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中国の新しいトレンド「国潮」

2021年9月1日 21:41
中国の新しいトレンド「国潮」

いま、中国では若者を中心に、中国オリジナルもしくは中国要素を取り入れたファッション、「国潮」という新たなトレンドが生まれている。一体、中国の若者はなぜ「国潮」に惹かれるのか。(国際部・周一可)

「国」は中国を指しており、「潮」は、中国語で「おしゃれ」を意味し、「国潮」はもともと、中国オリジナルもしくは中国要素を取り入れたファッションを指す。

■ファッション・コスメの“国潮”

北京にあるスポーツブランドの店では、一番目立つところに漢字が書かれた洋服がずらりと並び、いま売れ筋だという。また、コスメブランドの店では中国の絶滅危惧種に指定された鳥をイメージに作られたアイシャドーパレットを販売。パッケージの絵だけではなく、アイシャドーの色もこの鳥の特徴ある色合いをヒントにしたという。中国のブランドが積極的に自国と関わる要素を取り入れているのがわかる。

■カフェのインテリアにも“国潮”

今年5月、北京で「国潮」を意識したというカフェがオープン。店の中は中国のレトロのものが多く使われており、食器には、「喜び」が二つ並んだ文字があしらわれている。「喜びが一気に二つも来る」という意味で、昔から中国の結婚式などでよく使われる、とても縁起のいい言葉だ。実際私たちが取材した日に、「店の中国レトロ風を目当てにきた」という若者もいた。商品だけではなく、店のインテリアにまで「国潮」を意識している。

■“国潮”に惹かれる背景には「愛国心」

中国の若者に、なぜ国潮がトレンドになったかについて聞いてみると――「中国人だから、もちろん国潮を支持します」「国潮が流行るのは私たち若い世代の中国文化への自信の表れです」「国潮は自分の国のものだと感じますし、デザインが素晴らしいと、誇りに思います」

取材で出会った若者が、「国潮」に対して「誇り」という言葉を口にした。

「愛国心」がブームの背景にありそうだ。「愛国心」が高まった理由の一つは「中国の発展」とみられる。世界第2位の経済大国になった中国、半年後には北京オリンピックも控えている中、国の発展を肌で感じた国民たちの愛国心がさらに高まりそうだ。

次は「国産品の品質の向上」。かつては「世界の工場」だといわれてきた中国では近年、単なる下請けではなく、オリジナルさを大事にする自国ブランドが増えている。特にコスメ製品は海外進出を果たして、日本のショップでも見かけるようになるほど勢いがある。

さらに、欧米ブランドへの反発も背景にあると考えられる。今年3月、あるアメリカの有名スポーツブランドが人権問題があるとして、ウイグル綿を使用しないと発表したところ、売り上げが激減した一方、中国のある大手スポーツブランドの売り上げのほうは8倍も伸びたと報じられている。

こうした様々な理由から、中国の若者の愛国心が高まり、「国潮」の人気もますます高まっていくのではないかと考えられる。