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五輪史上初の“男女ペア”旗手、あす開会式

2021年7月22日 11:02

あす23日は東京五輪開会式。日本では東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言をきっかけに、かつてないほどジェンダーへの関心が高まっていますが、開会式は史上初の“男女ペア”旗手に変わります。世界が注目する五輪開会式。ジェンダー視点でみると、どのような変化があるのでしょうか。news every.小西美穂キャスターが解説します。

■東京の開会式から旗手は男女ペアに

開会式の入場行進で国旗を掲げて先導する旗手は、これまで男性か女性どちらかを選ぶのが慣例でした。しかし、去年、国際オリンピック委員会(IOC)はジェンダー平等を重視する観点から、参加するすべての国・地域の選手団に対し、旗手を男性のみ、女性のみではなく男女ペアがつとめるよう求めていました。

このため日本オリンピック委員会(JOC)は、開会式の旗手にバスケットの八村塁選手(23)とレスリングの須崎優衣選手(22)を起用すると発表しました。

父がベナン人で母が日本人、そして世界レベルで活躍する八村選手は「多様性と調和」の大会コンセプトに合致する存在です。また、須崎選手はJOCが設立した「エリートアカデミー」出身者として初めて五輪代表に選ばれ、これからの日本を担うホープです。

■初の女性旗手は1988年大会

日本選手団で、女性で初めて旗手をつとめたのは、夏季大会で小谷実可子さん(1988年ソウル)、冬季大会では橋本聖子さん(同年カルガリー)です。その後も中田久美さん(92年バルセロナ)らへと続き、近年は女性の旗手はめずらしくありません。

■64年主将は「鬼に金棒、小野に鉄棒」

五輪夏季大会の主な歴代主将と旗手は以下のとおりです。

(順に開催年、開催地、主将、旗手)

1964 東京       小野喬   福井誠
1984 ロサンゼルス   山下泰裕  室伏重信
1988 ソウル      斉藤仁   小谷実可子
1992 バルセロナ    古賀稔彦  中田久美
1996 アトランタ    谷口浩美  田村亮子
2000 シドニー     杉浦正則  井上康生
2004 アテネ      井上康生  浜口京子
2008 北京       鈴木桂治  福原愛
2012 ロンドン     村上幸史  吉田沙保里
2016 リオデジャネイロ 吉田沙保里 右代啓祐

2021 東京 山縣亮太 石川佳純(副) 八村塁 須崎優衣

1964年の東京五輪の主将は、体操の小野喬さんでした。現役時代は「鬼に金棒、小野に鉄棒」と呼ばれ、五輪で金メダル5個という偉業を成し遂げた選手です。主将は選手団の「顔」となり、公の場で発言する機会も多いのですが男性が中心です。

■吉田沙保里さんは主将・旗手両方を経験

女性選手としては、吉田沙保里さんが2016年のリオ五輪で夏季大会として初めて主将をつとめました。吉田さんは2012年のロンドン五輪では旗手を担っていて、「主将と旗手」という大役を両方経験しています。

今大会でJOCがジェンダー平等を重視し、夏季大会では初めて副主将を置いたことも新たな取り組みです。主将と副主将に男女1人ずつを起用し、主将は陸上の山縣亮太選手、副主将は卓球の石川佳純選手がつとめます。

■ジェンダー平等へ「可視化できる」

スポーツとジェンダーに詳しい中京大学・來田享子教授は、「先頭に立つ旗手が男女ペアになることで、多様な人たちが同じ目標に向かって、ともに歩めることを可視化できる」と評価しています。

さらに、五輪の開会式の様子は世界中に配信されるため、「世界がジェンダー平等への姿勢を示せる最適な場所となり、変化を促すことにつながる」として期待を寄せました。

一方で來田教授は、「日本選手団の主将はまだ男性が中心。開会式の制作陣も同様で、スポーツ界全体でも意思決定の場にいる女性が依然として少ない。競技種目や参加人数の男女比といったわかりやすい部分だけではなく、性別や世代、人種など多様な人生経験をあらゆる物事に活かす発想を定着させる必要がある」と指摘しています。

東京五輪では、世界中から参加した選手団が、ジェンダー平等にどのような姿勢でのぞんでいるのかに注目してみるのもいいかもしれません。

(取材・文=DX取材部解説委員・news every.キャスター小西美穂)

■ペアで旗手を担う八村塁選手と須崎優衣選手
(写真左:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ、同右:保高幸子/アフロ)