再び“暗黒の時代”に…タリバン政権復活で
アメリカ同時多発テロからまもなく20年を迎えます。アフガニスタンではアメリカ軍が撤退し、イスラム主義勢力、タリバンの政権が復活しました。一度は自由を手にしたアフガンの人たちはいま、不安と恐怖におびえています。
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店内に飾られたきらびやかな衣装。アフガンのウエディングドレスです。
「大好きな皆さん、こんにちは!お元気ですか?」
店を取材する若い女性3人は、アフガンで人気の「ユーチューバー」。オシャレをして街に繰り出し、若者の目線でアフガンの日常の様子を発信していました。
その中の1人、ナジマ・サデキさん(20)。
アフガンのユーチューバー ナジマ・サデキさん(7月投稿)
「いま人々はこうして活気ある普通の暮らしをしているのに、タリバンがここへ来る勇気なんてあるかな?」
こう明るく話していましたが、その翌月、タリバンが首都カブールを制圧。
その4日後、サデキさんは全身黒ずくめの姿でメッセージを投稿しました。
アフガンのユーチューバー ナジマ・サデキさん(8月19日投稿)
「今まで生活は自由で楽しいものでしたが、 非常に暮らしにくくなっています。自宅からビデオで皆さんにお別れの挨拶をしようと思ったのです」
「ユーチューバーは続けられない」と話したサデキさん。
かつてタリバン政権下では、女性は働くことも教育を受けることも許されず、外出すら自由にできなかったことを知っていたからです。
まさに“暗黒の時代”。
それが変わるきっかけとなったのが2001年のアメリカ同時多発テロでした。
アメリカは、首謀者のビンラディン容疑者をかくまっているとして、アフガンを攻撃。タリバン政権を崩壊させました。
その結果、女性たちは抑圧から解放され、自由を手にしたのです。
しかし、その自由が今、再び失われようとしています。
アフガンのユーチューバー ナジマ・サデキさん(8月19日投稿)
「朝が来て、誰かに『起きて!水を飲んで。あなたは悪夢をみたのかも』と言ってほしい。それはわかってる。不可能な話だって。私たちが終わったということは事実です」
この投稿の1週間後、サデキさんは亡くなりました。
将来を悲観し、国外へ脱出しようと空港へ向かっていたところ、自爆テロに巻き込まれたのです。
サデキさんの友人は、私たちの取材に…
サデキさんの友人
「彼女はいつも、アフガンの女性たちがほかの国の女性と同じように有能であることを、動画を通じて世界に示したいと思っていました」
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タリバンの復権で大きな不安を感じる人は他にもいます。
日本へ留学経験のある男性
「家から出られなくて、仕事に行けない状況です。殺される可能性が高い」
実はこの男性はアフガンの少数民族のハザラ人です。ハザラ人はかつて、タリバン政権下で迫害を受けてきました。
男性の勤務先はタリバンに占拠されていて、再び標的にされるのではと仕事に行けず、経済的にも追い込まれています。
アフガンの少数民族 ハザラ人男性(32)
「食べ物とか困っています。パンとかも高くなって、お金もなくて、生活できないです。粉でパンを作ったり、ジャガイモを焼いたり、そういう食事を作って(耐えている)」
タリバン政権崩壊後の20年は教育・就労の機会が保証され、余裕のある生活が送れていたと言いますが…
アフガンの少数民族 ハザラ人男性(32)
「(タリバンの復権で)そういう20年が全部終わってしまう。将来的に生活できない、アフガニスタンから出るしかない」
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同時多発テロから20年。アフガンの人々が手にした自由と希望はいま、不安と絶望に変わり始めています。