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一着の服の寿命 リユースでみんなで伸ばす

2021年8月27日 11:36
一着の服の寿命 リユースでみんなで伸ばす

高校2年生で起業し、ファッションレンタルサービスを運営する古城栞さん。「おしゃれを気軽に楽しみたい」と始めたサービスが、地球環境にどのように繋がっていったのか。一着の洋服をみんなでシェアして使う取り組みやその意義について考えた。

■「おしゃれを楽しみたい」が「地球に優しい」へ

古城さんが運営する「放課後マネキン」は、女子中高生向けのファッションレンタルサービス。立ち上げたきっかけは、古城さん自身が、ファッションを気軽に楽しみたいと思ったことだったという。

「中高生は、アルバイトが制限されている学校などもあり、ほしいものがあってもお小遣いでやりくりしなきゃいけない人が多くて、洋服にお金をかけられる人はそんなに多くありません。ですが、ファッションに目覚める時期でもあります。ファッションって、アイデンティティーを表現する一つのツールだと思いますし、その楽しみは奪いたくないと思って、レンタルサービスを始めました」

レンタルサービスを準備する中で、企業の余剰在庫や試作品を活用することになる。商品を見るために実際に倉庫に足を運ぶ中で、古城さんは衝撃的な光景を目にした。

「いろんなブランドの在庫が集まっている倉庫に行ったことがあるのですが、そこには一度も袖を通したことのないような洋服がダンボールの山でいっぱいあるんですよ。大量生産・大量消費といわれる現実が、目の前に広がっていて。それが、自分の中ですごく衝撃的で。そのときはまだ事業を始めてはいなかったんですけど、自分が今から始めようとしているレンタルサービスで、何か貢献できる部分はないかなと思い始めました」



■服の「大量廃棄」は変わってきている?

古城さんの話を聞き、番組コンダクターの辻愛沙子さんは「そもそも手に届かないで廃棄される服」の多さを問題視する。

「以前知人が古着の買い付けに海外に行った時に、服がゴミ山の様に積まれていたと聞きました。すごく可愛くて、誰かの手に届いたら使ってもらえそうな服が、山積みになっていたと。在庫として置いておくよりも、処分したほうが安く済むといったビジネス上の難しさもあるのでしょうが、せっかく作られたものが、誰の手にも渡らずに捨てられてしまっている。長く使うことも大事ですが、そもそも消費者の手に届いていないものがたくさんあることにも目を向けなければならないと感じます」

環境省「ファッションと環境」タスクフォースチームメンバーの福田朋也さんによると、大量廃棄の現状は変わりつつあるという。

「これまで大量生産・大量消費と合わせて大量廃棄を前提に社会が回ってきましたが、近年は状況が少しずつ変わってきています。企業と環境省の勉強会でも、余剰在庫はコストになっているという話があがっていて、それをどう減らすかを考えて、実行に移している段階の企業が増えています」



■一着の服をみんなで消費する

余剰在庫だけでなく、消費者の手に渡った洋服の廃棄量の削減も課題だ。環境省の調査によると、日本では一日に大型トラック約130台分、年間で約48万トンの服が処分されているという。

洋服のレンタルサービスは、廃棄を減らす“リユース”の仕組みにあたる。余分な服が作られないことで生産時の環境負荷を減らすだけでなく、廃棄時にかかる環境負荷も削減することが期待される。

一般社団法人「unisteps」共同代表の鎌田安里紗さんは、一着がいろんな人に使われることに価値があるという

「ファッションって、服そのものの寿命より先に飽きがきちゃうじゃないですか。いろんな服を買って楽しみたいというのは自然な欲求だと思います。だから、一人でその服の一生を全うさせようと思うとハードルが高いのですが、きれいに着て、次の人に譲ってみんなで一着の寿命を伸ばすみたいなことができたら、環境負荷も下がるしいいんですよね」

お笑い芸人・オズワルドの伊藤俊介さんは、気づかないうちに地球にやさしい行動をしていたと話す。

「僕は服を捨てた記憶がありません。よれよれになるまで着ますし、まだ使えそうなものは後輩にあげたりもします。飽きの話がありましたが、本当に自分が飽きたのかわからないので、捨てずに置いておきます。ある日突然、そういえば最近着てないなと思って着たくなる時がありますからね。だから、そんなにすぐどうこうしようとは思わないですね、また、人にあげることを前提に考えると、使い方も変わりそうですよね。ちょっとでも丁寧に使おうとか、かかとをすり減らさないように歩こうとか」

近年では、フリマアプリを利用する人も増えている。フリマアプリで販売することを前提に、汚さないように服を着ているという話もあがった。また、色を染め直すサービスを使い、汚れたり飽きたりした服を、生まれ変わらせる取り組みもある。

様々な取り組みがある中で、大事なのはファッションを楽しみながら環境問題にもつながることではないかと、古城さんは話す。

「最近では、学校でSDGsを教えられたり、社会全体の環境意識が高まっている段階にはきていると思いますが、大きなテーマなので、一歩踏み出すのはちょっと難しいと感じることもあります。ファッションは、自分が楽しんだり、おしゃれをしたいからやることです。楽しむためにレンタルサービスを使うことで、結果的に環境問題にコミットしているみたいな、そういった一歩になれたらいいなと思っています。特に、中高生は体の成長も早く、好みもすぐに変わったりするので、洋服をレンタルすることで、いいサイクルを回していけたらと思います」

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この記事は、2021年7月30日に配信された「Update the world #7 地球にやさしいオシャレ」をもとに制作しました。

■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。

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