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自民・森山国対委員長が歴代最長に

2021年7月2日 22:12
自民・森山国対委員長が歴代最長に

自民党の森山裕国対委員長の在任日数が3日で1431日となり、歴代最長記録を更新する。“今、一番働いている国会議員”とも言われる森山氏の仕事ぶりについて、その秘訣(ひけつ)を探った。
記者:政治部・後閑駿一

■“今、一番働いている国会議員”

去年9月に「国民のために働く内閣」と銘打って発足した菅内閣。自民党関係者から「閣内にいる大臣よりも、今、一番働いている国会議員はこの人だろう」と評価されているのは、自民党の国対委員長を務める森山裕氏だ。

森山氏はこれまで参議院議員を1期、衆議院議員を6期務め、農林水産大臣などを歴任。2017年8月から4期連続で自民党国対委員長として国会運営にあたり、3日、在任日数が1431日となり、歴代最長記録を更新する。

記録更新を前に記者団のインタビューに応じた森山氏は「こんなに長く国対委員長を務めるとはゆめゆめ思っていなかった」と感慨深げに語った。森山氏はなぜ、長期間にわたって国会運営をつかさどる国対委員長を務めることができたのか。自民党国対関係者は、森山氏の国会運営には「2つの秘訣がある」と話す。

■森山流国対の秘訣1―野党との交渉術―

1つは、野党との交渉術だ。前述の関係者はこう語る。「何か大きな問題が起きて国会が空転しそうになった時でも、森山氏は譲るべきところは野党に譲りつつ、政府・与党として後には引けないラインを絶対に守っていた」

例を挙げれば、森友・加計問題が噴出した時には、森山氏は佐川元国税庁長官や柳瀬元総理秘書官の参考人招致に応じ、野党側に譲歩する姿勢を見せた。一方で、政府・与党にとって重要な予算審議や法案審議は強気に進めて、次々に成立させていき、「結果的には与党ペースで国会が閉じる」というのが、森山氏の国会運営の“定石”となった。

こうした「譲るところは譲る」という森山氏の方針に、しばしば与党内からも「野党に寄りすぎている」と批判されることも。しかし、森山氏は「国会に議席を持っている全ての人が民主的に主権者である国民に選ばれている。少数会派であっても選ばれた人の意見は尊重しないと民主主義はおかしくなるのではないか」と、野党への歩み寄りの重要性を説く。

こうした森山氏の姿勢の背景には、国会議員になる前に、37歳の若さで鹿児島市議会議長に就任し、その後5期にわたって市議会のかじ取りをした経験がある。当時を知る関係者は「共産党も含めて与野党の議員のところに直接出向いて調整に奔走し、信頼関係を作っていた。今でも当時の共産党市議会議員だった人と交流があるほどだ」と話した。

■森山流国対の秘訣2―菅首相・二階幹事長との強固なパイプ―

もう1つは、国対委員長として“上司”にあたる自民党総裁の菅首相と二階幹事長、この2人とのきめ細やかな連絡や調整を欠かさないということだ。

菅首相とは、官房長官時代から毎日連絡を取り合い、国会開会中は毎週朝食会を開き、顔を合わせて国会運営などについて協議を重ねてきた。菅氏が首相になった後も、これまで築き上げてきた関係性は変わっていない。

一方、二階幹事長と森山氏の関係性は、森山氏のある行動に表れている。野党国対委員長との会談の前後に森山氏が必ず足を運ぶのが、自民党本部4階にある幹事長室だ。「普通だったら電話で済ませたり、事後報告することも、森山氏は必ず二階幹事長に直接会って相談している」と、自民党関係者はその気遣いの細やかさを指摘する。

自身も国対委員長を務めた経験のある二階幹事長は、相談に来る森山氏に対して「森山委員長の考える通りに進めてくれ」と返すといい、森山氏に近い自民党議員は「森山氏と二階幹事長との関係は“あうんの呼吸”に近い」と評する。

こうして、菅・二階両氏と信頼関係を築いている森山氏だが、この3者に共通するのは、世襲ではない地方議会出身のいわゆる“たたき上げ”であるという点だ。自民党の閣僚経験者は、「3人は国会議員になる前に、同じような目線で同じような景色を見てきている。似たような経験をしてきているから、言葉にしなくても通じている部分が多いのではないか」と推測し、「ここ数年の内政は、この3人に二階幹事長側近の林幹事長代理を加えた4人で動かしていると言っても過言ではない」と付け加えた。

■森山氏の今後にじわり注目

ある時、二階幹事長は森山氏の仕事ぶりを見て、自民党関係者にこうもらしたという。「俺が幹事長をやっているうちは国対委員長はずっと森山だ」絶対的な信頼を得ていることを感じさせるこの言葉通り、森山氏は二階幹事長の続投と合わせるように、異例の再任を続けることになった。

党内からは早くも「森山氏に国対委員長をもう1期やってもらった方がいい」と、続投を望む声もあがるが、「党内の役職が一定の議員に偏ってきている」という懸念もつきまとう。今後、森山氏がどのような形で党の運営、ひいては政権の運営に携わっていくのか、じわじわと注目されている。