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ミレニアル世代の声を届け、未来を共に創る

2021年6月2日 19:00
ミレニアル世代の声を届け、未来を共に創る

■従来の“家族観”への違和感 ミレニアル世代の声を発信

「未来の担い手となるミレニアル世代のイノベーターが、もっと政策に意見を出せる場が必要だと考えました」

PMIを立ち上げた石山さんは、こう語る。

PMIは「ビジョンメイキング」と「ルールメイキング」の2つを実践。未来のビジョンを描くと同時に、それを社会に実装するためのルールづくりにも力を入れている。

ルールメイカーを育てるために運営するのは、弁護士約80人が参加するコミュニティ。ルールそのものをつくり、変えていくための、学びを得る場だ。また、政策立案を担う若手官僚向けのコミュニティも運営。正解のない時代の中で、未来を描く力や問いを立てる力、教養を身につける。

ビジョンメイキングのための機能が「PMI ThinkTank」だ。このシンクタンクは、これからのイノベーション領域において持っておくべき視点、考え方を提示するもの。活動の一つが、2021年4月に公表した「ミレニアル政策ペーパー」だという。

「ミレニアル世代が感じる社会への違和感を起点に、未来をどう捉えるべきか、『政策』『テクノロジー』『文化・社会規範』の3つの視点から提言しています」

第一弾のテーマは家族。誰にとっても身近なテーマであり、産業にも大きく関わるものでありながら、家族そのものを全体的に考える省庁はどこにもない。石山さんたちは、「そもそも“家族”とは何なのか」を改めて問いかけ、社会をアップデートしていこうと考えた。

「多くのミレニアル世代が、従来の“家族観”に違和感を抱いています。私自身、“結婚”はしていますが籍は入れていません。お互いがどういう関係で在りたいかを合意できれば、婚姻制度にとらわれなくてもいいと思っています。それから多様な性的指向に婚姻制度が対応していない現実もありますよね。現状の制度が、あらゆる人を包括するものでないことに、最も違和感を覚えます」

石山さん自身も法的な婚姻関係を結んでいない、事実婚当事者。同じく多様なミレニアル世代の声を政治の現場へ届けるものがミレニアル政策ペーパーだ。また消費者に向けて「制度、テクノロジー、価値観が組み合わされば世の中を変えられる」ことを、広く訴えかける。

「私たちは法律に直接働きかける団体ではありません。あくまで中立公平な立場でこのペーパーを提示し、社会的な議論を大きくしていきたいんです。『そもそもなぜそれが必要なのか』を社会で議論しないと、制度は動かないからです」

■共通言語を持って、社会に向き合う

石山さんはもともと、クラウドソーシングを運営するベンチャー企業で経営企画に携わっていた。そこで感じたのが、ベンチャー企業と政治との壁だったと話す。

「ベンチャー業界で新産業が盛り上がっている一方で、企業が知らないところで制度や政策が決まっていたり、政策に関する情報にアクセスする機会が少ないことに課題を感じました」

その後、石山さんは、カーシェアや民泊など、いわゆる「シェアリングエコノミー」事業者の業界団体の立ち上げに関わる。個人としてではなく、業界を背負って、新しい産業のための制度づくりや、市場の環境整備に力を入れることになった。そこでまた、新たな課題が見えてきた。

「政策を作る人たちと見ている“世界観”が違うと、解決に向けて話をしてもかみ合わないんですね。政治家の方々の中には、平均年齢が高くて、いまだにガラケーを使っている人も少なくない。そこでスマートフォンのアプリの話をしても、通じないわけです。共通言語を持って社会を捉えないと、物事は進んでいかないと気づきました」

また、シルバー民主主義と言われる日本で、若い世代が政治に対する影響力を持たなければとも考えた。こうした問題意識から、官僚と民間のイノベーターが、立場を超えてフラットな議論を交わす場として、PMIを立ち上げたのだ。

「若い起業家の中には『上の世代には分かってもらえないから、自分たちで未来をつくっていこう』と言う人もいるんです。でも私は、一部の人だけが良いサービスを享受するのは好きじゃない。どうやったら上の世代も痛みを伴わず、一緒に進めるのかを考えたいですね。そのためには、共通言語で問いを分かち合う力が必要だと思います」

社会を動かす場を自らつくる、石山さんの原動力とは何か。石山さんは「こみ上げる使命感」だと表現する。

「ミレニアル世代は、この先50年を生きる世代です。私たちにとって、社会の危機はそのまま自分たちに返ってくるもの。自身の生活に影響するからこそ、真剣に考えています。いち当事者として、考えてみようという感覚ですね」

■人の良心に問いかけたい

今後は、PMIのシンクタンクをより大きくし、これからの社会が重視すべき指針や概念を提示できる担い手になりたいと石山さんは語る。

「シンクタンクの成果は、規模や数値で測るものではなく、社会の価値観にどれだけ影響力を持てたかで決まります。その影響力を大きくするために、まずは4月に発行したミレニアル政策ペーパーを広めていきたいですね。そして、今年秋には第二弾のテーマを決定する予定です」

「自分は社会のために生まれてきた」10代の頃からそう思い続けてきたという石山さん。目標は、人生をかけて世界平和を実現することだ。

「今この瞬間、世界中の人が優しい気持ちになったら、ほとんどの社会問題は解決すると思うんです。人の価値観が変わったら解決することはたくさんあると思う。だからこそ、思想や価値観にもっとアプローチしたいです」

大学で世界平和について研究した石山さん。学ぶうちに、政治と経済によるアプローチでは、誰一人取り残さない解決は不可能だと絶望する。そしてたどり着いたのが「人の良心に問いかける」ことだった。これこそ、世界平和を実現する唯一の解決策だと考えている。

「今世の中で起きている問題は、対立構造やヒエラルキーで語れるものがほとんどです。人に備わっている良心は、そういった対立や階層をも超えられるもの。私は人の良心を信じているし、もっと良心に寄り添って解決策を考えてみたい。そういうアプローチができる人が、これからの世の中には必要だと思っています」


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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。