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避難判断難しく「長雨蓄積型」土中に変化も

2021年7月9日 21:16
避難判断難しく「長雨蓄積型」土中に変化も

静岡県熱海市の土石流をめぐっては、発生当時ただちに避難を呼びかける「避難指示」は出されていませんでした。長時間の大雨では、自治体には難しい判断が迫られますが、私たちはどのように備えればよいのでしょうか?

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熱海市伊豆山地区で起きた土石流。町は大量の土砂にのみ込まれ一変しました。

住民「ここまで逃げてきたんですけど。土石流の壁が追いかけてきました。非常に九死に一生を得たというか」

土石流が起きた3日午前、熱海市が住民に出していたのはレベル3の「高齢者等避難」。静岡県と気象台は避難指示の発令の目安となる「土砂災害警戒情報」を発表。しかし、熱海市はレベル4の「避難指示」を出すことを見送っていました。住民は。

住民「(避難指示は)空振りを含めて早めに出したほうが正解だったね。結果的にはね」

土石流の一因となった今回の雨。どんな降り方をしていたのでしょうか。

現場に近い網代にある観測点の雨量データからは、ここ数日、1時間に10ミリから多くても20ミリ程度の雨が断続的に降り続いていましたが、グラフは細かく増減しながらも概ね横ばい。「激しい雨」は観測されていません。

しかし、土の中の状況は横ばいではありませんでした。地面の中にどのくらいの水分を含んでいたかを表す「土壌雨量指数」からは、2日の日中に目安となる数値を超え、気象庁は土砂災害警戒情報を出します。熱海市はその直前にレベル3「高齢者等避難」を発表していました。

一旦低下した土壌雨量指数は、ダラダラと続く雨の影響で3日未明からは再び増えていることが分かります。土砂災害発生のリスクが高まり、気象台も自治体に電話で危機感を伝えていました。

こうしたデータを「避難情報」を見直すきっかけに出来なかったのでしょうか?

熱海市・斉藤栄市長「3日の時点でありますが、その時点のその後の降雨量、また土の中に含まれる水分量がどちらも特に降雨量は非常に低い数字になっていた。水分の含有量もその後、減っていくという予測があったので、その時点でレベル3(「高齢者等避難」)を維持した」

長い時間、雨が降り続き土の中に水分が蓄積される「長雨蓄積型」と呼ばれる今回の雨。専門家は避難の判断の難しさを指摘します。

静岡大学防災総合センター・牛山素行教授「雨の降り方が(避難の)判断に非常に迷う、そういう降り方だったなと思います。2日間から3日間くらいかかってダラダラと雨が強弱を繰り返しながら降り続けると、これはまずいなと思う降り方があったかというと必ずしもそうでもない」

短時間の集中豪雨と違い危機感を与えにくい「長雨蓄積型」の雨。土砂災害に備えるためには見えない土の中の変化にも敏感になる必要があります。