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楽曲からMVまで1人で制作 高校生に注目

2021年7月17日 17:32
楽曲からMVまで1人で制作 高校生に注目

作詞、作曲から演奏、ボーカルに録音、ミックス、マスタリングまで楽曲制作のすべてを1人でこなす現役高校生アーティストがいる。札幌市在住のizki(いつき)さん。高校3年生だ。初めての自作曲のミュージックビデオ(MV)も自身で手がけた。「いいアイデアを持っていれば、有名になれる」と語る17歳男子の軌跡といまの心境を探った。


■初めての楽曲を「全部自分で」

2020年、「全国高等学校選抜ロックフェス」に応募した自作の楽曲がDTM(デスクトップミュージック)部門の金賞を受賞。受賞曲『狂鳴(きょうめい)』に自作のイラストを使って編集したMVをYouTubeに公開すると、地元FM局の人気番組で楽曲が紹介された。

2021年3月に『狂鳴』を配信リリース。「楽曲からMV制作まで手がける高校生アーティスト」としてじわり注目を集めている。

「曲を作ったきっかけが、新型コロナの影響でオンライン参加可能な全国規模の大会が出来たからなんです。去年の自粛期間を音楽に費やすことが出来ました」

もともと楽器の経験はあったが、ボーカルの収録とすべての音のバランスをとるミックス作業、最終的な音を調整するマスタリングは初体験だった。

「ボーカロイドに歌わせて応募しようと思ったんですが、パソコンにうまく入らなくて…。締め切りは迫っているので、どうしようかと。自分で歌うのは初めてでしたが、何度もボーカルのテイクをとって補正してと、1000本ノックをやりました。ミックス・マスタリングの技術全般はネットに載っているものを見漁り、情報を得て試して、と繰り返して勉強しました」


■ベビメタに衝撃「ギターやんなきゃ」

小学生の頃、父親に教えてもらったB’zの影響でギターとドラムに強い興味を持った。段ボールをドラムセットに見立てて叩き始めると、両親が電子ドラムを買ってくれたという。

「小さいときは水泳とかダンスとか、ギター教室とか習い事をたくさんしていました。小学校にブラスバンドがあって、本当に軽い気持ちで入ったら、たまたまそこのブラスバンドがすごく有名で毎年全国大会に行くような環境だったんです」

ブラスバンドではトロンボーンを担当した。まともな休みが10日あるかどうかという環境。「ありえないほどキツくて」と振り返る。

中学校に上がるころ、テレビでみたBABYMETALの演奏に衝撃を受けた。

「”ギターやんなきゃ”って本格的に初めました。同時進行でドラムも始めて。中学の休日などはギターやドラムなど平気で8時間ぐらい練習していました。憧れだった(BABYMETALのサポートギタリストの)藤岡幹夫さんにもお会いできたんです」


■「サムネイルと出だし数秒を一番凝る」

初めての楽曲を完成まですべて1人で手がけ、MVも自身で編集。自作のイラストを使って、独特な歌詞の世界を表現する映像に仕上げた。「人に何かを任せるのが苦手なんです」と話す。『狂鳴』のYouTube再生数は12万回を数える。

「MV全体というよりは、YouTubeに出てくる“サムネイル”が重要なんですよ。どれだけ興味をひけるか、それひとつで印象がまったく変わる。僕が普段YouTubeを使っていて、流れてくる曲はサムネイルがイラストのものが多くて。そのイラストが尖っているものは『すごい!なんだこれ!』って見たくなります。サムネイルと曲名でタップするかどうか決まるし、出だし数秒で自分の好みに合っているかどうか判断される。だからサムネイルと出だし数秒を一番凝る必要があると思っています」

アーティストとしてのものづくりの背景に、ユーザーとしての若者の視点がある。

「スマホのアプリだけで曲を作って何十万回再生とかを稼ぐ友達がいるんですよ。使っている音質はプロとは段違いで、音源として売れるかっていうと、あまりクオリティ自体は高くない。でもセンスがあって、アイデア自体がいいんです。最近のリスナーは音質とか全然気にしていなくて、いいアイデアだけ持っていれば有名になれると思うんです。ただ、自分が作る曲に対しては妥協したくない」

2曲目の配信リリースとなった楽曲『風●(ふうりん)』は、日テレNEWSのTikTokテーマ曲だ。(同曲のMVは外注)

「伝えたいことが3つくらいあって。1つはみんな暗いことしか見ないけど、こうやって生きていることが幸せなんじゃないかっていうこと。最終的には自分で変わっていくとかそういう姿勢が大切だよっていうこと。何気ない日常の中で『何か変わりたい』と思っていることがいいことなんじゃないかなという3つですね」

(●=「りん」の字は、隣のつくりに<<)