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専門家に聞く…副反応 若者に多い“高熱”

2021年6月28日 19:52
専門家に聞く…副反応 若者に多い“高熱”

新型コロナウイルスの政府の政策決定やワクチン開発、医療現場などの最前線で奔走する専門家たちに、今更聞けない素朴なギモンから最新情報のアップデートまで聞く企画。第8回は、厚生労働省のワクチンの副反応を調査する研究班の代表を務める、順天堂大学医学部の伊藤澄信客員教授を取材しました。

厚労省の研究班では、新型コロナワクチンのファイザー製を接種した医療従事者約2万人を対象に健康観察日誌の提出を受け、副反応について調査しました。取材は、この調査データに基づき、ファイザー製ワクチンの副反応について聞きました。

また、研究班は現在、モデルナ製ワクチンを接種した自衛隊員を対象に同様の調査を開始していますが、現在はまだ初期のデータを回収中で、モデルナ製に関しては、初期のデータに基づき聞きました。

■9割の人が「腕の痛み」

――ファイザー製ワクチンの健康観察調査からみえた副反応の傾向は

(接種した腕の)疼痛(痛み)が大変強くて、9割近くの人に痛みが出ると思います。接種直後は痛みがなくてチクって刺されただけの痛みなのが、3時間から4時間くらいするとズキズキと痛み始める。接種した日の夜から翌日にかけて痛みが強くなって、腫れとか強くなるし動かすと痛い。ただ、時間が経てば自然と軽快していくものですので、1日2日我慢すればよくなると考えれば、それほど苦痛はないと思います。

■副反応への不安感が症状に出ることも

――1回目接種で特にみられた副反応は?

(主に)痛みだけだと思います。1回目接種で(調査した約2万人で)明らかなアナフィラキシー(重いアレルギー反応)の方はいなかったと思いますが、不安感に伴ってじんましんが出てしまうとか、それをアナフィラキシーではないかと心配された方が多かった。実際、接種後30分以内に88人の方が、不安感を訴えられました。

――不安感をもって接種することで体調を崩す?

その通りで、不安感によって自律神経反応はたくさん出ていると思います。副反応は、起きるとわかっていればそれほど怖くない。(痛みなどは)予想される副反応なんだと理解していただければ。

※記事掲載時点の6月13日現在、国内で接種した人で国際基準に照らしてアナフィラキシーと判断された人は以下の通りです。

・ファイザー製ワクチン約2300万回中、238件
・モデルナ製ワクチン約44万回中、0件

■2回目接種後、倦怠感・頭痛も

――2回目接種での副反応の特徴は

全身倦怠感が非常に高い、という状況でした。2回目接種後は、6割超える人が感じていて、1回目接種後と比べて3倍以上です。特に、20代、30代の女性は、8割弱の人たちが全身倦怠感を自覚されています。若い人はもしかしたら、接種翌日、3日目の2日間、仕事がしにくいかもしれないと思います。

・ファイザー2回目接種後「全身倦怠感」※約2万人を調査

接種日 約23%
2日目  66%
3日目 約37%
4日目 約15%
5日目  約7%
6日目  約4%
7日目  約3%
8日目  約2%

・ファイザー2回目接種後「頭痛」

接種日 約16%
2日目 約48%
3日目 約27%
4日目 約13%
5日目  約7%
6日目  約5%
7日目  約4%
8日目  約3%

■若い人に多い高熱“1dayインフルエンザ”

――発熱は?

37.5度以上ですが、若い女性、20代の2人に1人は熱が出ます。逆に、60代以上の男性では10人に1人しか熱が出ない。年齢と性別によって随分と違います。

――高熱も出る?

高熱が出る人もいます。2回目接種に限りますが、それこそ“1DAYインフルエンザ”。1日だけ、接種翌日はインフルエンザにかかった状況になると思っていただいた方がいいと思います。特に若い人は、そういう認識で、勤務態勢などの対応をしていただきたいと思います。

――最初から接種翌日休めるように調整を?

もちろん。企業も難しい選択かもしれませんが、そうする方がいいとアドバイスします。

・ファイザー2回目接種後「発熱」
接種日   約3%
2日目  約36%
3日目   約7%
4日目   約8%
5日目 約0.4%
6日目 約0.3%
7日目 約0.2%
8日目 約0.3%

■アレルギーがある人…副反応の差は?

――食物や薬などのアレルギーがある人での副反応は?

必ずしも過去に大きなアレルギーがあった人が、接種で具合が悪かったかというと決してそんなことはないと思います。

――1回目で副反応が出て、2回目接種を止めた人の割合は?

(調査の約2万人中)79人が2回目接種をしなかった。1回目の接種直後に具合が悪くなった方など。ただ、99.1%の方が2回目接種をしていますので、1回目接種が原因で2回目接種を受けなかった方はそれほど多くないと思います。

■10代は「自分で納得してかから接種を」

――10代の接種での注意点は?

やはり自分が納得して接種していただくというのが大切だと思います。痛みがありますし、2回目接種で具合が悪くなるかもしれない。その時に、自分が納得して打ったかどうかは一番大きいのではないかと思います。保護者の方は、お子さんによく説明していただきたいです。

■モデルナ製の副反応は「やや高い」

――モデルナ製の調査でわかったことは?

現状はまだ1週間分しかデータが取れていませんが、統計学的には、発熱はモデルナの方が高そうです。1回目接種の副反応に関しては、全身倦怠感、頭痛も、モデルナの方が強いかもしれません。ただ、強いと言ってもそれほど著しい違いはない。年齢、性別ごとの頻度はファイザーと変わりませんし、全体の傾向はどちらも変わらない印象です。

――自治体と職域接種で、ファイザーとモデルナのどちらを受けるか迷う人はどう判断すればいい?

一番は、どちらの期日が先なのか、早く接種できる方を選ぶ方が(感染の)リスクは小さいのではと思います。

■高い有効性、そして副反応を理解して

――副反応があることで受けるのを迷う人もいるが

ワクチンの有効性95%というのは、少なくともインフルエンザワクチンなどと比べるとびっくりするくらい高いです。それに伴って出てくる副反応なので、これは致し方ないと思います。副反応は出ます。副反応が出ることを前提に受けていただいて、(ワクチンによって)死亡率、重症者が減ってくれればいいなと思っています。

■伊藤澄信
順天堂大学医学部臨床研究・治験センター客員教授。厚労省のワクチンの副反応調査をする研究班の代表