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コロナの逆境 オリンピックで取り戻せ

2021年7月31日 12:14
コロナの逆境 オリンピックで取り戻せ

東京オリンピックで日本人選手の活躍が続いています。これに伴い、自宅のテレビで応援する「ステイホーム観戦」の関連商戦も盛り上がっています。とりわけコロナで苦汁を飲まされた航空、外食、百貨店業界では「オリンピック特需で少しでも取り戻せれば」と期待しています。

■海外を身近に

自宅で国際線の味を――。日本航空は7月21日、国際線の機内食の一般販売を始めました。

商品名は「BISTRO de SKY(ビストロですかい)」。過去に機内で提供していた人気メニューを再現したもので、東京・恵比寿の人気和食店「賛否両論」のオーナー、笠原将弘氏が監修した「4種だしの旨み やわらかかつ重」「かつおだし香る豚肉の生姜焼き重」などの和食メニューのほか、北海道の食材を使ったホワイトカレーや焼き鳥丼など6種類です。

機内では料理を提供する際、水蒸気を使ったスチームオーブンで加熱しますが、家庭向けに電子レンジで温めても食感やみずみずしさが残るようアレンジ。調理の加熱時間を短くしたり、ごはんの水分量を調整したりして、機内と同じ状態で食べられるようにしたといいます。

コロナ禍で国際線の運航率は通常の2割程度にまで激減。新たな収益源として、夏休みシーズンに合わせて企画しましたが、第1弾として準備した2万6000食は1週間で完売。担当者は「オリンピック開幕で海外を身近に感じたいというニーズにはまった」と予想以上の“特需”に手応えを感じているようです。

夏休み期間中、8月4日から第2弾を発売、さらに第3弾も計画中だということです。

■テイクアウトで割引も

営業時間の短縮やアルコールの提供自粛で業績が厳しい外食業界も、オリンピック期間中の「ステイホーム観戦」需要をチャンスとみて、テイクアウトやデリバリーに力を入れています。

牛丼の吉野家は7月21日から「丼パーしながらお家で応援!」と銘打ったキャンペーンを実施。牛丼をテイクアウトで複数買うと割引になるというもので、7月22日からの4連休中、テイクアウトの売上比率が前週までの4割程度から5割超にアップしました。店内飲食の客数に変動はなく、テイクアウト分の売り上げが伸びたということです。

また、ファミリーレストランの「デニーズ」はすべてのメニューでテイクアウトにすると20%引きになるキャンペーンを7月16日から始めました。4連休中はテイクアウトの売り上げが2割ほど増加したとしています。

■ゆったり、じっくり観戦

百貨店でもデパ地下グルメが好調です。

大丸東京店はオリンピック・パラリンピックの開催に合わせ、「スポーツ観戦オードブル」を発売。ローストビーフやからあげなど酒のつまみになるメニューが中心で、連日、完売が続いています。弁当や総菜類の売り上げは前年の同じ時期と比べおよそ4割伸びているということです。

松屋銀座でもオリーブやチーズなどのおつまみ、ピザやサラダなどの売り上げが前週より3%増加。高島屋も串揚げなどの総菜に加え、手土産用のスイーツが売れているということで、「友人同士のホームパーティー観戦の需要もあるようだ」とみています。

このほか、百貨店では、ゆったりとテレビを見るための一人用のリクライニングソファや、パソコンやスマートフォンでじっくり観戦するためのリーディンググラス(老眼鏡)などの購入も目立つということです。

■関連消費は400億円

大和総研は当初、オリンピックの観戦チケットを持っている人たちによる個人消費は、会場までの交通費や宿泊費などを含めて1300億円になると試算していました。

無観客になったことで、これがゼロになったかというと…大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「無観客オリンピックも、いざ始まってみると盛り上がりをみせており、チケットの払い戻し分を飲食のテイクアウトや関連グッズの購入に振り向けることなどで、300億から400億円の消費が生まれる」とみています。