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政治の“成功体験”が参加意欲に繋がる

2021年6月21日 18:34
政治の“成功体験”が参加意欲に繋がる

学生起業家の伊藤和真さん(22)は、政策に関われるプラットフォーム「PoliPoli(ポリポリ)」を運営する。19歳で選挙を経験した時に感じた「アナログさ」を解消するためにサービスを開発。政治に関心を持つ人を増やすことを目指し活動する。

■自分の声を政治家に届ける“政治プラットフォーム”運営

PoliPoliは、登録している政治家に対し、直接意見を伝えられる政治プラットフォームだ。WEBサイトのトップページには、育休取得や子どもを性犯罪・性虐待から守ること、新型コロナウイルス感染症に関する対策など、さまざまな政策が並んでいる。政策を提言しているのは与野党の国会議員たち。国家議員の5%ほどが登録し、これまでに約100の政策が国会議員から挙げられたという。

「最近話題になったのは、性教育や生理に関する政策ですね。ユーザーに若年層が多いこともあり、若い人向けの政策が多い傾向も見られます」

PoliPoliでは、サイト内にコメントを寄せることや、政治家との意見交換会に参加することができる。政策の進捗は、政治家の投稿で確認できる。中には、実現に至った政策も。例えば、「コロナと闘う看護職に危険手当を!」というタイトルで投稿された政策は実現し、医療・介護職への最大20万円の慰労金が給付されることになった。

伊藤さんは、「自分の意見で本当に政策が動くんだ、政治って変えられるんだと感じたという声も寄せられています」と語る。

政治家に直接意見を伝える方法は、これまでもなかったわけではない。ただ、インターネットで声を上げられるようになることで、政治に関わるハードルが下がった。また、各政策ページに掲載されている詳細情報は、スライドを使うなどしてわかりやすさを重視。政策を立ち上げた背景にある現状課題や政策内容がスムーズに理解できるという。

「政策って難しいですからね。わかりやすく解説するなど、伝える工夫もできるだけしていきたいと思っています」

■初の選挙で感じた「政治のアナログさ」

政治に関するサービスを手掛ける伊藤さんだが、「以前はあまり政治には興味がなかった」という。PoliPoli着想のきっかけは、19歳のときに経験した初の衆議院選挙だった。

「それまで、政治家は自分より遠いもの、少し怪しいものといった印象でした。選挙権が18歳に引き下げられると聞いても、『そうなんだ』くらいで。ただ、いざ投票するとなると、誰がどんなことをやろうとしているのかそれなりに調べようと思ったんです。そこで、政治ってアナログだなあと思ったんですよね。インターネットを活用すれば、政治ってもっとよくできるんじゃないかなと」

大学1年生の頃、伊藤さんは自作の俳句を通してコミュニケーションが取れるアプリを開発。多くの人から反応をもらったという経験があった。あくまでもビジネス目的ではなく、「こういうものがあったら」と作ったものだったという。そのスタンスは、PoliPoliの開発を始めたときも同じだった。当時の苦労について、伊藤さんは次のように語る。

「サービスはユーザーに使ってもらうまでが難しいんです。政治は日常でなかなか意識しないことなので特に難しさがありました。また、サービスのコンセプトも初期から変わってきています。当初は僕自身がまちづくり文脈が好きだったので、地方議員さんと一緒にまちづくりをコンセプトにしてみたんです。でも、ユーザーとなる若い人たちは身軽な人が多いこともあり、定住まで至らなかったり、街をよくするモチベーションもあまり高くなかったりしました。そこで、頭を切り替えて、国政に目を向けることにしたんです。僕の中に、まちづくりや国づくりが政治だよねという認識があるんですよ」

PoliPoliで政策を提示してくれる政治家を増やすため、とにかく連絡を続けたという伊藤さん。やり取りを重ねる中で、政治家側の事情も見えてきたという。

「政治家を続けるためには、選挙での票数が必要です。その票数につなげようとすれば、インターネットをあまり使わない年齢層に情報が届くところで活動するほうが合理的だと議員さんから聞き、印象に残りました。また、今はインターネットを活用して若者に伝えたいと思っても、TwitterやInstagramやTikTokなど、若者の生息地が多すぎる。接点がテレビだけだった時代と比べ、場所ごとに相手に伝わる言語を使って発信するのは、なかなか難しいことだと思います。とはいえ、インターネットを活用しないままでいていいとは思わない。政治家が発信できるよう、改善しようと思いました」

■政治への成功体験が能動的な参加意欲につながる

伊藤さんがいま力を入れているのは、政治家が政策を推進する際に役立つサービスの開発だ。政治家が国民に発信しやすい環境をアップデートしているという。国民が何か困りごとを感じたときにアクセスする場所となることが、PoliPoliが目指す世界観だ。

「昔と比べ、現代は変化のスピードが速い。4年に1回の国政選挙で議員を選び、その後は選ばれた政治家に完全に任せるというスタイルは、今の複雑な社会では限界がきていると思っています。選挙以外のときにも、自分の興味のある分野にアンテナを張り、政治にアクセスする社会になっていくことが大切だと思いますね。2、3個の政策でいいので、自分の主張を述べ、意思決定につながるアクションをとる。政治はいろいろな意見を聞いて意思決定する行為ですから、一人ひとりの声が出てくることは良い社会につながる大切なことだと思っています」

伊藤さんは、政治への関心が薄らぐ原因は「自分が投票しても何も変わらない」という成功体験のなさだと考える。だからこそ、成功体験を積み、政治は自分と離れた世界の話ではなく、自分の生活と地続きにあるものと感じてほしいと話す。

「何となくサービスを始めた僕自身、サービスを続ける中で、政治ってすごく大事なんだな、生活の一部なんだなという実感を得るようになりました。政治家も、政策を知ってほしい、国民の声を知りたいと思っているんですよ。国民の声が政治に伝わる社会を作っていきたいです」

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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加しました。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。