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「さみしい」コロナで深刻 若年女性の孤独

2021年6月11日 20:46
「さみしい」コロナで深刻 若年女性の孤独

コロナ禍で人とのつながりが希薄になるなか、懸念されている孤立や孤独の問題。今、若い世代の女性の間で深刻化しています。実態を取材しました。

横浜市にあるNPOの相談室。スタッフが向き合っていたのは、SNSで助けを求めてきた一人暮らしの女性。

BONDプロジェクト・竹下奈都子さん
「ずっとおうちにいた期間、やりとりとか、人と関わってたの?」

相談にきた女性(23)
「ないかな…。友達も、そもそも連絡する人いない」

誰とも会わず、誰とも話さない日々の苦しみをうちあけました。

BONDプロジェクト・竹下さん
「そっか。じゃあ人に会わず、ずっと?」

相談にきた女性(23)
「さみしかった。本当、死んだように生きてた」

社会から孤立し、孤独に苦しむ人々の問題。BONDプロジェクトでは今、10代から20代の若い女性からの相談が急増しているといいます。

BONDプロジェクト・竹下さん
「やっぱり、大変な状況の子で、いろんな問題を抱えている子たちが、コロナ禍でさらに大変な状況になったり、ハイリスクな状況になって相談に来ていることが多いです」

コロナ禍で孤独の問題が深刻化するなか、懸念されるのが若い女性の自殺です。

去年1年間、女性の自殺者数は前の年に比べて935人増加しました。中でも、特に目立つのが若い女性の増加です。前の年に比べて、20歳未満の女性が44%、20代の女性が32%も増えているのです。

   ◇

訪れたのは、都内にある女性を保護するNPOのシェルター。かなさん(仮名・24)は去年10月、助けを求め保護されました。父親を亡くし、母親も再婚して新しい家庭を持っているため、帰る場所がないというかなさん。

かなさん(仮名・24)
「彼との子を妊娠してて、最初、結婚してちゃんと産む約束してたけど、それがなくなって、それで堕ろして別れました」

住む場所を失ったうえ、コロナ禍で働き口が見つからず、絶望的な状況に陥っていたというかなさん。ネット上でつながった見知らぬ男性の家に泊めてもらうことなどを繰り返していました。

かなさん
「誰でもいいから、誰かといたほうがいいと思ってたから、孤独感を感じないために男性とつながったりとかしてた。先のことは全然考えてなくて、今だけを考えて過ごしてました」

思い詰めるなか、意を決してNPOに送ったSOSがきっかけで、保護されました。

   ◇

こうしたSOSを、いかにすくいとるかが命をつなぎとめる支援の鍵になるといいます。BONDプロジェクトでは、今年4月から、SNSを使ったオンライン相談を強化しました。普段から利用しているSNSを用いることで、相談するハードルが下がったという声が多くなったといいます。

対応していたのは死にたいと訴える女性。手をさしのべる相手がいることを伝えます。しかし、相談件数が急増するなか、去年4月からの1年間で対応できたのは、全ての相談の3分の1にすぎません。多くのSOSが“支援の網”からこぼれ落ちているのが現状です。

BONDプロジェクト・竹下さん
「まだまだ(相談が)追いついていないのが現状になるので、どうにか相談対応の部分で拡充して、より多くの子たちの声が聞けるといいなと思っています」

一方、シェルターで保護されていたかなさん。

かなさん
「この先も何もない人生なんだろうなって思ってたのが、ここにきて、ちゃんとやることとか、何になりたいとか見つけられて」

かなさんは、職業訓練に通いながら、介護の資格をとりました。そして、シェルターを出て1人で暮らすための新たな家へ。

NPO代表・橘ジュン代表
「私たちと過ごしたこの時間で、何かあったら誰かに相談するとか、誰かを選ぶのも彼女なりに覚えたと思うんですね、1人で抱えないとか」

かなさんは「頼っていいんだなと思うし、1人で考えててもいい方向には進まないから、ちゃんと真剣に考えてくれる人がいっぱいいるし、連絡するの勇気いるけど、勇気出して連絡してほしい」と話しました。

■孤独・孤立問題、政府は?

政府が坂本地方創生担当相を調整役に充て、対策担当室を設置してから約4か月。しかし、具体的な政策は見えないままです。孤独・孤立の定義が確立していないなか、どのような状況の人を重点的に支援するのかも定まっていないのです。

対策室の職員は「正直、何から手をつけていいのかわからない」と話しています。孤独・孤立にはスティグマ(恥)がつきまとうことから、「相談することは恥だ」「こんなことも耐えられない人だと思われたくない」と、誰にも相談できずに苦しい気持ちを抑え込んでしまう人もいます。

政府は、まずは孤独・孤立の尺度を測るべく、今年の12月頃に全国的な調査を行うことを検討しています。同時に力を入れようとしているのが民間との連携。対策担当室の発足時、坂本大臣は職員への訓示で「役人・役所としての仕事とはまったく違う部署なので、それを1回脱ぎ捨ててやっていただきたい」と述べました。

「役所の感覚だけではできない」とする坂本大臣。対策室の政策参与に、元厚生労働省事務次官で現在、NPOで若年女性を支援する村木厚子氏と、生活困窮者の支援に取り組むNPO法人理事長の大西連氏を起用しました。

孤立孤独の背景にある問題の現場を知る2人の知見を、今後の政策に生かす狙いがあります。また、政府は秋にかけて、テーマごとにNPO団体を集めて、全10回程度のフォーラムを開催し、意見を聞く予定で、官民一体で必要な支援を模索していくことにしています。