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韓国・電動スケーター規制で二転三転…

2021年5月19日 22:30
韓国・電動スケーター規制で二転三転…

韓国では、5月13日電動キックスケーターの利用について規制が強化された。日本ではヘルメットや運転免許を不要とするルールの緩和が検討されているが、まさに逆の動きだ。

背景には何があるか…規制強化初日の様子を取材した。

■規制強化初日、ソウルの街は

韓国では街中のいたるところで、電動キックスケーターをレンタルすることができる。携帯のアプリで登録すればQRコードを使って手軽に利用できるため、ちょっとした移動だけでなく通勤で利用する人もよく見かけていた。

新型コロナウイルスの感染拡大で密を避けられる移動手段としても人気が高まっていたが、5月13日、電動キックスケーター利用について規制が強化された。

原付バイク以上の免許が必要となり、ヘルメットの未着用には日本円で約1900円の罰金が科されるようになった。

規制強化の初日、普段は利用者が多い若者の街ソウルの弘大(ホンデ)を訪れてみた。規制強化のためか、ふだんなら頻繁にみかける利用者をなかなか見かけない。それでも、少し待つと目の前を電動キックスケーターが走り抜けていった。ヘルメットはしておらず、この日からは罰則の対象だ。

ヘルメットをせずに2人乗りをする若者もいた。2人乗りも罰則対象、約3800円の罰金だ。

3時間ほど取材を続けたが、ヘルメットの着用率は1~2割といったところか。ヘルメット未着用だった男性に話を聞いてみた。男性は、この日から規制が強化されたことは把握していたが、「ヘルメットを持ち歩かないといけないので、不便だ」と不満を口にした。

これまで手軽さで人気を集めていた電動キックスケーター、この規制をめぐっては韓国では対応が二転三転している。

■規制をめぐって二転三転

韓国では、2018年9月から電動キックスケーターのレンタルのサービスが始まった。国はこれを後押ししようと2020年5月、電動キックスケーターの規制を緩和する道路交通法の改正案を成立させた。

それまで法律上、電動キックスケーターは原付バイクと同じ扱いで運転免許やヘルメットの着用が必要だったが、13歳以上であれば、免許なしで誰でも乗ることができるようにするものだ。

ヘルメットの着用は引き続き求めるが罰則は規定されなかった。ただ、この改正法の去年12月の施行を前に批判の声が高まっていく。背景には事故の増加がある。

2020年10月には、ソウル近郊で電動キックスケーターとタクシーが衝突、2人乗りをしていた高校生のうち1人が死亡した。このほか、飲酒をして運転し、歩行者に衝突する事故なども相次いでいた。2018年、225件だった関連する事故は、2020年は897件と約4倍に増加、死亡した人も10人に上っている。

このような状況を受け、国は180度方針を転換、去年12月、“規制を緩和”する法律が施行される前日に、“規制を強化”する法律が成立した。なんとも、ややこしい状況だ。“規制を強化する”法律が施行される5月13日までのおよそ5か月間は、13歳以上であれば、免許がなくて運転ができる状況となった。

■日本では規制緩和の動き

そして再び規制が強化された初日、ソウルの弘大では午後から警察が啓発活動を行った。無免許、ヘルメット未着用、歩道走行…多くの人が警察から注意を受けていた。警察は、1か月の周知期間を経て、摘発を含む本格的な取り締まりをスタートする方針だ。

対策としてヘルメットも合わせて貸し出すレンタル会社も出てきているが、これまで通りに多くの人が利用するとは考えにくい。

日本ではヘルメットや運転免許を不要とするルールの緩和が検討されていて、実証実験が進められている。

より利用しやすいようにと規制緩和に動いた韓国だが、事故の懸念という課題が浮き彫りになり、結局、規制強化へと舵を切った。日本では、韓国のような混乱がないように検証を進めることが必要だ。

【韓国での電動キックスケーターを巡る動き】
●2018年9月レンタルサービスがスタート
●2020年5月20日13歳以上であれば免許不要“規制を緩和”する法律が成立
●2020年12月9日事故の増加を受けて、免許必須、ヘルメット未着用に罰金“規制を強化”する法律が成立
●2020年12月10日“規制を緩和”する法律が施行
●2021年5月13日“規制を強化”する法律が施行