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相次ぐワクチンから“異物”なぜ入ったのか

2021年8月30日 18:35
相次ぐワクチンから“異物”なぜ入ったのか

新型コロナウイルスのワクチン接種が進む一方で、ワクチンから異物がみつかる事例が相次いでいます。健康にどのような影響があるのか、ほかのワクチンは大丈夫なのか、詳しく説明します。

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■“使用中止”ワクチン接種後に死亡…因果関係は不明

最新の感染状況について、東京では、29日、新たに3081人の感染が確認されました。7日連続で、前の週の同じ曜日を下回っています。

ワクチン接種が急がれる中、先週、ワクチンから異物がみつかった事例があったとお伝えしました。異物が混入していたのは、モデルナ社製のワクチンで、使用中止となったのは、以下の3つのロット番号です。

・3004667
・3004734
・3004956

異物がみつかったのは、このうちの1つの「3004667」の番号です。ほかの2つは、同じ時期に、同じ製造工程でつくられたものであり、同様の異物混入が否定できないため、使用中止しています。

その後、新たな情報が入ってきました。「3004734」を接種した30代男性2人が、いずれも3日後に亡くなったと公表されました。1人は今月15日に接種、もう1人は22日に接種していました。死因は現在確認中ですが、2人とも基礎疾患はなく、ワクチンや異物との因果関係はわかっていません。

副反応を検討する国の部会の森尾友宏会長は「死亡例は偶然生じた可能性もある」としたうえで、「今後情報収集に努め審議会で慎重に評価する必要がある」とコメントしています。発言の背景にあるのは、ワクチンが原因と判定されなくとも、接種した後に亡くなるケースがこれまでもあるからです。

厚労省は、接種した後に死亡した方の人数を公表しています。8月8日までにファイザー、モデルナ合わせて1002人いました。ただし、これまでにワクチン接種と死亡に因果関係があると結論づけられた人はいません。接種後に持病が悪化した、急病で亡くなったなど、接種との因果関係が評価できないとされたケースです。

いずれにしても今回亡くなった男性2人の件はワクチンと関連するかどうか含め慎重に調査を進めてほしい事案です。

■沖縄でも異物発見…5件のうち4件“ゴム栓”の一部混入か

使用中止となったモデルナ社製のワクチンが配布された会場は、全国17都府県で、889会場あります。

889会場に配布されたのは、先ほどの3つのロット番号のものですが、28日、沖縄県内では新たに、違うロット番号のワクチンから異物がみつかりました。そして29日、群馬県ではさらに違う番号のワクチンから異物がみつかりました。

異物とは、どのようなものなのでしょうか。関係者によりますと、最初にみつかった異物は、金属片の可能性があることがわかっていて、ワクチンの製造に関わったスペインの会社は、「自社の製造ラインに起因している可能性がある」としています。

一方、沖縄でこれまでと違うロット番号のワクチンから異物がみつかったケースについては、厚労省によりますと、武田薬品工業の調査では、全部で5件あって、このうち1件は、ピンク色の異物で、もともと注射器に入っていたと判断されました。

残る4件は、黒い点のような異物で、ワクチンの瓶のゴム栓の一部と考えられています。

■なぜゴムが中に…発生したとみられる「コアリング」とは

なぜ、ゴムが中に入ってしまったのでしょうか。これは「コアリング」が起きたと推測されています。コアリングについて、詳しく説明します。

注射針を容器に刺す時、注射針の先端は、横からみると斜めになっています。瓶のゴム栓に針を刺す時、垂直に入れるのが正しい刺し方です。ゴム栓に対して斜めに刺してしまうと、ゴムが針のあごの部分で削り取られてしまうそうです。削り取られたゴムが、容器に混入してしまうことがあるということです。これをコアリングというそうです。

コアリングは、針を回転させたり、同じ場所を何度も刺したりすることでも起こるそうです。ワクチンの専門家によりますと、今回のワクチンは、1瓶で5、6回とるために、その前の処理を含めると、7、8回針を刺すということです。専門家も「破片が入ってしまう可能性はあり得る」と話しています。厚労省は、「正しく垂直に刺すよう」に呼びかけています。

コアリングは、よく発生するのでしょうか。感染制御学が専門の東邦大学感染制御学研究室・小林寅てつ(吉を2つ横に並べる)教授に見解を聞きました。小林教授は、「ゴム片が入ることは異例。あってはいけないこと」と話していました。

また、コアリングに注意することは、医療界では「当たり前」で、ゴム製のものがあるならば、手の位置、握り方すべて決まっているということです。「ゴムの素材にも問題がある可能性もあるので、調べてほしい」と話していました。

また、健康への影響については、「大きさや金属やゴムに関係なく、異物が入ることで、一部の人にとってはアレルギーのリスクにもなる」と話していました。

これからワクチンを打つ人がこういう話を聞いて不安になることについて、小林教授に伺うと、「ワクチンを準備する段階の工程の中で、異物の混入がないか確認する作業をしており、今回もその過程でみつかったので、安心して打ってほしい」と話していました。

(2021年8月30日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)