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感染力約2倍か…インド型で東京どうなる?

2021年5月27日 20:39
感染力約2倍か…インド型で東京どうなる?

新型コロナウイルス感染拡大に伴い東京や大阪などに出されている緊急事態宣言の延長が、28日に正式に決まります。これには感染力が強いインド型の変異株の広がりも関係しています。インド型がまん延するとどんな影響があるのか、最新データで解説します。

■「変異株影響で感染者数が下がらない」
現在、緊急事態宣言が出されている都道府県のうち、沖縄以外は5月末で期限を迎えます。ただ、政府はこの期限を6月20日まで延長する案を軸に検討していて、28日に正式に決定します。

政府関係者は「変異株の影響で感染者数がなかなか下がらない」と指摘する一方で、複数の政府関係者は「6月20日までにはワクチン接種が進むので、感染者も減ってくるだろう」としています。

■感染者急増の地域も

26日は全国で新たに4536人の感染が確認され、亡くなった方は116人、確認されました。なかでも沖縄は感染が急拡大していて、新規感染者数は過去最多の302人。また、北海道や愛知でもそれぞれ551人、445人と多くの感染者が確認されていて、数値の高い状態が続いています。

■「今後、インド型への置き換わりが急速に」
一方、東京の26日の新規感染者数は743人で、しばらく減少傾向が続いていますが、27日に行われたモニタリング会議で専門家は次のように述べ、危機感を示しました。

国立国際医療研究センター 国際感染症センター 大曲貴夫センター長
「感染性の高い変異株の影響等を踏まえますと、新規の陽性者数を徹底的に減らす必要がございます。今週は都内初の変異株『L452R』(インド型)によるクラスターの発生が確認されています。海外の状況を見ていきますと、今後『L452R』への置き換わりが急速に進む――これが想定されております」

今、懸念されているのは、変異ウイルスの広がりです。東京都で確認された変異ウイルスの割合を見てみると、『N501Y』、いわゆるイギリス型は7割程度まで置き換わりました。注目は『L452R』、いわゆるインド型です。4月下旬ごろからじわじわと増え始め、最新のデータでは全体の「6.7%」を占めるまでになりました。これは前週の3倍を超える数字で、クラスターの発生も確認されています。

■インド型の感染力、従来型の「約2倍」か

インド型はまだ爆発的に広がっているとは言えませんが、実際に感染者のデータを分析したところ、感染力の強さが分かってきました。

国立感染症研究所によると、イギリス型の感染力は従来型よりも『1.32倍』強いと推定されています。そして、イギリス政府のデータによると、インド型は、家庭内などで二次感染した人の割合が、イギリス型のおよそ『1.5倍』になっています。

つまりインド型の感染力は、従来型の『1.32倍』強いイギリス型のさらに『1.5倍』強いので、従来型と比べると、およそ『2倍』感染力が強い恐れがあることになります。

今、全国的に猛威を振るっているのはイギリス型ですが、国立感染症研究所の脇田隆字所長は「インド型への置き換わりが国内でも起きる可能性は高い」として、密集、密閉、密接のうち1つだけの場面も避けるよう求めました。

■インド型まん延で東京どうなる?

こうした中、インド型がまん延した場合の東京の感染状況がどうなるのかを示したシミュレーションが発表されました。東京大学の仲田泰祐准教授らによるシミュレーションで、インド型の感染力をイギリス型の1.5倍として試算し、6月中旬に宣言が解除されたと仮定しています。(*東京大学大学院経済学研究科/仲田泰祐准教授・藤井大輔特任講師らの試算)

まず、「水際対策や検査などを徹底してインド型を完全に抑え込むことができたケース」を見ていきます。ワクチン接種が一日60万人の場合、8月から10月にかけて東京の新規感染者数は一日1500人程度まで増加するものの、その後は、再び宣言を出さなくてもなだらかに減少していきます。

政府目標である一日100万人まで接種が可能になると、8月から10月にかけての増加もなく、年内にはかなり収束する見通しとなっています。

一方、「今のままの対策でインド型がまん延したケース」では、ワクチン接種が一日60万本の場合、8月上旬には新規感染者数が一日2000人を超え、そのタイミングで再び緊急事態宣言を出さなければならなくなる見通しです。

接種が一日100万本でも、時期は少し後にずれますが、9月の頭には2000人を超え、やはり宣言の発出が必要になる見通しです。

インド型がまん延したケースでは、たとえワクチンの接種が順調に進んだとしても、東京オリンピックやパラリンピックの開催中に感染者が急増し、緊急事態宣言発出という事態になりかねないという試算になっています。

研究チームの藤井大輔特任講師は、「今、インド型の流入や市中感染をしっかり防いでおくことが、とても重要だ」と強調しています。

     ◇

変異ウイルスの中でも感染力が強いインド型が、日本でも徐々に広がりつつあります。政府には水際対策や検査を一層、徹底してほしいと思いますが、私たちひとりひとりが取るべき対策は、これまでと変わりありません。あらためて基本的な対策を徹底しましょう。

(2021年5月27日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)