣にお願いにいったんです。個人よりも共同や協調によって力を発揮できると実感しました。専門領域で横に繋がりを持ち、問題を共有し、社会的な貢献を通じて地域を理解する活動がものすごく大事だと思っています。

政策というのは、どの命に対しても平等であることを私は肝に銘じています。これから知事を目指す方たちは、命の価値の平等性ということの中から発想していっていただきたいです。

■政治の場に「多様性、多層性」

太田房江・元大阪府知事:
知事から国会議員になった頃は、ジェンダーギャップ、クオータ制という言葉すらなかなか使えなかったんです。世界全体で日本のジェンダーギャップが大きく注目されると、自民党も変わらなくてはいけないということで少し議論が起き、だんだん変わってきています。女性が議員になることを継続的に支援していく、つまり政治の場での「多様性、多層性」が今一番大事だと思います。

嘉田由紀子・前滋賀県知事:
私は女性であることをあまり意識していませんでした。しかし、女性であるゆえ、「心理的、構造的、政治的」、この3つの壁が確かにありました。地域の仲間がいてくれたら突破できました。フランスでは、女性の政治参画が遅れていたのが、憲法を変えてパリテ法(候補者男女同数法)を作って一気に変わりました。日本もクオータ制のようなものをやると一気に変わると思っています。

■政治の場に女性が増えれば日本は変わる

――決定の場に女性がいると何が変わるのでしょう。

潮谷義子氏:
今まで日の当たらなかった領域でも、女性が割を食っていた、あるいは女性が非常に矛盾を感じていた、そういう施策の大事さに気がつくことですね。でもこれは女性、男性という発想からではなくて、人間として考えたときにこれは妥当なのかなという発想が、私の場合には非常に多くなってくる気がします。

堂本暁子氏:
男性も女性もそうですが、同時に障害者でも外国人でも、多様な人たちが意思決定の場に参加すべきだと思うんですね。中年の、ある一定の年齢の男性中心で物事が決まるのではなく、その中に若者、高齢者もいてほしい。日本に住んでいる外国人や多様な人たちが意思決定の場に参加することがとても大事です。それがない弊害は何かというと、考え方が多様ではなくなり、結果として男性から染み出してくる方向に偏ってしまうこと。それはやめるべきだと思っています。

――次世代へのメッセージを

潮谷義子氏:
女性ということだけにこだわらないで、人間として発言しなければならないときに、きちっと発言できるような存在になっていただきたい。そのトレーニングとして討論をしたり、他者との関わりを広げたり、他大学、他の組織と連携して、情報や課題認識を共有していくことを期待しています。

堂本暁子氏:
政治は人のことだと思わないで自分事と思って、そして勇気を持ってください。自分が(政治の)当事者となっていくために勇気を持って政治の場に積極的に入っていってください。もっと女性が政治の場に多くなったら日本は変わると確信しています。

◆9月4日津田塾大学主催「政治・行政における女性リーダーへ~女性知事経験者から次世代へのメッセージ」での発言を小西美穂キャスターがまとめました。

■堂本暁子(どうもと・あきこ)
ジャーナリスト、参議院議員を経て2001年より2期8年、千葉県知事を務める。現在、男女共同参画と災害・復興ネットワーク代表。

■潮谷義子(しおたに・よしこ)
慈愛園乳児ホーム園長、熊本県副知事を経て、2000年より2期8年、熊本県知事を務める。長崎国際大学学長、日本社会事業大学理事長など歴任。

■取材・文=小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・「news every.」キャスター。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程に所属し歴代女性知事を対象に研究。

写真:参加した女性知事経験者「政治・行政における女性リーダーへ~女性知事経験者から次世代へのメッセージ」(津田塾大学主催)にて