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病院の子供を支える“ファシリティドッグ”

2021年7月3日 6:10
病院の子供を支える“ファシリティドッグ”

東京・世田谷区の病院などで小児がんや難病などの治療を受ける子供たちと家族を支える「ファシリティドッグ」が今月1日、活動を始めました。

■ファシリティドッグの「マサ」が就任!

1日、東京・世田谷区にある国立成育医療研究センターと医療型短期入所施設「もみじの家」で活動を始めたのは、オスのラブラドール・レトリーバーの「マサ」2歳です。「マサ」は職員の一員として、小児がんや難病などの治療を受けている子供たちのリハビリの応援したり、手術室への付き添いをしたりして、ストレスや不安を和らげる活動を行います。こうしたトレーニングを受けた犬は「ファシリティドッグ」と呼ばれ、国内での導入は4病院目、医療型短期入所施設では初めてだということです。

就任にあたり開かれた式典で、賀藤均病院長から「マサ」に、特別製の職員証が渡されました。賀藤病院長は、日本はアメリカなどと比べ入院中の子供や家族の心のケアが遅れているとし、「(ファシリティドッグは)長年の導入したいものの一つだったので今日この日を迎えられて本当に嬉しく思う」と話しました。

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これまで国内で活躍したファシリティドッグはハワイでトレーニングが行われてきましたが、2019年、国内で育成プロジェクトがスタートしました。「マサ」は国内で育成された初めてのファシリティドッグです。「マサ」はオーストラリアで生まれ、生後3か月の時に日本にやってきました。その後、病院内の音やにおいに対して動じず適切な動きが出来るよう、特別なトレーニングを積み、一人前のファシリティドッグとしてデビュー。トレーニングでは、様々な環境に慣れるため、老人ホームや企業なども訪れたといいます。

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「マサ」の名前は、ファシリティドッグを育成するNPO法人の創始者・キンバリ氏の息子・タイラーくんの主治医・熊谷昌明氏にちなんだものです。タイラーくんは生後1か月にも満たない時に、成育医療研究センターに搬送されました。小児白血病だったのです。その後、約2年にわたり、治療を続けましたが、短い生涯を閉じました。

キンバリ氏は自分たちの経験を役に立てたいという気持ちから、長くつらい入院治療中でも子供たちが笑顔を忘れずいられるよう、心のケアのための活動を始めました。「マサ」の就任にあたり、キンバリ氏は「私たちの物語が始まったこの成育で熊谷昌明先生にちなんで名付けられたマサが、成育の子供たちに愛と癒やしを与えてくれることを本当に嬉しく思っています」とメッセージを寄せています。

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「マサ」のパートナーとして働くのはハンドラーの権守礼美さんです。権守さんは、小児の医療現場などで約25年のキャリアがあるベテラン看護師。ハンドラーはファシリティドッグをコントロールするだけでなく、カルテを読んだり、子供たちがどういう状態か把握するなど医療者としての専門的な知識も必要とされています。また、ハンドラーとファシリティドッグは家族として一緒に生活をします。

「マサ」と権守さんも施設での業務が終わったら一緒に帰宅をし、生活をしています。ハンドラーは、医療従事者・ドッグハンドラー・飼養管理者の3役をこなすのです。権守さんは「『マサ』に限りない愛情を注ぎ、そして私がずっと大事にしてきた患者・家族中心のケアを提供できるハンドラーになれるよう、より一層努力していきたい」と話しています。

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「マサ」は、「コマンド」と呼ばれる指示に従って行動します。医療機器や手術後の傷など、触れてはいけない所や通ってはいけない場所を避けて行動するため「コマンド」通り適切な動きが出来ることが重要だということです。また、「コマンド」を組み合わせると、隠したおもちゃを見つける「宝探しゲーム」なども出来ます。ゲームは、遊びながら楽しむ歩行訓練の一つとして行われています。
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「マサ」と権守さんは、平日は毎日、病院と「もみじの家」で活動するということです。

(社会部 和田弘江)