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パーキンソン病の薬でALSの“進行抑制”

2021年5月21日 1:22
パーキンソン病の薬でALSの“進行抑制”

徐々に筋肉が衰える難病「ALS」は、根本的な治療薬がありませんが、そのALSの進行を、別の難病「パーキンソン病」の薬で遅らせることができたと、慶応大学の研究グループが発表しました。

研究グループは「iPS細胞を用いた創薬で、既存薬以上の効果をもたらす薬を同定したのは世界初だ」と話しています。

岡野栄之教授らの研究グループは、ALS(=筋萎縮性側索硬化症)を発症して5年以内の患者20人を対象に治験を行いました。

パーキンソン病の治療薬であるロピニロール塩酸塩を1年間飲んだALS患者は、遅れて半年間だけ飲んだ患者に比べ、筋力や活動量の低下が抑えられ、歩けなくなるといった病気の進行を、およそ7か月遅らせることができたということです。

今回の治験では、家族性ALSの患者だけでなく、ALSの大多数を占める孤発性の患者のおよそ70%にも効果がある可能性が示されたということです。

iPS細胞から、目や心臓などの細胞を作りだし、患者に移植する「再生医療」の研究も進んでいますが、それだけでなく、ある病気の患者の皮膚などからiPS細胞を作り、試験管の中で病気の進行を再現して、原因を突き止めたり、病気の細胞を作って、すでに別の病気で使われ安全性などが確かめられている薬を試して、治療効果の有無を調べ、創薬につなげる研究も行われています。

今回の研究で、岡野教授らは、ALS患者のiPS細胞をもとに、試験管の中に患者の病態を再現し、既存薬およそ1200種類による治療効果を調べました。

その結果、ロピニロール塩酸塩がALSにも効く可能性があると突き止め、動物実験を経て、ヒトでの効果を確かめていました。

岡野教授は、「かなりの手応えを持つことができた。さらなる治験が必要かはまだわからないが、治療薬としての承認を目指す」と話しています。