×

国連トップ直撃 ワクチン「平等な供給を」

2021年6月3日 8:53
国連トップ直撃 ワクチン「平等な供給を」

日本テレビの「Good For the Planet」キャンペーンにあわせて「news every.」の藤井キャスターと鈴江キャスターがお話を伺ったのは、SDGs(持続可能な開発目標)の旗振り役である国連の事務総長、アントニオ・グテーレス氏(72)です。

まずは、グテーレス事務総長のSDGsへの取り組みと、先進国と途上国の間の「ワクチン格差」について聞きました。

※単独インタビューの全文記事(1/3)です。


■“一市民として”グテーレス事務総長が実践してきたSDGsの取り組み

Q(藤井キャスター):自身が実践しているSDGsの具体的な取り組みは?

A(グテーレス事務総長):
第一に、持続可能な開発目標のための私の仕事のほとんどは、ここ国連で実施していますが、私は責任ある消費者としての行動にもつとめ、自分の消費を気候問題への取り組みや食料安全保障、そして持続可能な開発目標に関わるほかのすべての側面に沿ったものにしようとしてきました。

国連事務総長に就任する前、私は常にボランティアとして活動しました。ボランティアとして教育という大事な問題に取り組みました。学生時代はリスボンのスラム街でよく活動したし、首相を退任した後は、リスボン近郊で移民労働者たちが大学の試験を受けられるよう、彼らに数学を教えてもいました。

食料安全保障、気候問題への取り組み、そして教育と貧困撲滅の問題との関連では、公務としてではなく、一市民として、できる限りのことをしようと努力してきました。しかしもちろん、事務総長の仕事としてやろうとしたことを振り返ると、そのほとんどは、持続可能な開発目標に結びついたものです。

貧困の撲滅、よいガバナンスの必要性、これもとても大事な問題です。気候問題への取り組み、食料安全保障、教育、健康、人間の安全保障に関わるすべての問題。これは日本の考え方の中心です。人間の安全保障。政府の機能、社会の組織化、経済発展において、誰もが福祉と安全保障を受けられるようにするということです。すべてが、人間を中心にしたものです。

こうした日本のビジョンは、私が国連事務総長として、できる限り取り入れようとしているビジョンであり、責任ある市民、責任ある消費者として行動しようとする時、自分の内部にもあるものです。

■進むワクチン格差…「平等な供給システムを」

Q(藤井キャスター):新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるが、先進国と途上国の間に「ワクチン格差」が生まれている。私たちが取り組まなければならないことは?

A(グテーレス事務総長):
これは本当に心の痛む問題です。ワクチンの75%は先進国10か国に集中し、残りの25%がそれ以外の世界中の国々に散らばっていて、発展途上国の多くには、1回分のワクチンですら、まだ届いていません。

受け入れ難いことです。受け入れ難いというだけでなく、賢明でもありません。なぜなら、ある先進国が自国民にワクチンを接種すれば問題は解決すると思ったとしても、南側の途上国では、ウイルスが山火事のように広がっていることを忘れてはならないからです。インドや、ブラジルをはじめラテンアメリカのいくつかの国々の状況をご覧なさい。

変異ウイルスのリスクはとても大きいのです。ウイルスは、広がれば広がるほど変異し、変異するとより感染しやすくなり、より危険になります。そして、いずれはワクチンの効果をなくなしてしまうかもしれないと我々は危惧しています。

つまり、裕福な国の国民を守るための唯一の方法は、貧しい国々をも確実に守ることです。変異ウイルスの逆流を許さず、ワクチン接種が済んだと思っている人々が変異ウイルスによって再び害されないようにすることです。ワクチンは突然、効かなくなるかもしれません。

だからこそ、あらゆる国々で人々へのワクチン接種を済ませることが不可欠です。これこそが、世界のすべての重要な国々が一堂に会し、世界規模でのワクチン接種計画の策定に向けた緊急対策本部を創設しようと私がG20に対して強く提案している理由なのです。

だから、ワクチン生産国、ワクチンを生産できる国々を結集させなければなりません。もしライセンス契約や技術的なサポートが可能なら、世界でのワクチン生産を倍増させるために資金を動かすことができます。現在の生産量では足りないので、これを倍増させ、どこでも誰に対してもワクチンが届けられるよう、平等な供給システムをつくることです。

世界の経済は、ワクチン接種が成功するかどうかにかかっているので、このことは極めて重要です。ワクチン接種の成功がなければ、世界の経済回復には、ますます多くの困難がもたらされることでしょう。


※国連トップを直撃「日本はさらに意欲的に」に続きます

   ◇

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。