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Z世代の仲間とつくる、学びのための居場所

2021年6月29日 19:21
Z世代の仲間とつくる、学びのための居場所

■継続した学びの場を作る

冨田さんが代表を務める株式会社dotは、大学生や高校生などZ世代が所属するコミュニティー「チームdot」を運営する。コミュニティーでは、メンバーの才能を引き出すための学びの場を構築。この学びの場は“部活”と呼ばれ、メンバーの「好き」と「強み」を掛け合わせて「ハッピーな価値を創出したい」という思いを軸にした活動を行う。

「『イノベーション部』ではアイデアを形にするための最新のイノベーション手法や考え方を、『デザイン部』ではイラストを使いリアルタイムで議事録を作る「グラフィックレコーディング」などを実践的に学んでいます。また、『メディア部』ではZ世代の研究や情報発信に励んでいます」

クリエイティブな学びの楽しさを広げたいという冨田さんの思いから、チームdotへの参加は基本的に無料だ。学びの場で引き出された才能や知見をいかして社会に貢献することで、持続可能なコミュニティー運営を目指している。

「例えば、絵を描くことが大好きなメンバーで企業のイベントや会議で、グラフィックレコーディングを提供しはじめ、今では初心者でもグラレコが描けるようになれる学びの場デザイン部が結成されています。メンバーの情熱や誰かの役に立ちたいという気持ちから、事業が成長しています」

コミュニティーを心地よいものにするため、dotでは「メンバーとの関係づくりに気を配り、しっかりと語り合うことを大切にしている」という。

「安心安全な“ツチ(=組織の土壌)づくり”を丁寧に行うことで、メンバーが自分のアイデアを発言しやすくなります。それが発展して、新しいワクワクするプロジェクトやサービスへとつながっていくと考えています」

現在、チームdotのメンバーは100人を超え、出版社や化粧品会社など、様々な企業とのコラボレーションを進めているという。学生同士の間に心理的安全性があり、本音で話す学生が多いことが、企業から評価されるポイントだと冨田さんは話す。

「自分たちが想像していなかった視点でのインサイトやアイデアが出ることに魅力を感じてくださる企業さんが多いと感じています。チームdotのメンバーは普段から自分の言葉で話すことに慣れていて、年齢や立場にかかわらずフラットに話せるのも特徴かと思います」

■学びの楽しさを教えてくれた大学の授業

冨田さんが今の活動をするようになったきっかけは、大学3年時の授業。株式会社ループスコミュニケーションズ代表であり、学習院大学の特別客員教授だった斉藤徹さんの授業に衝撃を受けたという。

「最初の授業で『僕は人を幸せにする経営者を育てたいんだ』と夢を語り出したんです。学生に夢を語る大人は初めてで、衝撃でした。講義も面白くて、学びや起業がワクワクすることだと教えてもらいました」

講義が終わった後、20人ほどの学生が集まって自身のテーマを探求する“自主ゼミ”のようなチームが発足。これが、後のチームdotにつながった。

当時、冨田さんがテーマにしたのは就職活動。それまで様々な企業でインターンなど行うものの、就職活動での企業と学生のコミュニケーションには違和感があったという。リアルな姿を知ることができず、働くイメージを持てる企業がなかった。その“困りごと”を話したところ「学生視点で就活を変えてみたらいいのでは」とアドバイスをもらったという。

「同じような思いを持った仲間で集まって、企業と学生が対等に話せるイベントを開催しました。就活のプロジェクトをやる前は、自主ゼミへの参加も一歩踏み出せずにいたのですが、それから自分でもわからないくらいどっぷりとハマりました。本気で何かに取り組むことが、楽しかったんです」

当時開催した「Z-1チャレンジ」という企業と学生が出会えるイベントから、実際に入社に至った事例もあるという。また「Z世代会議」というイベントでは、企業のマーケティング担当者と学生が「若者のチョコ離れ」に関する話題で、フラットに話したことが好評だった。その後も、自分たちのアイデアを形にする様々なプロジェクトを行った。

「この活動が楽しくて、未来への可能性を感じて、続けるために法人化しました。私にとって『学び』は、生涯続くワクワクするもの。今の仕事も、大切な『学び』の1つなんです」

■いつでも戻って来られる、家族みたいな場所でありたい

現在はZ世代を中心にコミュニティー運営をしているが、今後は多世代に広げていき、その交流も図っていきたいと冨田さんは考える。

「チームdotは卒業制度がありませんが、就職すると忙しくてなかなか活動に来られなくなる人も多くいます。他にも職場や学校に居場所を感じられない人もいるかもしれません。dotはそういう人たちが、いつでも戻れる、家族みたいな場所でありたいと思っています。そういう安心安全な居場所であり続け、さらに学びが深め合える場所でありたいです」

冨田さんが無償の学びの場を作ること、安心安全な居場所をつくることに力を入れる背景には、高校生の時に自身の父を亡くした影響もある。当時、経済的に厳しくなり、大学に行けるか分からない状況に陥ったという。その時に世の中には学ぶ意欲が高くても進学を諦める人がたくさんいることを知った。そのことが心に引っ掛かっていた。

「学びたくても機会に恵まれない人が社会にはいます。また、今いる場所が合わないと感じて不登校になっている人や、自分の個性や思いをいかす場がない人もいる。そういう人たちに『ワクワクする学びの場』を広げていきたいです。立場や育った環境に関係なく、一人ひとりの才能を引き出す学ぶ場があって、自分の好きなことで誰かを笑顔にしながら生きていける。そういう選択肢をみんなが作っていけるような社会にしたいと考えています。まずは身近なZ世代の人たちが幸せになれる場を作り、それを広げていきます」


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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。