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濱口竜介監督、カンヌ最高賞獲得なるか

2021年7月13日 20:18
濱口竜介監督、カンヌ最高賞獲得なるか

現在開催中の第74回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に唯一日本映画で正式出品されている濱口竜介監督の最新作『ドライブ・マイ・カー』(8月20日全国公開)。映画祭の為に、フランスに滞在している濱口監督とキャストたちが記者会見の応じ、作品への思いを現地メディアに発信しました。


■現地メディアの取材に応じた濱口竜介監督の会見内容

——村上春樹さんの短編小説が原作の映画製作の経緯について

濱口:まず、こんなにお集まりいただきありがとうございます。村上春樹さんの原作を読んだのは、2013年。もともと知人からあなたの映画と通じる部分があるのではと言われて読みました。実際、自分が映画のテーマとして取り扱ってきた例えば「演じる」ということ。

加えて、この作品で一番重要なのは「車」だと思うんですが、自分は移動空間の中で親密な会話をするということを映画でも取り扱ってきたので惹かれるところがありました。

特に、家福とみさきという2人の登場人物が車という閉鎖空間のなかで、最初は抑制された人間性が、だんだんと開かれていく。そうしたことが原作には描かれていました。それはこの映画でもひとつの核心部分だと思っています。


——主演:西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さんらのキャスティングについて

濱口:キャスティングについては、観ていただいた方皆さんが同意してくれると信じているのですが、本当に素晴らしくうまくいっていると思います。キャスティングで一番大事なのは、役に合う人をキャスティングすることだと思っています。それが、すべてのキャストにおいてできたと思っています。

インターナショナルなキャスティングをするというのは、実際経験がなかったので、手探りでした。韓国に関しては、もともとそこで撮影する予定もあったので、ロケハンもかねてオーディションのような形でやらせていただいた。台湾・フィリピンのキャストはオンラインでのオーディションになりました。オンラインでわかるものか不安はあったが、やっぱりちゃんと顔も声も聴けて、その人の人間性も感じることができたので、結果としてうまくいったと今も思えています。


——映画は“コミュニケーション”が重要なテーマ

濱口:言葉を使っているから、コミュニケーションができていると思ったら大間違い。というとことはありますよね。むしろ、言葉がコミュニケーションを邪魔しているという側面はたくさんあるのではないでしょうか。言葉によって、情報をやり取りして、細分化していくことはできるけれども、それによって見えなくなっていることがあると、実生活で感じている。

自分の映画はすごくおしゃべりな映画ではあるが、言葉によってコミュニケ—ションができているという風に描いたことは実はそんなにない気がしている。そういう考えが、この映画の中の多言語劇にもなっているんだと思います。

もともと映画は字幕がついて、言葉がわからなくても見ることができる。一方で、今までは映画祭で「彼の演技がよかった」といわれると不思議な気持ちになることがあった。言語がわからないのにと。でも、今回はそうした気持ちがすごく薄れた気がしました。言語がわからないからこそ、直接的に演技の良しあしをとらえられる視点があるのだということをこの作品を通して実感として感じた。


——濱口監督にとって国際映画祭の場とは何ですか?

濱口:国際映画祭というものは、インディペンデントという形で映画作りを始めて続けてきた身にとっては、よりどころ。自分が面白いと思ったものをつくって、それが商業的になかなか流通していかないという苦い思いを初期の段階では味わっているが、映画を作るたびに、国際映画祭の方がより多くの人に見せるべきものだと、言ってくれることはものすごく励みになった。

それによって劇場公開が可能になった作品もある。なので、国際映画祭が自分を発見してくれたし、育ててくれたという印象を強く持っている。映画祭が自分に対して、求めてくることがあればお返ししていきたいと思う。



濱口監督は映画『寝ても覚めても』(2018年)でコンペティション部門に正式出品。前回は最高賞“パルムドール”を逃しました。今回の授賞式はフランス現地時間7月17日(土)/日本時間7月18日(日)から行われます。


写真:第74回カンヌ国際映画祭でのフォトコール(左から)ソニア・ユアンさん、濱口竜介監督、三浦透子さん、霧島れいかさん(C) Kazuko WAKAYAMA