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雇用と環境守るため…水素エンジン車の挑戦

2021年6月19日 18:11
雇用と環境守るため…水素エンジン車の挑戦

世界では今、環境問題に配慮して、ガソリンエンジン車の規制が進んでいます。一方、エンジンに携わる人々の雇用が失われるという懸念も。日本の自動車産業が雇用と環境を守るために模索する新たな選択肢を取材しました。

先月、富士山のふもとで行われた、自動車の24時間耐久レース。レーサーとして参戦したのは、トヨタ自動車の豊田章男社長です。

豊田社長「非常にリラックスしてますよ」

豊田社長があえて過酷なレースに挑戦したのは、ある“特別なミッション”があったからです。トヨタは今回、ガソリンではなく水素を燃料とするクルマで完走を目指します。

レース直前、豊田社長が私たちのもとに。特別な思いを語ってくれました。

豊田社長「エンジンというものがこの世からなくなりますと、(自動車産業)550万人の雇用の中の約100万人が失われるといわれている。(自動車産業に関わる)そういう人たちの仕事も失わないように、一緒に未来をつくろうという同志たちの気持ちをのせて、量産車カローラが走ります」

水素エンジン車の開発がなぜ「雇用」につながるのでしょうか。埼玉県にある工場。この工場で作っているのは、ガソリンエンジン用の「ねじ」です。製造から検査まで、多くは手作業で行われています。工場の従業員は100人ほど。しかし…

安藤螺子製作所・久保田憲史専務「電気自動車に変化してしまうと3万点の部品を使っていたものが2万点で済んでしまう。そうしますと今後の社員の雇用とかにも影響してしまう」

今月、都内で行われた輸入車のイベントには電気自動車がずらり。世界ではガソリンエンジン車を規制して、電気自動車へのシフトが急速に進んでいます。

環境に優しいとされる電気自動車は、バッテリーに充電した電気でモーターを動かすためエンジンはありません。また、CO2を出さない水素を使い、モーターを動かすクルマもあります。しかし、今回トヨタがこだわったのは、水素を使ってエンジンを動かすクルマです。

この会社の売り上げは4割がエンジンの部品。もしエンジンがなくなってしまったら、今の雇用を守れないといいます。

久保田専務「環境の問題とともに、エンジンのクルマが、現状を維持していく方向に進めばありがたい」

環境に配慮しながらエンジンの技術を活かせる「水素エンジン車」は雇用を守るひとつの選択肢なのです。ガソリン車と変わらない音とスピード。しかし課題もあります。燃料を入れるため、車は特設の水素ステーションに。燃料となる水素はタンクいっぱいに充てんしても、ガソリンの3分の1の距離しか走れません。そのため20分に1度のペースで燃料の補充が必要となるのです。

2日におよぶ過酷な戦い。そして…24時間が経過し、無事に完走。耐久レースを走り抜きました。レース終了後――

トヨタ自動車・豊田社長「自動車産業のいろんな規制しかり、出口を1つ狭めてアナウンスするのではなく、仕事を自分の知恵と情熱で発展させて欲しい、それを自動車業界にやらせていただけないだろうか」

「脱炭素」と「雇用」を両立させることはできるのか。水素エンジンという選択肢が新たな道を切り開くかもしれません。